2019年・第198通常国会
- 2019年5月23日
- 文教科学委員会
法科大学院に関する法案の参考人質疑
- 要約
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- 23日、法科大学院に関する法案の参考人質疑の中で、本法案で認められる在学中試験について、日弁連は「例外的な位置づけ」としている一方で、芝山大臣は「標準的な運用」としていくと答弁していることを確認。若い優秀な法曹志望者を予備試験に流れないようにという本法案の目的の困難さも明らかになりました。。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
三人の皆さん、今日はありがとうございます。
土井参考人に伺います。
法科大学院在学中の司法試験受験を認めるこの目的について、法科大学院協会は、ギャップタームの解消によって法曹志望者を増加させると同時に、現在予備試験に流れている層を法科大学院に誘導するのだと、こう説明をしているかと思います。
しかし、現在、学部や法科大学院に在学中に予備試験に合格していくような学生というのは、3プラス2だとか在学中受験が可能になったとしても、やっぱり予備試験も受けるんじゃないかと思います。学部に在学中も法科大学院に在学中も、いずれも受けていくのではないかと。先ほど、土井参考人御自身も、若くて優秀な学生が早く合格したいということで予備試験に流れていると。そういう意味では、今度の3プラス2、在学中受験、こういう下でも、やはりそういう学生は予備試験を受けていくのではないか思います。
そういう意味で、プロセスとしての法曹養成制度というのであれば、やっぱり本来は予備試験も含めた全体の見直しがこの議論の中で必要だったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(土井真一君) 法科大学院の側からしますと、予備試験について適切な方向で制度の整備を考えていただきたいというのは全ての法科大学院関係者の願いでして、その点については委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。
ただ、政府での御決定もございますが、まずは、法科大学院の方に様々な問題があるわけだから、それは平成三十年度中をめどに適切な改革を先行してしなさい、それに併せて、その進捗状況を見ながら予備試験について検討すべきだという、そういう方向性を示していただいておりますので、したがって、我々としては、予備試験について十分御検討いただきたいという願いはありますけれども、先ほども申し上げましたように、我々としてしなければならないことはしなければならないという判断で取り組んできておりますし、その結果としてこういう案をまとめていただいておりますので、できる限り責任を果たしたいという、そういう立場でございます。
○山添拓君 今度の法案が必ずしもパーフェクトなものではないというようなお立場も含めたお話ではあろうかと思います。
やっぱり予備試験に合格するような優秀で法曹志望が明確な学生を対象とした法案だろうと思いますが、それでは本当に法曹志望者を増やすということにつながるのかどうかというのが私は疑問だと感じます。
次に、内山参考人に伺います。
日弁連が昨年十月二十四日付けで、法科大学院在学中の司法試験受験を認める制度変更に関する基本的確認事項を公表しております。制度変更を行うのであれば次の点が明確にされなければならないとしまして、司法試験の受験資格は法科大学院修了を原則とし、在学中受験を例外的な位置付けとすることと、ここではこう述べています。
一方で、柴山大臣は、3プラス2、そして在学中受験を含めて標準的な運用としていく、こういうことを繰り返し述べておりますし、先ほど、土井参考人の御意見の中でも、今度の法案の方向性が標準的なものだとお話がありました。
一方の日弁連では例外的だと、こう考えているようなんですけれども、この点はどうお考えでしょうか。弁護士会での議論や受け止め、参考人御承知の範囲でお話しいただければと思います。
○参考人(内山宙君) 日弁連を代表してここに来ているわけではございませんで、なかなか難しいんですけれども、基本的確認事項というものの性質からなんですが、まず日弁連の理事会で承認をされたんですけれども、対外的に公表しないという扱いになっているそうで、私、今回の資料に出すことができなかったんですね。
十分に対応されなければ容易に賛成できないという中に、例外的な位置付けにすることというふうになっているわけですが、それが標準ということになるのであれば日弁連としては賛成できないと、それイコール反対なのかというのはちょっとよく分かりませんけれども、賛成できないという立場になるはずでございます。
ただ、じゃ、そういう例外的な位置付けになるべきだということが何か例えば今回の法案に法文として落とし込まれているかということになりますと、全くそういうことはないようでございまして、日弁連の交渉がいかがなものだったのかなというふうにも思っております。
○山添拓君 弁護士の中にも多様な意見がある問題ですし、短期間での意見集約というのはそもそも難しいものだったのではないかと思っております。
次に、内山参考人、宮島参考人は、社会人出身で、夜間の法科大学院修了で司法試験に合格をされた決して多数派ではない出自で今日ここにおいでいただきました。法科大学院の教育やその環境について、もっとこういう点があればよかったとか、あるいはこういう工夫の余地があったとお感じのことが何かということをそれぞれ伺いたいと思います。またあわせて、土井参考人にも、法科大学院の現状の教育や環境について更に改善が必要な、とりわけそうお感じの点ですね。
その観点として、私、法科大学院での教育というのは、法律そのものについての基礎的で基本的でそして体系的な理解、そしてそれに基づいてきちんと文字に表現をしていく、その訓練というのが求められていると思うんですね。しかし、その基礎的で基本的でかつ体系的な理解を得るというためには、かなりの時間また工夫が必要だと思います。司法試験の科目というのは幾つもありますけれども、民法だけできて刑法や行政法ができないということは余りないかと思うんですね。それぞれ体系的な理解ができて初めて司法試験に挑戦をし合格していく、そういう水準にも達していく、そしてそれにはやっぱり一定の時間が掛かるのが普通なんではないかと思っています。
そういう中で、それぞれの立場で法科大学院で教えられ、あるいは学んでこられたお三方の立場で、こういう工夫の余地があるのではないかという点について御意見を伺いたいと思います。
土井参考人から順にお願いできますでしょうか。
○参考人(土井真一君) 委員おっしゃられるように、法律の基本的な知識を体系的に理解するということと、それを問題解決のために活用して文章にしていくという、その教育をしっかり行うべきじゃないかというのは、そのとおりだと思います。それについて時間が掛かるのではないかというのも、そのとおりだと思っております。
ただ、今回の改革については、先ほど私も申し上げましたように、標準的にこういうコースを設定するということはそのとおりだと思うんですけれども、実際に学生がどのような選択をするのかということについては、かなり選択の余地を認める制度にしていただいていると思います。
つまり、法学部の法曹コースに行けば必ず三年で修了しないといけないんだと言っているわけではありませんし、いわんや法曹コースに行かなければ法科大学院に行けないんだと言っているわけでもございません。在学中受験についても必ず在学中受験しないといけないんだと言っているわけでもないので、個々の、私が先ほど冒頭に申し上げましたように、多様な学生の多様な個性と目標に合わせて選択ができるように、可能性を広げる制度として構築していただいていると、そう理解しております。
したがって、先ほどの能力の育成につきましても、それぞれの学生の理解力あるいは学習の仕方に合わせて期間を想定できるというふうに、既修についてそれを考えるという制度だと理解しております。
未修者につきましては、今後、未修者教育をどうするのかということは、先ほども申しましたように、中教審でしっかり考えないといけないというふうに理解しておりますので、未修者教育における法律の基本的な理解についてはそこでしっかり検討させていただきたいと、そう考えております。
○委員長(上野通子君) 内山参考人、質疑時間が迫っておりますので、済みませんけど、簡潔にお願いします。
○参考人(内山宙君) はい。
こういった設備や仕組みがあったらよかったという点についてですけれども、私の出ました成蹊法科大学院では丸の内にサテライトの教室がございました。成蹊のキャンパスは吉祥寺にあるわけですけれども、都心で働いている人はその丸の内のサテライトのキャンパスに行って受けるということができました。また、欠席した回についても、録画されていましたので、復習するとか、その分フォローするということも可能だったので、かなり充実している方ではあったのかなとは思いますけれども。
もう一つ付け加えるとするならば、アメリカのロースクール協会の総会に行ったときに見たんですけれども、ICTの時代ですので、もう授業がネットで、スマホで見れるみたいな、そういう仕組みもあるようなんですね。なので、いろんな立場の方がいると思いますので、仕事の空き時間であるとか、子供を面倒を見なければいけないというようなときでもそういったもので何とかなるとか、そういった仕組みがあってもいいのかなというふうには思いました。
以上です。
○委員長(上野通子君) 宮島参考人、時間がもう終了しておりますので、簡潔にお願いいたします。
○参考人(宮島渉君) はい。お答えします。
私は、大宮法科大学院は、カリキュラム自体、大変工夫されていてよかったので、むしろ司法試験のやっぱりプレッシャーで時間が取れなくて、エクスターンとかクリニックとか、そういうものを取れなかったことの方が残念だったかなと思います。
あとは、先ほど大島議員もおっしゃっていましたけれども、もしあるならば、もうここの大学の、ここのローの、この科目を取ったならば、もうこの法律事務所が専門家として採るというぐらい売りになるような実務系の科目や、教育とかゼミみたいなものはあったらいいのかなと思いますが、時間が必要だと思います。
以上です。