2020年・第201通常国会
- 2020年5月26日
- 法務委員会
黒川氏を懲戒処分にしないと内閣が決めた問題を追及
- 要約
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- 黒川氏を懲戒処分にしないと内閣が決めた問題を法務委員会で追及。森法相は「内閣の一員である私が…総理に…」との苦し紛れ答弁。安倍総理にこそ説明する責任があります。 また、勤務延長の際、閣内に法解釈変更を伝えてないとの法相答弁。閣議決定の正当性が崩れてます。 #山添拓 次回質問は明後日!
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
東京高検黒川元検事長への処分について伺います。
法務省は、二十一日に訓告の措置をとることを発表しています。調査は報道機関の公表内容の確認と黒川検事長本人からの事情聴取とされています。例えば、週刊誌の記事にはなかったレートが点ピンだったとか三年前から月一、二回と、こういった事実については黒川氏からの聞き取りのみによって把握したということになろうかと思います。
大臣に伺いたいんですけれども、なぜ客観的な証拠に、ほかの様々な証拠に当たろうとせずに、こんなに急いで処分を決めたのですか。
○国務大臣(森まさこ君) 黒川氏の不適切な行為については、社会的な影響が大きなものであることから、速やかに処分を行うため、必要な調査を行いました。
報道機関の皆様に対する調査については、その性質上、控えたところでございますが、その報道機関の記者の皆様の所属する社の発表した事実に基づいて調査をしたところでございます。
○山添拓君 影響が大きいからこそ公正な処分となるように適切な調査が行われるべきなんだと思います。
三人の記者への確認されていないと今答弁もありました。記者が所属する新聞社の調査、発表も踏まえてということがありましたけれども、例えば、産経新聞が二十二日付けの朝刊で報じたのが、緊急事態宣言発令後も五回程度行われたというものですし、朝日新聞も同日付けで、社員は宣言発令後の四、五月に計四回黒川検事長らと賭けマージャンをしたと認めたと報じております。これは訓告の後の報道です。
少なくとも、四、五月のこうした事実を踏まえれば、処分は変わり得るんじゃないですか。
○国務大臣(森まさこ君) 法務省の調査結果においては、黒川氏の金銭を賭けたマージャン行為において、五月以外に約三年前から月一、二回程度行っていたことを認定し、この事情をも考慮した上で本件措置を相当としたものでございます。そのため、訓告処分後の御指摘の発表にあるような、四月に二回等のマージャンを行ったこともあり得ることも考慮に入っているものでございます。
○山添拓君 資料の四ページを御覧ください。
訓告は二十一日に行われたわけですが、それがその際、これがその際の文書です。ここには、先ほど川合委員の質問にも答弁ありましたけれども、五月一日頃及び同月十三日頃の二回にわたり、報道関係者ら三名とともに金銭を賭けてマージャンを行ったものであるとあるのみです。ここにはレートの記載はありませんし、三年前から月一、二回とも書かれておりません。これはなぜですか。
○国務大臣(森まさこ君) 三ページの方に三年前から月一、二回程度金銭を賭けたマージャンを行っていたことが認められるという記載がございます。
○山添拓君 いや、訓告書に書かれていないのはなぜかと伺っているんです。
○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
この訓告においては、どういう事実をまず対象として訓告をするかということを明らかにするためにこの事実を記載してございます。で、この訓告書はその情状事実を記載するものではございませんので、委員がこのような事実が記載されてないじゃないかということは、処分の量定に当たった言わば情状、事情、事実でございますので、ここに記載のないものでございます。
○山添拓君 つまり、訓告の対象事実でないと、過去のいろんな、過去の賭けマージャンをしていた事実については、あるかもしれないと思ったけれども事実認定はしなかったと、ですから訓告の対象としなかったんだと。
三年前から月一、二回などというのは、私は、これ、二十一日の時点では判明していなかったんじゃないかと思うんですね。これ、いかに焦っていたかをうかがわせる、焦って結論を出したかをうかがわせる文書だと思うんです。
この訓告でよいという判断は、内閣の意向によるものなのか、それとも法務・検察によるのか。昨日の決算委員会でも質問いたしましたが、官房長官は、法務省、検事総長が決定したことだと、まあ人ごとのように言いました。法務大臣は内閣と様々協議したと答弁されました。矛盾はないとおっしゃいますけれども、矛盾しています。
そこで大臣の認識について伺います。
資料の一ページに大臣の二十二日の記者会見の文言を載せております。法務省内、任命権者であります内閣と様々協議を行いました、その過程でいろいろな意見も出ましたが、最終的には任命権者である内閣において決定がなされたと述べています。
様々協議、いろいろな意見、これは何ですか。
○国務大臣(森まさこ君) まず、私の記者会見で赤線を引いていただいているところでございますが、法務省内、こちらでも協議を行いました。また、任命権者であります内閣とも様々協議を行いました。法務省内で協議を行ったときにはいろいろな意見も出ました……(発言する者あり)はい。内閣との間については、協議を行いましたが、内閣との協議は、法務省において処分を決定するまでの過程において、法務省の調査の計画の報告をしたり、先例の調査を示したりなどしたところでございます。
○山添拓君 いろいろな意見とは何ですか。
○国務大臣(森まさこ君) 法務省内の協議の過程でございますので具体的にお示しすることはできませんが、いろいろな意見というのは、法務省内の協議において出た意見でございます。
○山添拓君 いや、内閣との間での協議を、様々協議を行ったと、その過程でいろいろな意見も出ましたとあるんですよ。懲戒にすべきかどうかということも内閣との協議の中で出たわけですね。
○国務大臣(森まさこ君) いいえ、出ておりません。私のこの記者会見を見ていただければ分かりますとおり、法務省の中でまず協議が行われました。また、これも断続的に協議を行ったので一回だけではございませんけれども、それとは別に、任命権者であります内閣の方に事務方から様々な調査の結果又は先例を断続的に報告、連絡、お示しをしてきたところでございます。その過程でいろいろな意見が出たというのは、法務省内の協議においてですね、特に処分の案についての意見については出たところでございます。
○山添拓君 では、大臣、内閣との様々な協議の中では、懲戒に付すべきかどうかという意見についていろいろな意見は出なかったということなんですか。
○国務大臣(森まさこ君) 私の方では認識しておりません。
○山添拓君 懲戒処分を行うことができるのは内閣であって、法務省ではありませんね。
○国務大臣(森まさこ君) 懲戒処分を行う場合には、その主体は任命権者である内閣であると承知しております。
○山添拓君 だからこそ、大臣は、最終的には任命権者である内閣において決定がなされたと、懲戒には付さない、こういう決定をなされたと述べているんだと思うんです。
昨日、大臣は、黒川検事長の調査結果等について協議をするのは当然、事務的に調査の経過について途中経過も報告し、協議をしていたと答弁されました。この中で懲戒処分を行うべきかどうか判断を求めて、そして、内閣の判断としては訓告でよかろうということだったと、こういうことじゃないんですか。
○国務大臣(森まさこ君) 二十二日の記者会見における私の、内閣において決定がなされたという発言でございますけれども、法務省及び検事総長が訓告が相当と決定した後、内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得たことを申し上げたものでございます。
○山添拓君 では、ここで言われたことは間違いだということになるんですか。
大臣は、様々なことを総合考慮した上で、内閣で決定したものを検事総長に伝えたと、検事総長から訓告処分にすることを知らせを受けたと、こう述べられていますけれども、そして私はそのとおりだと思いますけれども、それを、自らの言葉を否定されるということなんですか。
○国務大臣(森まさこ君) 様々な調査結果、先例等について、また人事院の指針等の条項について内閣の方にお示しをし、報告をしております。
また、総務省の中においては、法務省内の先例の処分案等を検討しながら、いろいろとみんなで協議をいたしました。その結果、元々事務方が持ってきた訓告という案に落ち着き、それを内閣に私が持っていったわけでございます。そして内閣ではそれを了承したという意味で、様々なことを総合考慮した上で、内閣で決定したというふうに述べました。
○山添拓君 大臣いろいろおっしゃるけれども、二十二日の会見が間違いだとはおっしゃらない、このとおりだからだと思うんです。
法務省の資料にもちゃんと書いてあるんですね。資料の三ページを御覧ください。下から二行目ですけれども、これらを総合的に考慮し、先例も踏まえると、黒川検事長に対しては、国家公務員法上の懲戒処分に付すべきとまでは認められないものの、監督上の措置として最も重い訓告とするのが相当だと。これは任命権者である内閣でないと懲戒処分に付すべきでないという結論出せませんから、内閣において懲戒にはしないという判断があったから書いているんですね。
○国務大臣(森まさこ君) 内閣の一員である法務大臣、そして内閣が任命するに際する閣議の請議を出した法務大臣として、様々なことを検討をいたしました。そして、訓告が相当とするとしたのは、懲戒処分に付すべきとは認められないものの、その監督上の措置の最も重いものが相当という意味でございますので、そのような意味で記載をいたしたところでございます。
○山添拓君 では、ここで、懲戒処分に付すべきとまでは認められないと、これは法務省の判断だということですか。
○国務大臣(森まさこ君) 先ほど申し上げたとおり、法務省の方で意見をまとめまして、それを総理に報告し、了承されたということでございます。
○山添拓君 懲戒処分に付すべきではないと法務省で判断した、その理由は何ですか。
○国務大臣(森まさこ君) 様々な総合考慮でございますので、調査結果の中に書いてございますけれども、賭博に当たるかどうか、又はその地位でありますとか先例の内容でありますとかレートでありますとか様々なことを考慮して、懲戒処分とは言えないものの、監督上の措置の最も重い訓告というふうに判断をいたしました。
○山添拓君 いや、懲戒処分に付すべきかどうかというのは任命権者しか判断できないんですよ。そんなことないという与党側からの声が上がっております。これは法律に反する行為を認めるような発言です。
大臣、もう一度伺いますけれども、任命権者である内閣において、懲戒に付すべきかどうか、その判断はなされていないということなんですね。
○国務大臣(森まさこ君) 先ほど申し上げましたとおり、まず、内閣の一員である私、法務大臣、そして検察庁を所管をしておる私、法務大臣の方で、懲戒処分を含めた処分、どのような処分が相当かということを法務省の調査結果に基づき検討をしたものでございます。そして、その検討した結果の意見を内閣の方にお持ちをして了承をしていただいたということでございますので、内閣の御判断をいただいたというふうに考えております。
○山添拓君 森大臣は今日午前中の記者会見で、処分が決まるまでの過程において、内閣に調査の経過報告、先例の説明、処分を考える上で参考となる事情の報告などを行ったと述べておられます。これは事実ですね。
○国務大臣(森まさこ君) はい、事務方において行いました。
○山添拓君 そうして、内閣に調査の経過報告や先例の説明、様々な事情の報告などを行ったけれども、内閣としては、これ処分の前の話ですから、懲戒までは至らない、こういうことを言ってきたと、そういうことですね。
○国務大臣(森まさこ君) 処分の……(発言する者あり)失礼いたしました。処分の内容までは伺っておりません。
○山添拓君 懲戒処分が必要かどうかについて内閣の意見が伝えられたのかと聞いています。
○国務大臣(森まさこ君) 伝えられておりません。
○山添拓君 ということは、内閣において、黒川検事長について懲戒処分をするべきかしないべきか、この検討は一切されていないということになるわけです。これ、任命権者としての責任を放棄するものと言わなければならないと思います。
委員長にお諮りしますが、先ほど大臣がおっしゃった調査の経過報告や先例の説明、処分を考える上で参考となる事情の報告、内閣に上げたという資料について、委員会に提出するようお取り計らいいただきたいと思います。
○委員長(竹谷とし子君) 後刻理事会で協議いたします。
○山添拓君 安倍首相は、今年一月に黒川氏の勤務延長を認めた閣議決定について、法務省が人事案を持ってきたと述べています。もちろん形式的には法務大臣が閣議請議したものでありましょう。しかし、実際には官邸の意向を受けたものではないかが問題とされてきました。過去に一度もない勤務延長だからであります。
黒川氏の人事案を閣議にかけた際、この人事は過去に一度もやったことのない異例の人事だと、過去の国会でできないと答弁しているので解釈変更が必要なものだ、それでも黒川氏でなければならない、大臣はこのように説明されていましたか。
○国務大臣(森まさこ君) 質問の趣旨が必ずしも明確ではなかったのですが、過去の答弁についてのお尋ねでございましょうか。(発言する者あり)はい。
○山添拓君 黒川氏の人事案を閣議にかけた際に、こういう人事は過去に例のないものだと、過去国会ではできないと答弁していたものを解釈変えなくちゃいけないんだと、それでも黒川氏でなくちゃいけない、こういう異例の人事だということを説明されたのかと伺っています。
○国務大臣(森まさこ君) 人事のプロセスですので詳細は控えますが、過去の国会答弁で、ダイレクトにできないというような答弁は見当たらなかったものと承知しております。
○山添拓君 いや、過去は、検察庁法では勤務延長はできないという答弁はあるわけです。そのことを説明されなかったということですか。法解釈を変える必要がある、それは検察の独立性に関わるのだと、こういうことを閣議請議する際におっしゃらなかったんですか。
○国務大臣(森まさこ君) 失礼いたします。
過去の答弁について、定年制についての答弁はあったと思いますけれども、勤務延長についてはダイレクトな答弁はなかなか見当たらなかったものと承知しておりますが、閣議請議のときのその詳細なプロセスについては差し控えさせていただきたいと思います。
○山添拓君 法解釈を変えてまでやらなくちゃいけない人事だという自覚はそのときおありだったのかと、そのことを閣議に諮ったのかと聞いています。個別の人事じゃないです。制度の問題です。
○国務大臣(森まさこ君) 解釈変更については、個別の人事の前に適正なプロセスを経て行われたものであります。それとまた個別の人事は別の地点の話でございます。
○山添拓君 解釈変更しているからこういう人事も可能です、そうして閣議にかけたわけですか。
○国務大臣(森まさこ君) 閣議の内容の詳細については差し控えさせていただきたいと思います。
○山添拓君 検察の独立性に関わって、これだけ大問題になるような法解釈の変更なんです。そのことを閣議に諮らずに黒川氏の人事をかけたとしたら、それ自体が、私は、問題意識のかけらも持たなかったのだとすれば、法務大臣としての資質を問われる問題だと思います。
森大臣は、六十三歳以降検事長が続投しなければならない具体例は黒川氏の人事しかなかったと述べています。そして、法務省の説明では、その直前に解釈変更をしたことになっております。要するに、黒川氏を勤務延長させる必要が生じたので解釈変更をしたと、こういうことですね。
○国務大臣(森まさこ君) 違います。
まず、解釈変更については、従来からこれは論点であったことも山下元大臣も国会の中で述べておられましたが、年末ぐらいから時間があった中で法案の内容を再度検討したときに、解釈変更の論点についても事務方において検討を始めたものでございます。
また、その個別の人事については解釈変更がなされた後に行ったものでございまして、その後の具体例が幾つあるかというと、まだ今のところ一つしかないわけでございます。
○山添拓君 従来、解釈変更の必要性など議論されていなかったんですよ。
時間が来ましたので終わりますけれども、今の大臣の説明は、たまたま時間ができて解釈変更をしたら、たまたまその直後に適用事例が出てきたと。これ、にわかに信じられないお話であります。
短い期間で既に違法な勤務延長、悪質な非違行為への処分、いずれも恣意的な人事が繰り返されております。このことを厳しく指摘をしまして、質問を終わります。