2021年・第204通常国会
- 2021年3月30日
- 法務委員会
法務委員会で、調布陥没・空洞事故について質問しました。
- 要約
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- 法務委員会で、調布陥没・空洞事故について質問しました。工事開始直後から、付近の川での気泡や工事現場での水の噴出、住宅での騒音や振動が報告され、閣議決定された「基本方針」では、地盤への影響の可能性や慎重な施工が明記されてきたことを指摘。適切な工事をできない事業者に大深度地下使用を認可した国交省の責任を追及しました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
東京外郭環状道路、外環道の工事で、昨年十月、調布市の住宅街で陥没事故が起き、その後三か所の空洞が確認されました。私も調布市民で、現地を訪れてお話も伺ってきました。不安と怒りが大変広がっております。都内の十六キロ、四十メートルより深い大深度地下にトンネルを掘る工事です。大深度地下法によって地上権者の同意や補償は不要とされております。
まず、大臣に確認します。民法二百七条は、土地の所有権はその上下に及ぶとしています。地下四十メートルにも所有権は及ぶのですね。
○国務大臣(上川陽子君) 民法第二百七条は、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と定めております。これは、土地の所有者は、その土地を自由に利用できる権利を有しており、その土地の所有者は、所有者の権利の行使につき、利益が存する限度において、上は空中へ、また下は地下に及ぶことを規定するものでございます。
○山添拓君 四十メートルより深いところにも及んでいるということでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 一般論で申し上げるところでございますが、土地所有者の権利の行使につきまして、利益の存する限度におきまして大深度の地下にも所有権が及ぶと考えられます。
○山添拓君 三月十九日、東京外環トンネル施工等検討委員会の有識者委員会が報告書を発表しています。そこでは、陥没や空洞の原因を特殊な地盤条件の下での特別な作業だとしています。この特殊な地盤条件と言っているのは、れきが多いと、その上は砂の層になっていると、しかも表層部分が薄いと、こういう特徴だとしています。
国交省に伺います。有識者委員会はこう述べている一方で、事前の地盤調査は適切に行われているとしています。特殊な地盤であることは把握できていたということなんでしょうか。
○政府参考人(宇野善昌君) お答え申し上げます。
事前調査におけるボーリング調査については、トンネル標準示方書等の各種基準、指針等において百メートルから二百メートル程度の間隔で調査を実施することが推奨されております。東京外環事業におきましても、調査間隔二百メー程度を目安として事業区域周辺で八十六本のボーリング調査を実施するとともに、ボーリング調査地点間に地盤急変部が存在するかを調べることを目的として、物理探査として微動アレイ調査を実施しております。
これらの工事着手前に行う事前調査により、東京外環全線にわたり地表部からシールド掘削断面までの地層構成や地盤強度、粒度分布などについて確認しておりました。
○山添拓君 適切に把握できていたという説明になるわけですが、しかし、地上は住宅街なんですね。そのため、事前のボーリング調査というのは不十分なものでありました。地下深くまで打ち込むようなものは少なかったわけです。そこで、工事を進めてみると、シールドマシン、掘削機が何度も止まってしまいました。適切に把握していたどころか、ほとんど行き当たりばったりという状況だったわけです。
同様の地盤は沿線の五か所にあるといいます。地盤の特殊性がこの原因だとすれば、同じように陥没が起きてしまうことになります。それでは困るということなのか、有識者委員会は特別な作業を理由として強調するようになりました。元々この工事で、地上で騒音や振動があるという住民の声が寄せられておりました。そのために掘削機を夜間停止させていたんですね。その間に土が詰まってカッターが回転しなくなり、土を軟らかくするための液体を注入したところ、圧力が不均衡になり、土を取り込み過ぎ、その結果、地盤が緩んだとされています。
同様の地盤で同様の工事を進める限りは、土砂の取り込み過ぎによって陥没や空洞をつくる可能性は今後も否定できないのではありませんか。
○政府参考人(宇野善昌君) 今回発生の陥没、空洞周辺の地盤は、先生おっしゃるとおり、れきが卓越して介在して、シールドトンネル掘削土の塑性流動性の確保に留意する必要がある地盤であること、それから、掘削断面上部は単一の砂層である流動化しやすい層が地表面近くまで連続している地盤であること、表層部は外環沿線における他の区間と比べ薄い地盤であること、これらの条件の全てに該当する特殊な地盤であるということでございます。
また、作業につきましては、夜間休止時間にシールドマシン内の土砂が分離、沈降し、締め固まったことによりシールドカッターが閉塞したことから、土砂を一部排出し、直ちに排出土砂分の気泡溶液と置き換えるなどの特別な作業を行っていたとされておりまして、このような特殊地盤条件下における特殊な作業が今回の陥没、空洞事象の原因であると推定されたと認識しております。(発言する者あり)
はい。そのために、今度、この度の有識委員会では、再発防止対策として、閉塞をさせない、過剰な土砂取り込みを生じさせないために、シールドトンネル内の土圧をリアルタイムに監視、より厳しい管理値の設定、気泡材の重量を控除しない掘削土重量を管理する等による排土管理の強化などの対応を講じるとともに、万が一閉塞が生じた場合には、工事を一時中止し、地盤状況を確認するために必要なボーリング調査を実施すること等が取りまとめられたところでございます。
○山添拓君 取り込みを過剰に行う、土砂の取り込み過剰、これはまた起こり得るということですよね。
○政府参考人(宇野善昌君) ただいま申し上げた有識者委員会では再発防止策を取りまとめていただいておりますので、この再発防止策をきちんと適切に講じることによって本件のような陥没、空洞事象は発生しないものと認識しております。
○山添拓君 いや、そうではないんですよ、取り込み過剰は起こり得ると、だからそれをきちんとモニタリングしようというのが有識者委員会の指摘なわけです。
シェービングクリームのような液体を注入する気泡シールド工法という工事手法ですが、それ自体の見直しが迫られているにもかかわらず、その検証はされておりません。これは再開などもってのほかだと指摘しなければなりません。
NEXCOは三月十九日、有識者委員会後の記者ブリーフィングで、突然、地盤補修のために仮移転を求めると言い出しました。しかし、補修工事の方法というのはこれから検討するというのが報告書だったはずです。工法も決まる前に、また住民に対する説明もない中で仮移転を言い出したと。そのために、住民の中に新たな不安や不信を招いています。
仮移転を求めるのは決まったことなんでしょうか。移転費用や移転中の生活補償、また戻る際の再建費用など、これは全額を補償するということなんでしょうか。
○政府参考人(宇野善昌君) 先生おっしゃいますとおり、第七回目の有識者委員会においては、地盤の補修を実施していく必要があるということ、地盤の緩みが生じている可能性のある範囲については地盤補修予定範囲として引き続き調査を実施し、補修等の措置が必要となる地盤を特定していくこと、補修工法については今後具体的に検討していく必要があることとされ、現在、事業者において具体の検討を行っているところでございます。
移転につきましては、こういった調査、それから補修を行う上で必要な範囲において仮移転をお願いすることがあり得るということでございます。今後、住民にもよく説明した上で、地盤の補修を進めていきたいというふうに考えております。
○山添拓君 これはNEXCOが勝手に進めるべきことではありません。被害に遭っている住民の意思を尊重すべきだということは重ねて指摘をさせていただきたいと思います。
資料の二ページを御覧ください。
元々、大深度地下の工事は地上への影響は生じないと説明されてきました。二〇一五年には当時の太田国交大臣が答弁し、東京外環のホームページには今もその記載があります。しかし、陥没や空洞が生じました。
そもそも工事が始まった直後から、付近を流れる野川という川では気泡が確認され、工事現場では水が噴出し、住宅で騒音や振動が報告されておりました。地上への影響はこうした事前の説明とは異なって多数生じていたんですね。
二〇〇一年四月三日に閣議決定された大深度地下の公共的使用に関する基本方針でも、施工時に大量の土砂を掘削した場合、地盤の緩み等が生じ地上へ影響を及ぼす可能性もあるため、慎重な施工を行うことが必要と明記していました。
国交省に伺いますが、地上への影響が生じないという説明は、これは誤りですよね。
○政府参考人(宇野善昌君) 今御指摘のありました当時の国土交通大臣からは、大深度地下におけるシールド工法による工事については、適切に工事が行われれば地上への影響は生じない旨を答弁したことと承知しております。この答弁につきましては、適切に工事が行われることを前提にお答えしているものと認識しております。
これに対し、今回の陥没、空洞を受けて有識者委員会において検討を進めてきた結果、先ほどお答えしたとおり、特殊な地盤条件下においてシールドカッターが回転不能になる閉塞を解除するために行った特別な作業に起因するシールドトンネルの施工が陥没、空洞事象の要因と推定され、施工に課題があったと、こういうことが確認されたところでございます。
○山添拓君 いや、特殊な作業を行っていないところでも、騒音も振動も確認されているんですよ。地上への影響は起きているんですよね。
そして、今のような御説明というのは、適切な工事ができない、施工不良ですよね。施工不良を起こすような、そういう事業者に大深度地下の使用を認可した国交省の責任を棚上げにするものじゃありませんか。大深度地下の使用の認可も工事の認可も国交省なんですよ。そういうところにやらせたという責任、どう考えているんですか。
○政府参考人(吉田誠君) お答えを申し上げます。
いわゆる大深度地下法によります使用認可制度でございますけれども、これは単に大深度地下の工事であれば常に地上に影響を与えないということを前提としたものではなく、また、具体の工事に許可を与えるというような性質のものではなく、国民の権利保護に留意しつつ、公益性を有する事業のために地権者により通常使用されない空間である大深度地下に公法上の使用権の設定を認めるという性質のものでございます。
調布市における今回の案件につきましては、NEXCO東日本の有識者委員会における最終報告の内容によれば、あくまで工事の施工に起因する可能性が高いということが確認されたということでございまして、今後、事業者において再発防止策の実施に向けた対応が行われることと承知しておりますところ、国土交通省としましては、引き続きこれらの動向等を注視してまいりたいと考えているところでございます。
○山添拓君 何の責任もないかのような言いぶりなんですけれども、大臣に伺います。
これ、大深度地下法は所管外かと思いますけれども、現に陥没や空洞ができ、家屋は傾いて、地盤の補修まで必要になっております。これは財産権侵害じゃありませんか。
○国務大臣(上川陽子君) 先ほど答弁したとおりでございまして、土地の所有者は、その土地を自由に利用できる権利を有しております。
土地の所有者の侵害の有無につきましては、最終的には個々の事案に応じて判断されることになるところでございますが、一般論として申し上げれば、不適切な工事によって所有者による土地の利用が阻害された場合には、当該土地の所有権が侵害されたとの評価がなされ得るものと考えられます。
○山添拓君 所有権侵害なんですよ。にもかかわらず、事前に地上権者の同意も得ず補償も行わない。それゆえ、地盤の状況を調査するための事前ボーリングの数も限られて、トラブルが発生した場合の地上での対応も十分にできないと。
大深度地下法の前提が崩れたものであり、見直すべきだということを指摘をしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。