山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2020年・第201通常国会

資源エネルギー調査会で、感染症拡大の背景に開発行為が指摘されていることについて質問

要約
  • 資源エネルギー調査会で、感染症拡大の背景に開発行為が指摘されていることについて質問。暮らしや働き方が変わる中、気候変動対策は重要な政策的課題となっていくと強調。再エネコストの世界的趨勢は原子力を下回っており、エネ庁は原子力は最も安い発電コストとしてきた虚構の計算を改めるべきです。

○山添拓君 やはりこの人間社会の変化がその自然界に対してもこれ影響を与えて、またそれが人間社会に返ってきていると、こういう点、やっぱりあると思うんですね。
 環境省は二〇〇七年に、「地球温暖化と感染症」と題するパンフレットを発行しています。温暖化、気候変動による感染症のリスクについてどのように述べているのか、御紹介ください。
○政府参考人(近藤智洋君) 環境省ではこれまで、委員御指摘の二〇〇七年の報告、公表にとどまらず、気候変動の感染症への影響を含め様々な分野における気候変動の影響につきまして収集してまいりました。
 例えば、デング熱等の感染症を媒介するヒトスジシマカという蚊でございますけれども、これの生息する北限は、一九五〇年時点で関東周辺でございましたけれども、二〇〇七年には岩手県や秋田県に、二〇一六年には青森県に達しているということの予測をしております。また、今後更に広がるとも予測しております。
 平成二十七年三月には気候変動影響評価報告書を作っておりまして、この中では、気候変動に伴う水温の上昇によりまして海水中や淡水中の細菌類が増加し、こうした水を媒介した感染症のリスクの増加、あるいは、気温の上昇による食品の製造、流通過程における細菌汚染、増殖を通じまして、食品を媒介とした感染症のリスクが増加する可能性を指摘させていただいております。
 今年、気候変動適応法に基づくものとしまして、気候変動影響評価報告書を取りまとめる予定でございます。その評価を踏まえまして、来年には気候変動適応計画の見直しも行ってまいります。この中で、気候変動による感染症の影響について新たな知見を評価に含めるとともに、必要な施策を計画に盛り込んでまいりたいと思います。
 また、新型コロナウイルスに関しましては、現在知見を有しておりませんけれども、今後も気候変動と感染症の研究に関する科学的知見の把握に努めてまいりたいと考えております。
○山添拓君 かなり駆け足で御紹介いただきまして、ただ、まだいろんな知見が、新しい知見が全て得られているわけではないという点でもあると思うんです。
 二〇〇七年のその懇談会で座長を務めた国立感染研の倉根氏が、各種感染症に対する温暖化影響評価のための方法論が十分確立されているとは言えないと、その技術を早急に確立していく必要があると、こういう指摘もされています。
 環境省としても、最新の知見はおおむねこの二〇〇七年のパンフレットに示されているものだと伺いました。世界的には今かなり調査研究が行われておりますし、それを日本の政策にも、あるいは国際社会に対して発信していく上でも生かすように、支援も含めて是非検討していただきたいと思います。
 こうした感染症の甚大な影響を目の当たりにする中で、改めて気候変動対策が重要な政策課題だと思います。暮らし方、働き方が変わると先ほど環境省からの報告にもありました。
 ところが、政府のエネルギー基本計画では、二〇三〇年目標で石炭火力の発電比率が二六%、原発や再生可能エネルギーを上回っています。石炭火力の建設中あるいは計画中のものは約二十あり、これを数十年稼働させようとしています。
 二月二十六日の本調査会で、飯田哲也参考人は、パリ協定で掲げた一・五度目標の達成を目指して、九〇年比で二〇三〇年に五五%削減、二〇五〇年に九〇%削減は可能だと指摘をされておりました。これ、結局は政策と政治次第だと、飯田氏はこのようにも述べておりました。今、再生可能エネルギーのコストは驚異的に低下をしており、十分実現可能な目標だと思います。
 こうした点を私ども指摘をする際に、必ず一方から指摘がありますのは、再エネはコストが高いと、そしてそれに比べて原発は安いと、こういう点であります。
 資料の三ページを御覧ください。
 エネルギー庁の二〇一八年九月のコストダウンの加速化についてと題する資料では、世界では、太陽光発電、風力発電共に二〇一三年以降、コストが大幅に低減していると。太陽光発電が九・一円、キロワットアワー当たりですね、陸上風力発電は七・四円程度だとしています。
 資料の二ページにありますが、一方で政府は、原子力がキロワットアワー当たり十・一円であることをもって、ほかのエネルギーと比べても最も安いと、こう主張してきました。
 エネルギー庁に伺いますが、再エネコストの世界的な趨勢はこれ原子力のコストを下回っている、これは間違いないですね。
○政府参考人(覺道崇文君) 海外での再エネの発電コストについてでございますけれども、海外の再エネコストは直近の数年間で、技術革新やFIT制度などによる大量導入を背景としまして大きく低下をしてございます。
 例えば民間調査機関が示しているデータによれば、世界の発電コストは、二〇二〇年度上半期に設置された案件で、大規模太陽光で五・五円、キロワットアワー当たり、洋上風力で同様に八・六円、陸上風力で四・八円などとなってございます。
 現在、日本の再エネコストは、海外と比べて高い状況にございますけれども、世界の状況を日本においても実現すべく、コスト低減の取組を強化しつつ、電力市場への統合を図るとともに、長期安定的な事業運営の確保等の取組をしっかりと一つ一つ進めてまいりたいと考えてございます。
○山添拓君 今御説明いただいたのは、太陽光、風力の関係でありますけれども、一方で、原子力は十・一円からと、十・一円からという表記ですけれども、それで安いとされてきたわけです。ところが、この十・一円というのは、私、この調査会で何度か指摘をしてきたんですが、原発をこれから新設して四十年動かすという前提です。しかし、今、新増設の計画はありませんし、新たに造る場合の安全基準すらありません。この十・一円というのは、福島事故前の旧型の原発を新設する、新たに造る、そういう場合のコスト計算です。言わば虚構の計算なんですね。先ほど自民党の議員から、四十年以上原発運転するべきだと、こういう話もありましたが、その場合はなおさら十・一円では無理だろうと思います。
 この試算から五年以上たちます。現に原発を運転する場合のコストを試算するには、今ある原発を再稼働する場合の発電コスト、これ、政府として計算するべきだと思います。最後に御答弁いただけますか。
○政府参考人(覺道崇文君) 今御指摘のあった発電コスト、これは発電コスト検証に基づくものですけれども、これはエネルギーミックスを検討する際に他電源と発電コストを比較するために行ったものでございます。
 他電源との比較におきましては、一定の共通条件での下でなければ、発電単位当たりのコストを比較することが困難でございます。したがいまして、既存の特定の原子力発電所のコストは、それぞれのサイトごとに追加安全対策の規模、運転期間、出力などが異なるために他電源との発電コストの比較に用いることは適当ではないと、このように考えてございます。
○会長(宮沢洋一君) 時間が来ております。
○山添拓君 時間が来ましたので終わりますけれども、比べてはいけないものを比べている、こういう表はやはり改めるべきだということを指摘して、質問を終わります。

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