2020年・第201通常国会
- 2020年5月25日
- 決算委員会
黒川検事長への甘い処分が官邸圧力で決められた疑惑を追及
- 要約
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- 黒川検事長への甘い処分が官邸圧力で決められた疑惑を決算委員会で追及。森法相が処分は内閣と協議したと答えているのに、菅長官は法務・検察との協議なしと否定。報告が来て「異議なし」としただけとの責任逃れ。法務・検察への露骨介入の異常さ、一方で任命権者の責任を果たさない姿勢。明日も追及!
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
初めに、東京電力福島第一原発の事故費用問題について述べます。
二〇一六年の閣議決定では、原発事故に関連して確保すべき資金は二十一・五兆円でした。しかし、除染費用四兆円を賄うこととしている東電の株価は現在四百円弱です。必要とされる千五百円に遠く及びません。廃炉工程の延長や汚染水処理問題、あるいは不十分な賠償問題など課題が山積しています。
原発事故から十年に向け、国の支援に関して会計検査院の検査を求めます。委員長、お取り計らいください。
○委員長(中川雅治君) 後刻理事会において協議いたします。
○山添拓君 それでは、東京高検黒川弘務前検事長の処分に関して伺います。
安倍首相は、金曜日の国会で、検事総長が事案の内容等諸般の事情を考慮して処分したと答弁しております。ところが、今日、法務省は懲戒相当と判断していたとの報道がありました。処分に先立って、法務省と内閣で、懲戒とするのか訓告とするのか、こういう点も含めて協議していたんじゃありませんか。官房長官。
○国務大臣(菅義偉君) そうしたことについては承知しておりません。
○山添拓君 内閣においては懲戒とするかどうかについて全く議論していないということですか。
○国務大臣(菅義偉君) 承知をしていないということであります。
○山添拓君 官房長官、会見では検事総長において決定して、その後、法務省から首相や私に報告があったと、こういうふうに述べられているそうですが、そのとおりですか。
○国務大臣(菅義偉君) 黒川氏の処分内容については、法務省と検事総長において訓告と決定をした、そのことについて大臣から私に対してその報告がありました。
○山添拓君 一方、森法務大臣は、会見の中で、金曜日ですが、法務省内、任命権者の内閣と様々協議を行った、最終的には任命権者である内閣において決定されたと述べています。矛盾するんじゃありませんか。法務大臣。
○国務大臣(森まさこ君) 黒川氏の処分については、法務省としては調査結果を踏まえ、監督上の措置として最も重い訓告が相当であると考えました。そこで、検事長の監督者である検事総長に対し、法務省が行った調査結果とともに、法務省としては訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長において訓告が相当であると判断したものでございます。
○山添拓君 違います。
記者会見では、内閣で決定したものを、私が、森法務大臣が検事総長にこういった処分が相当であるのではないかということを申し上げ、監督者である検事総長から訓告処分にするという知らせを受けたと、こういう答弁になっています。
違うんじゃないですか。
○国務大臣(森まさこ君) いいえ、違いません。
黒川氏の処分について、今述べたとおりでございますが、法務省において調査をする過程において、当然、内閣にもその旨報告をし、協議をしていることでございます。
○山添拓君 任命権者である内閣と様々協議をしたと、こういうことですね。訓告とするのか、懲戒とするのか含めて協議したと。そうでしょう。
○国務大臣(森まさこ君) 当然、任命権者は内閣でありますので、黒川検事長の調査結果等について協議をするのは当然でございます。事務的に調査の経過について、途中経過等も報告をし、協議をしていたものでございます。
○山添拓君 つまり、処分の内容についても協議をしたんだと、こういう答弁になるかと思うんですね。
これはもっともだと思うんですよ。なぜなら、例えば人事院の懲戒処分指針では賭博は戒告か減給です。常習なら停職の懲戒が標準とされております。東京高検の非違行為等防止対策地域委員会の冊子では、信用失墜行為の代表例の一つにマージャン等の常習賭博が挙げられています。そして、こうした行為は刑事罰の対象となる事案が多く、そのほとんどは刑事罰に加え、免職などの懲戒処分を受ける、こういうふうに記されています。ですから、法務省内の議論としては、懲戒も含めて検討する、そうして内閣と協議を行った、これなら分かるわけですよ。
官房長官、伺いますけれども、任命権者である内閣において懲戒処分が不要だと判断した、それはなぜですか。
○国務大臣(菅義偉君) そのようなことは判断はしておりません。先ほど申し上げましたように、黒川氏の処分内容については、法務省と検事総長において訓告と決定をしたと、そうした報告を私は大臣から受けているわけであります。
○山添拓君 今の答弁は事実関係として食い違っていると思いますけれども、しかし、そうであるとすれば、内閣としては法務省のそういった報告を受けて、この事案は訓告でよいと、懲戒処分は不要だと、こう判断したということですね。
○国務大臣(菅義偉君) 今申し上げましたように、その処分内容についてはあくまでも法務省と検事総長において訓告と決定をしたと。その報告を内閣としては、私は受けたわけであります、大臣から。それで、それはどうぞという、異議はないということであります。
○山添拓君 つまり、それはどうぞと、それでよろしいということなんですね。
法務大臣、伺いますけれども、法務省職員の訓告等に関する訓令では、訓告というのはどういう場合に行うものだとされていますか。(発言する者あり)
○国務大臣(森まさこ君) 訓告とは、職員の責任が重いと認められる場合に、当該職員の責任を自覚させ、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員を指導する措置として行うものとしております。
○山添拓君 将来における服務の厳正、適正ですよ。もう辞職をするという意思表示をしている黒川さんに対して、将来厳正にということですか。これ、直ちに辞職する人には何の意味も成さない処分ですよ。人事院の指針も、東京高検の指針も、そして今述べられた法務省の訓令も、いずれも訓告でよしとされるような事案とは考えにくいです。
内閣がいかなる判断で訓告でよしとしたのか。今、官房長官はどうぞとおっしゃったけれども、そのどうぞと言うに至った検討結果、これ示していただくべきだと思います。官房長官。
○国務大臣(菅義偉君) 度々申し上げていますけれども、この黒川氏の処分については、あくまでも法務省と検事総長において訓告と決定をしたと、そういう報告があったんです。そして、それに対して、私は大臣に対して異議がない旨の回答をいたしました。
○山添拓君 異議がないとの判断はなぜ行われたんですか。
○国務大臣(菅義偉君) 大変失礼しました。もう一度お願いいたします。
○山添拓君 内閣として異議がないと判断したと、訓告でよろしいと判断した、その理由は何ですか。
○国務大臣(菅義偉君) それは、法務省、検事総長において決定をしてきたからでありまして、それについて、報告でありましたから、そのように決定しましたという報告でありましたから、それは異議がないということを回答しました。
○山添拓君 これは任命権者としての責任を全く果たしていないと思うんです。
内閣が訓告でよしとした検討結果について、経過について説明を求めたいと思います。委員長、お取り計らいください。
○委員長(中川雅治君) 後刻理事会で協議いたします。
○山添拓君 私は、黒川氏の勤務延長は、違法な閣議決定によるものですから、無効だと考えます。したがって、懲戒処分をすればよいというものではないと思いますが、少なくとも事実関係の調査は必須だと思うんですね。
賭博といえば、政府が進めているのはカジノですよ。法務省は従来、賭博の違法性が阻却される八要件を示していました。目的の公益性だとか運営主体が公的な性格を持つ、こういった要件示していましたが、ところが、二〇一七年、カジノ推進会議の下で従来の見解を百八十度変え、民間主体でも違法性が阻却されると結論付けたわけです。当時の法務省事務次官が黒川氏です。この頃、法務省の調査結果がそのとおりなら、既に月一、二回は賭けマージャンをしていたとされる時期ですよ。カジノ解禁についての法務省の見解に影響を与えた可能性すらあります。
黒川氏が、いつから、どの程度、どのように賭けマージャンを行っていたのか、これは政府として調査すべきじゃありませんか。官房長官。
○国務大臣(菅義偉君) 法務省、検察庁においてこの黒川氏の人事上の処分を決するに当たり、必要な調査は行ったというふうに承知をしています。
○山添拓君 これ以上調査はしないということですか。懲戒処分の是非という点でも、法務省の事務次官が賭けマージャンに、これ日常的にやっていたということについても、調査の必要はないという考えですか。
○国務大臣(菅義偉君) 必要な調査は行ったということを承知しています。
○山添拓君 日常的に賭博に親しんでいる方がですね、民間賭博の違法性阻却に異を唱えるということは期待できないと思うんですよ。この調査をかたくなに拒む、その政府の姿勢そのものが賭博の違法性についての政府の認識の甘さを示す、こう言わざるを得ないと私は思います。
黒川氏は関係ないよとさっき与党席からありましたけれども、関係ないとしたら、これ、黒川氏がこの判断に何にも関わっていないとしたら、法務省の従来の賭博の違法性についての見解、これ法務省の中でまともな議論すら行われずにカジノを解禁したということになっちゃいますよ。そういう点でも、私は調査は必須だと思います。
黒川氏の勤務延長が違法な解釈変更で強行され、黒川人事を後付けるように法案が一変させられました。六十三歳以降も役職にとどまり、六十五歳以降も続けられる特例が盛り込まれ、その基準は、内閣が定める事由により、内閣が定めるときは、このように変えられました。その基準について森大臣は、人事院規則に準じてこれから定めるとしています。
そこで、人事院に伺います。
現行の国家公務員法八十一条の三、勤務延長が必要な場合の定めは、現在、人事院規則の一一―八第七条、資料五ページに示しておりますが、ここに定められています。このように人事院規則で定めているのはなぜですか。
○政府参考人(松尾恵美子君) お答え申し上げます。
現行の国家公務員法におきましては、定年制度を含む職員の分限等について公正でなければならないというふうにされておりまして、この根本基準の実施につき必要な事項は、国家公務員法に定めるものを除いて人事院規則で定めるものと規定されております。
勤務延長につきましても、定年制度の一部を成すものとして、基本的な事項については法律において規定した上で、勤務延長が認められる事由等について人事院規則で定めることとしております。
○山添拓君 公正さということがありました。国家公務員は労働基本権が制約されております。その代償措置として、人事院が独立した立場で、公正中立な立場で規則の制定も行うと、こういう趣旨であろうと思います。
準司法官である検察官は、その地位と職務の特殊性に照らして、それ以上の独立性が求められると私は思います。にもかかわらず、一般の国家公務員について人事院規則で定めるとしている勤務延長の基準を、検察官については任命権者である内閣が定める、法務大臣、これで独立性が保てるはずがないじゃありませんか。
○国務大臣(森まさこ君) 検察官の準司法官的性格についてお尋ねがございましたが、そもそも検察官については法律上その人事権者は内閣又は法務大臣であり、これは改正前後で変わるところはございません。
検察官の準司法官的性格、検察官の独立性を保持しつつも、国民主権の見地から、公務員である検察官に民主的な統制を及ぼすためであり、諸外国においても、行政権に属する者が検察官の任命を行ったり勤務延長を行う例もあると承知をしております。
○山添拓君 大臣、諸外国ってどこですか。
止めてください。答えられないなら止めてくださいよ。(発言する者あり)
○委員長(中川雅治君) じゃ、速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(中川雅治君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(森まさこ君) 勤務延長制度について、例えばドイツに規定がございます。また、任期制度を取っているイギリス、フランスなどにはその任期の点についての規定もございます。
○山添拓君 ドイツの刑事司法の制度は日本と同じなんですか。
○国務大臣(森まさこ君) 同じとは申しておりません。
○山添拓君 比較にならないものを比較して、都合のいいときだけ諸外国の例を持ち出す。弁護人の立会い権だとか刑事司法の人質司法の問題だとか、こういう問題で諸外国の例を出して批判をすると、それは我が国とは制度が違うと言って突っぱねてきた。都合のいいときだけ諸外国を持ち出す、そういうことはやめていただいた方がいいと思うんですね。
大臣は基準を明確化すると言いますが、それはどだい無理だろうと思います。黒川氏について勤務延長を認めた閣議決定も、訓告でよしとした処分も、明確な答弁、今日も一切ありません。こういう内閣が検察人事を左右する仕組みを制度化していくと。恣意的な人事をしないと幾ら言われても、それは信頼されるはずがありません。
黒川人事と違法な解釈変更を撤回し、法案の特例部分は削除すべきであることを指摘をしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。