山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2020年・第201通常国会

予算委員会公聴会で公述人へ質問

要約
  • 予算委員会公聴会 公述人の全労連・野村事務局長が、新型肺炎の休業補償について「働く人すべて対象に大きな転換点に」と強調し、内部留保の還元、大胆な財政出動を提案。雇い止めをさせない対応策等について山添議員が質問し、廃業を防ぐ損失補てん、労働者への直接給付などの国会議論を求めました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。よろしくお願いをいたします。
 新型コロナウイルスによる国内への影響を考えるに当たって、既に昨年の十月からの消費増税によって国内経済に深刻な消費不況が起こっていたということがだんだんいろんな面で明らかになってきていると思います。昨日、内閣府が発表した昨年十月から十二月のGDP二次速報でも年率マイナス七・一%だったとされています。政府も予想を上回るマイナスと認めざるを得ない数字であります。
 しかし、この事態は決して予想できなかったわけではないだろうと思います。景気の後退局面での消費増税だったからですし、GDPが増税前からゼロ成長だということも明らかになってきています。その上、一月以降、更に景気が悪化をし、例えば自動車の販売やデパートの売上げなどで一月の落ち込みが拡大しておりました。こうした中で新型コロナウイルスによる影響が追い打ちを掛けている状況で、二月は急激な悪化だと評価をされています。
 そこで、熊野公述人、野村公述人にそれぞれ伺いたいのですが、これ以上暮らしと経済の危機を深刻化させないためには経済政策の転換が必要だ、我が党は消費税を五%に戻すべきだと考えますが、少なくとも、この消費増税がコロナに先立って国内経済に深刻な影響を生んでいた、それはもう明らかだと思います。そうである以上はそれに対する対策が必要ではないかと思いますが、御意見をお聞かせください。
○公述人(熊野英生君) 御質問の一つは、今回のコロナは予想できたんじゃないかというものもあったと思うんですけれども、消費税を上げるに当たっていろんなリスクを考えて、それ政策を打っていて、今回は補正予算で四・三兆、来年度予算では一・八兆という形で、そういう意味では、既に対応が備えられてきたことは私は非常に不幸中の幸いで、全く予想できないことが起こったわけではないかもしれないですが、ただ、ちょっと、そこでもう一つ、消費税がだからいけないんじゃないかという話に関しては、私はそうは思わないということを申し上げたいんですけれども。
   〔理事三宅伸吾君退席、委員長着席〕
 なぜ消費税を上げるかというと、これから生産年齢人口、十五歳から六十四歳の人数はどんどんどんどん減っていって、勤労者が減っていくわけで、そうすると、恐らく所得税も減っていきますし、法人税も減っていくだろうと。そういう中で社会保障費がどんどんどんどん上がっていくので、これはやっぱり法人税や所得税では賄い切れないので、それは、将来の社会保障を支えるために、つまり、中長期的な人口動態の変化、経済構造の変化に備えて消費税率はいつか上げないといけないと。
 何回か先送りされたんですけれども、昨年の十月に引き上げられたんで、消費税率の引上げ自体はこれはいつかやらないといけないということで、雇用の情勢などを見ると、安倍政権の消費税率の引上げというのは私は間違いではなかったと思いますし、それに対する反動減に対しては、先ほども申し上げましたけれども、補正予算などで対応していたので、今の政策に誤りは私はなかったんではないかと思います。
○公述人(野村幸裕君) 先ほど来申し上げていますように、GDPの約六割は個人消費です。二〇〇三年と一八年を比較すると、十五年間で平均消費性向は五%減っています。
 ところが、これは総務省の家計調査からですけど、定期収入が五分位の一番の方々はほとんど変わりません。定期収入の五分類、分位に属する人たちは約八ポイント、七ポイントぐらい下がっています。これは、収入に応じてこの減少というのが大きくなっている。つまり、この間のやはり消費税の増税や、あるいは非正規雇用労働者の低賃金、労働条件の悪化を放置してきたことによって生じるやはり消費の低迷が大きな要因になっているというふうに考えています。
 したがって、八%から一〇%だけではなくて、やはり五%に戻すことによって消費に対するその性向を上げていくということが今非常に重要になってくるし、そういうメッセージを数字として発することが大きな力になっているんではないかなと。と同時に、やはり最低賃金を引き上げるとか中小企業を支援するとか、そういう経済というか財政の投入先をどこにするのかという基本的な考え方についての転換というのは必要になってくるというふうに考えています。
○山添拓君 私は、昨年の消費増税によって消費が落ち込んでいる、GDPが落ち込んでいる、消費不況が深刻化している、こういう事態がやはり予想できなかったわけではないだろうということを申し上げたいと思っておりました。消費増税による影響を緩和するためのいろんな対策を政府も打っていると言いますけれども、それに加えてこのコロナによる影響がこれから顕在化をしてくると、そういうときに今のような対策でよいのだろうかという問題意識があります。
 熊野参考人に伺いますが、政府は、今日この後、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第二弾を発表するとされています。ところが、そこには目新しいものはほとんどないと言ってよいかと思います。まあ中には、フリーランスについて一日四千百円の、所得、生活補償のようなものを入れると、こういうものも含まれているようですが、規模として総額は二千七百億円の予備費の一部を使うという状況にあります。しかも、これは今年度予算の予備費ですので、今月末までの限られた対策でしかありません。今、香港では一兆七千億円、シンガポールで五千億円、韓国一兆三千七百億円などといった、ちょっと規模の違う、桁の違った対策が次々講じられておりますし、アメリカでも補正予算が組まれるような状況です。
 今、日本で求められているのは、こうしたいろんな諸外国でも見られているようなちょっと規模の違った、桁の違った支援策であって、コロナ対策が一円も含まれていないような来年度予算を、これは組み替えてでもですね、対応していくべきときなのではないかと。
 この影響いつまで続くかということが分からない中での問題ではありますけれども、このまま、コロナ対策、明示的にされているのが一円もないような予算を通していくというのは、やはりこれは予算の審議としてふさわしくないのではないかと思いますが、この点についての御意見はいかがでしょうか。
○公述人(熊野英生君) 恐らく、今日出てくる対応策というのは不十分だという、そういう見方もあるかもしれないですが、これは一連の対策のうちの一番最初のアクションじゃないのかなと思います。
 私もちょっと御説明の中で整理いたしましたが、まずは止血が大切で、その次に復旧が、元に戻すやつが必要で、さらにその後、復興で右肩上がりのトレンドにもう持っていくと。そういう意味では、安倍政権が今やろうとしているのはまさに止血政策で、やっぱりここは、雇用調整助成金と資金繰り支援というのは非常に的確なんではないのかなと思います。物足りない部分については、恐らくこれから幾らかの金額を掛けながら、復旧策、で、復興が出てくるので、もう少し政策の推移を見た方がいいんじゃないかと思います。
 あと、欧米では大規模な金額のいろいろ財政出動が出ているじゃないかという話なんですが、東京オリンピックが仮に七月に開かれると、これに勝るお金を掛けた対策はないので、日本は海外と違って元々そういう対策が七月にあるんだというふうに認識すると、追加的な補正予算の投入というのも、金額ありきではそれほど大規模なものは要らないんじゃないかと。
 むしろ、従来型の公共事業よりも消費に近いところ、今、建設業界では人手不足で、建設受注ががあっと積み上がったとしても、それを消化するのにすぐには消化できない状況ですから、やっぱり機動的な消費に近いところでの対策を考えながら、投下とはまた別の復旧、復興を考えていくというのが上策ではないかと思います。
○山添拓君 野村参考人に伺います。
 今、熊野公述人の話にもありましたけれども、この間政府が打ち出してきた対策の中では、例えば雇用調整助成金にしても、あるいは新たな休業補償、所得補償の助成金にしても、いずれも事業主に対する助成だと思うんですね。事業者が休業手当を支払った場合にその一部を負担する、あるいは事業者が特別の有給休暇を取得させた場合にその分を補填すると。いずれも、事業主がこの制度を把握し、自社で適切に運用しなければ、これは支払われないことになります。ところが、実際には、年休を取って済ますように求めたり、あるいはそもそもシフトに入れないと、契約を更新しないことで休業扱いにしなかったりといった事態が起きていると伺います。
 熊野公述人からは周知徹底が大事だというお話もありましたが、事業主を相手にした仕組みとなっていることの問題点について、野村公述人はどのようにお考えでしょうか。
○公述人(野村幸裕君) 労働相談の中でも、事業主が請求するのではなく労働者に直接支払うというシステムはないのかとか、あるいは、やっぱり私自身が欲しいんだと、しかも、本当に貧困ライン等で、シングルマザーの方々から言わせると、あしたの食料費どうやって稼ぐんだという話まで出てくる事態ではあるんですね。だとすると、やはり少なくとも労働者に直接支払う方法が全くないのかどうかという点については、やはりこれからの国会審議の中で十分に議論していくということが必要だというのが一つです。
 二つ目は、やっぱり広報というのは当然私も思います。
 三つ目は、あわせて、やはり事業主が請求しやすい、あるいは事業主がこの制度を使っても損失が少なくなるという制度設計、これが必要かなというふうに思います。特に今回のような場合については、やはり子供たちがよく言うんですが、日本は島国だろうと、なぜ水際で止められなかったのかと。そのことを考えると、その子供たちの答えにもなるように、やはり私たちがこの止められなかったことに対する責任をきちんと果たすべきだと。
 そういう点からいっても、特に今回については、これをやっぱり十分の十というのが特に中小企業に対しては必要になってくるだろうというふうに考えています。
○山添拓君 ありがとうございます。
 既に、観光バスの会社で雇い止めされたという報道がありました。解雇やあるいは契約を更新せず雇い止めをするということが、これから年度末になるということもあり、起こり得ると思います。ところが、この予算委員会でもそうした観点からの審議がありましたが、厚労大臣は、失職した場合には失業給付を受けてくれと、こういう答弁で、これはもう余りにも冷たい姿勢だと思うんですね。
 野村公述人に伺いますが、今、職を失う人が出ないようにするために政府に求められる対応は、当面ですね、求められる対応としてどういうことを現場からは求められているか、この点について伺いたいと思います。
○公述人(野村幸裕君) 私どもは、消費税の税率引上げによって中小企業の倒産や廃業が増えているという事態から、地域によっては失業者は増えてくるという、ベースとして増えているというふうに考えています。したがって、年越し派遣村のような事態が発生しないとは誰にも言い切れないというふうにそもそも思っていました。それに加えて、今回の新型コロナウイルスによって解雇や廃業が続けば、市、町にはその失業した労働者が増えてくるという危険があるというふうに思います。
 したがって、そこには、既に中国旅行社なども中心に失業、廃業が続いていますので、そこには、廃業させないための、やはり融資の先送りだけではなくて、直接的な営業の補填というのが必要になってくるだろうと。しかも、これは前渡金的な性格を有する資金でやっていくということが必要になってくると。
 だから、企業を継続させるための資金、あるいは、企業がこれまでは中国を中心にやっていたけれども、未来投資会議で言っているように、ほかのところも対象にするんだというのであれば、それに係る時間も必要になってくるので、その間の活動資金というかな、資金が必要になってくるだろうと。
○山添拓君 非正規で働く人にとっては、例えば、そもそもシフトが入れられないために、労働日でないから休業ではないと、したがって休業手当や特別休暇の対象とならないと、こういうケースもあるだろうと思います。
 非正規で働いていて今回の事態に直面し、いろいろな要求を持っている方の声として、労働組合にどのような実態が寄せられているのかについて、先ほど、行ってみたら帰れと言われたと、こういう声も紹介いただきましたけれども、ほかにどのような声が寄せられているかについて御紹介をいただき、こういう人たちに対しての手当てが当然必要だと思います。
 自治体の中には、国の用意しようとしている休業補償の対象とならない人を対象にして独自の支援制度をつくろうと、こういう動きもあるようですけれども、本来、これは国の要請で起こっている事態に対して取り組むべき点が多々あるだろうと思います。この点について野村公述人に御意見を伺いたいと思います。
○公述人(野村幸裕君) 幾つかの点については職場の現状と課題という資料の中でも展開をさせていただいていますが、具体的なところでは、例えば、六ページのところが契約社員やフリーターの方々からの意見としてあるんですが、自宅待機を命じられたけれども、今回の事態は会社の責めに帰すべき事由に基づくものではないから、あなた方にお金を支払う必要はないというふうに言ったり、あるいは、ほかのところで働く予定、ほかのところで試験の監督をする予定にしていたんだけど、今回それがなくなったので、もうあなたの需要、枠はないですよと言われて、その分の補償もないと言われた人。あるいは、スポーツジムがやはり多いんですけど、スポーツジムなどでは、閉鎖になったんだけれども、それはそもそも私たちの責任ではないので、あなたに支払う必要はないというようなことなど。
 要するに、私たちの働く権利が奪われたにもかかわらず、その権利を保障する手がないということに対する相談があり、しかも、まだまとめていないんですが、昨日、全労連で一斉の労働相談を行いました。マスコミの注目も高く、大分や山口や多くのところで放送局も来ました。その中では、そういう非正規の方々からの声がたくさん寄せられたということです。
○山添拓君 ありがとうございます。
 残された時間で熊野公述人に伺いたいのですが、昨日、中国、韓国からの入国規制を強化をいたしました。経済への影響は、出口が見えないだけに深刻なものです。私は、同時に、これまでの政府のインバウンド政策そのものも問われるべきときに来ているように思うんです。訪日外国人客四千万、六千万という数字ありき、とにかくたくさん来てもらって金を落としてくれればよいと、こういう政策の下で、交通機関や観光地が飽和状態になり、違法民泊など地域で様々な問題も生じてきました。
 住んでよし、訪れてよしというこの観光立国推進基本法の精神とも反するような事態が起こっていると思うんです。こうした点についてもし御意見ありましたら、伺いたいと思います。
○公述人(熊野英生君) おっしゃるお気持ちは私も全く同感なんですが、恐らく中国、韓国の渡航を制限する背景には、やっぱり感染拡大をごく短期で終息させないとという安倍政権の考え方があるので、まずはやっぱり感染阻止の方を優先したので、そういう点では同時におっしゃっているようなダメージが出ているんだというふうに、まあ仕方がないということではありますが、ごく短期でやっぱりこの渡航制限については終わらせるような形で感染対応全体を考えていかないといけないのではないかというふうに思っています。
○山添拓君 ありがとうございました。

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