2019年・第198通常国会
- 2019年5月21日
- 国土交通委員会
テックフォースと地方整備局職員の合理化問題について
- 要約
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- 国交委員会でTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)について、研修の不徹底さや送り出した側の整備局の現場の負担の声を明らかにした上で、数字ありきの定員合理化の不合理さを追及。石井大臣は「厳しい定員事情にある」ことを認めました。また、国交労組の請願を国交委員会で検討していくよう求めました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日も話題に上がっておりましたが、テックフォース、緊急災害対策派遣隊について私からも伺います。
九五年の阪神・淡路大震災を契機に、全国各地から被災自治体に応援に入る必要性が認識をされ、二〇〇八年に創設をされました。活動内容については既に答弁もいただいております。被災状況の把握や早期復旧のための災害査定、また技術的な助言といったところが中心かと思います。
私からは、今どのような規模になっているのか、現在何名が登録をされて、発足後の派遣実績はどのようなものか、これを御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(塚原浩一君) お答え申し上げます。
緊急災害対策派遣隊、テックフォースにつきましては、大規模な自然災害等に対しまして、被災自治体が行う被災状況の迅速な把握、被害の拡大の防止、被災地の早期復旧等に対する技術的な支援を円滑かつ迅速に実施することを目的といたしまして、平成二十年に創設をしたところでございます。これまでに、全国の地方整備局等の職員約九千六百六十名、これ昨年の四月一日現在の数字でございますけれども、テックフォース隊員として指名をしているところでございます。
これまでの活動実績といたしましては、東日本大震災や熊本地震、昨年の七月豪雨など含めまして、全国の九十三の災害に対しまして、延べで約八万人の隊員を派遣して被災地の支援に当たったところでございます。
○山添拓君 テックフォース隊というんですけれども、隊員の九割は地方整備局などの職員で、ふだんは緊急対応を日常業務としているわけではありません。隊員登録をするに当たって行われる研修は、整備局ごとに異なるようですけれども、一週間程度で基本は座学だといいます。隊員のお話によれば、テックフォースの役割や心構えが中心にされていて、本当に役立つものか疑問だという声も伺いました。現地に持ち込む機器を使った実地研修は半日から一日程度しか行われていない、災害現場の危険性を把握するすべや安全確保の対策、あるいは労働安全衛生に関わることなど、本来研修で習得すべき点が多々あるのではないかと、こういう意見が私の方にも寄せられております。
さらに、機械や電気通信を担当する専門職種などでは、とにかく行ってこいと、こう言われるケースもあるといいます。君は今日からテック隊だと、こう言われて送り出される、そういうケースまであると伺います。
災害時には様々な危険がある慣れない現場で緊急対応に当たります。現在のような登録のされ方、研修の在り方では少々心もとないのではないか。実際に派遣された隊員の経験や教訓も踏まえて十分な研修や訓練を行うことが必要ではないでしょうか。
○政府参考人(塚原浩一君) 災害現場におけますテックフォース隊員の対応能力の向上、また安全管理等は極めて重要というふうに考えておりまして、研修や技術講習等を進めているところでございます。
その中で、被災状況調査のポイントであったり、あるいは使用する機材の操作などとともに、テックフォース隊員の健康、安全管理、あるいは現地調査の安全対策、また危険な現場から離れて調査が可能となるようなドローンあるいはレーザー計測器等の技術の活用を今進めているところでございまして、そういった研修等をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。
また、研修におきましては、経験豊富な隊員によります活動の経験、そういった振り返りなども非常に重要だと思っておりますので、そういったものを講義に取り込むなどをいたしまして、災害現場での活動や安全管理のノウハウ等が伝承されるように工夫をしてまいりたいというふうに考えております。
隊員の派遣に当たりましては、これまでの職務経験や研修、講習等の履修状況、あるいは派遣する災害現場の状況等を踏まえまして、必要とされる対応が可能な隊員を派遣するように努めているところでございますけれども、一方で、どうしても経験の少ない職員を派遣せざるを得ない場合もございますので、そういった場合には現場経験の豊富な職員と一緒に派遣をして経験を積んでいただく機会としていただくといったような取組も進めているところでございます。
○山添拓君 現場から出されている声には耳を傾けていただきたいと思います。
災害が長期化をしますとテックフォースの派遣期間も長くなります。九州北部豪雨では、四十日以上にわたり、延べ四千人以上が派遣をされました。
隊員は一週間程度で交代するということでありますが、送り出した側の地方整備局では、期間中、人手が不足をすることになります。そのフォローの体制というのはあるんでしょうか。
○政府参考人(塚原浩一君) 御指摘のとおり、テックフォース隊員はふだんは通常の業務を担当していただいているわけでございまして、その隊員を派遣をしている間は、送り出した側の職場におきましては業務を行う職員数が減少するということにならざるを得ないということでございます。
多くの場合、御指摘のとおり、一回の派遣期間は一週間程度までといたしまして、また、複数の職場をローテーションするような形で、特定の職場にのみ大きな負担が掛からないように努めているところでございます。
大規模な災害が発生した場合、被災地の支援におけますテックフォースの役割というのは非常に大きいものがございますけれども、今後とも隊員を派遣する職場への負担も勘案しながら取り組んでまいりたいと考えております。
○山添拓君 全国で九千六百人、延べ八万人の派遣ですので、単純計算でも一人平均八回以上なんですね。中には十回以上行ったという方もおられるといいます。この後指摘をします定員削減の影響で通常業務を行うことも困難となっている各地方整備局では、テックフォースの派遣は残された職員にとっても大きな負担となっているということを指摘をさせていただきたいと思います。
そこで、その整備局の体制ですけれども、政府はこの間、一貫して定員の合理化を進め、二〇一五年度からは五年で一〇%の定員合理化目標を示す下で、整備局でも定員が減らされ続けております。国交省が発足した二〇〇一年当時、全国の八つの地方整備局で二万三千人余りだった定員は、一八年度で一万九千人、一八%も減っております。これでは仕事が回らないということで、現場では非常勤職員や業務委託を増やしてきました。
二〇一四年度から一八年度にかけて、地方整備局の正規職員のこれ予算上の定員、そして非常勤職員、業務委託の人数はそれぞれどのように推移をしておりますか。
○政府参考人(藤井直樹君) お答えいたします。
地方整備局の人数の推移でございますが、まず常勤職員でございます。平成二十六年度、これは予算上でありますけれども、一万九千九百三十二人、二十七年度一万九千六百七十四人、二十八年度一万九千四百五十五人、二十九年度一万九千二百二十六人、そして三十年度は一万九千二十五人となっております。
続いて、非常勤の職員でございますけれども、これは平成二十六年度が三千四人、平成二十七年度が三千二十八人、平成二十八年度が三千六十二人、平成二十九年度が三千八十二人、そして平成三十年度が三千百二十五人ということになっております。
○山添拓君 業務委託の人数はいかがですか。
○政府参考人(藤井直樹君) 地方整備局から民間企業等に委託されている業務がございます。この業務に従事する者の人数につきましては、これは公務員ではないということで、私どもとしては人数は把握はしておりません。
○山添拓君 公務員じゃないということで、人数すら分からないとおっしゃるんですね。
資料をお配りしておりますけれども、正規の職員については五年で九百人減らされ、そのため人件費としては四十億近くのカットです。逆に非正規については増やされて、非正規は人件費ではなく事務費という扱いになっており、これは増えているということです。
例えば、国土交通労組の調べによりますと、北陸地方整備局新潟国道事務所は、常勤職員が百三十一人、非常勤十人、委託職員五十七人。四国地方整備局香川河川国道事務所は、常勤職員七十五人、非常勤二十人、委託職員六十八人。こういうふうになっているというんですね。三分の一とか半分が委託職員ということになっています。
しかし、この委託職員も、許認可や設計や工事の発注の積算、あるいは道路や河川の管理の補助、こういった業務を行っていますし、現場に確かめていただければ人数は分かるんですね。これ、確かめていただけませんか。
○政府参考人(藤井直樹君) 委託された業務につきましては、まさに委託をして、それをどういった形で業務を行うか、民間の方がどれだけそれに従事をするかというのは種々様々なケースがあるということかと思います。
そういう意味で、今それを整備局全体についてそういうふうに把握することはなかなか困難ではないかと考えております。
○山添拓君 現場の方はすぐ分かるとおっしゃっていますので、是非調べていただきたいと思うんですけれども。
そもそも、定員合理化計画というのはどのように定められているのかと。資料の二枚目、三枚目には、二〇一五年度から今年度までの五年間について、一四年七月に内閣人事局長名で発表された、通知をされた定員合理化目標数が示されております。国交省の場合には、三ページ目ですが、一四年度末の定員五万九千人余りから五年間で六千二百人削減するというものです。
内閣府に伺いますが、合理化目標を決定するに当たって、各府省、その出先機関などの人員体制がどのようになっているのか確認をして、問題がないと判断しての通知している数字なんですか。
○政府参考人(長屋聡君) まず、国家公務員の定員でございますけれども、平成二十六年に閣議決定いたしました国の行政機関の機構・定員管理に関する方針、これに基づきまして、内閣の重要政策への対応には重点的に増員を措置する一方で、その増員の原資を確保するために、毎年二%、五年で一〇%以上の定員の合理化に取り組んでいるということでございます。そういう中での定員合理化計画でございます。
この定員合理化計画を策定するに当たりましては、我々、その算定するに当たりまして、全ての府省に対して一定の合理化を求めるという中で、各府省の行政需要の動向を反映するものとして、近年の定員増減の状況なども加味して府省ごとの合理化目標数を決定しているところでございます。そうしたプロセスの中で、各省調整の中でも必要に応じいろいろなお話を聞きながら、こういった決定プロセスを経ているということでございます。
○山添拓君 定員の合理化によって業務に必要な人数が確保されないようなことがあってはならないと思いますけれども、内閣府としてもそのことはお認めになりますか。
○政府参考人(長屋聡君) 定員管理につきましては、こういった定員合理化計画に基づく合理化の部分と、必要に応じ新規の行政需要に対して増員を措置するという部分と両方ございまして、これを相まって全体の定員管理としているものでございまして、私どもとしましては、さきに申し上げましたように、内閣の重要政策への対応に重点的に増員を措置するという中にあって、国交省関係でも、テックフォースのマネジメント機能強化、あるいは豪雨など災害対応など、お話を聞かせていただきながら重点的な定員措置を行ってきているところでございまして、全体としてそのような方針の下で定員管理を行っていきたい、あるいはまた、現場の実情や政策課題を丁寧に伺いながら定員管理を行っていきたいと考えているところでございます。
○山添拓君 増員するときにはほかを減らすという方針になっていますよね。ですから、しかも、既存業務を拡大する場合には、自律的な組織内の再配置によることとし、新規増員は厳に慎むべきだ、抑制するべきだ、こういう閣議決定の下で進められているかと思います。
定員の合理化によって定員は減らされていますけれども、その分、非常勤職員や業務委託、実際に業務に当たる正規職員と同じように仕事をする人数が増えているということを把握をした上で、この夏、来年度から五年間の定員合理化目標を定めるに当たってはこうした把握を当然していただきたいと思いますけれども、いかがですか。
○政府参考人(長屋聡君) 実情は実情として伺う一方で、合理化の必要性も任じながら、また、増員の際によく現場の実情や定員、政策課題などを伺いながら定員管理を適切に行っていきたいと思っているところでございます。
○山添拓君 数字ありきなんですよね。今日、国交省に伺っても、委託の職員が何人なのかということが分からない。今国交省が担当している業務を行うのに一体幾ら人数が必要なのかということを明らかにできないような事態だと。数字ありきの定員合理化目標というのは極めて不合理だと私は思います。
資料の四枚目を御覧ください。国土交通労組が作成をした関東地方整備局の年齢別の人数です。二〇〇四年には職員数四千百三十八人で、年齢構成のピークは三十代前半でありました。この世代だけで千人以上おります。四分の一を占めている。二〇一八年には三千六百七人、ピークは四十代後半に移行して、再任用で六十代以降が増えた反面、三十代以下は全て合わせても千人に届くかどうかです。こういう現状の中で、ここからテックフォースのような災害派遣も行われております。このまま定員合理化計画を前提に削減を続けていては、これ現場は早晩立ち行かなくなるんではないかと。
ですから、現場の実態、改めて調査をして、大臣から閣議でも進言をして、定員合理化計画そのものをちょっと改めるべきだ、こういう態度に立つべきじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 国土交通省の地方整備局につきましては、従来の直轄の社会資本の整備や管理に加えまして、老朽化対策、近年頻発する自然災害への対応等、その役割が増しており、地域からの期待も大きくなっているものと認識をしております。これらの業務に適切に対応するためにも、各種研修等を通じて人材育成に努めるとともに、経験者の採用や職員の再任用も活用しながら、適切な組織運営が行われるよう努めているところであります。
地方整備局の定員はこれまでの定員合理化計画等により減少しており、厳しい定員事情にあります。国民の生命と財産を守り、安全、安心を確保することは地方整備局に課せられた重要な使命であります。国土交通省といたしましては、引き続き必要な定員を確保すべく最大限努力をしてまいる所存であります。
○山添拓君 委員長、時間ですので終わりますけれども、お願いがございます。
国土交通労働組合などからは、この間、国会が開かれるたびに、運輸、気象などを含めて国交省の機構拡充、職員の確保を求める署名が請願署名として提出をされております。しかし、私が国会に来て以来、少なくとも、一度もこれ採択をされておりません。毎回、会期末になって理事会で態度保留だと各会派から申出があり、委員会で採決すら行われずにお蔵入りとなっている状況です。
組合などで今国会でも提出を予定されていると伺いました。憲法の請願に基づく訴えに国会としてどう向き合うかが問われておりますので、各会派で会派内できちんと検討して、委員会の場でも意見表明することを求めたいと思いますし、この点について取り計らいを、理事会でも協議をお願いしたいと思います。
以上を述べて、質問を終わります。
○委員長(羽田雄一郎君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。