2021年・第204通常国会
- 2021年4月8日
- 法務委員会
法務委員会で、刑法性犯罪について質問しました。
- 要約
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- 性交同意年齢は、明治40年から現在まで13歳とされてきたが、自由意志に基づく同意を期待できる年齢とは言いがたい。性交同意年齢の引き上げは、性暴力被害者団体からの声もあり、国連からも勧告されている。少なくとも義務教育終了後の16歳未満へ引き上げるべきと質問。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
性暴力の被害当事者などでつくる団体、Springが昨年十一月、性被害の実態調査アンケートの結果を発表しました。インターネットで実施をされ、三週間で六千件近い回答が寄せられました。性被害の内容や加害者との関係、被害当時の状態や加害者の言動なども含めて、質、量とも豊富で、とても画期的な調査だと私は思います。
被害者の八割以上が警察に被害を相談しておりませんでした。さらに、警察に相談した八百九十四件のうち、約半数、四百二十九件は被害届を受理されなかったと答えています。
昨年六月、政府の性犯罪・性暴力対策の強化方針を受けて、警察庁は被害届を即時受理するよう各都道府県警察に通達しています。しかし、現実には、客観証拠がないとか、あるいは暴行、脅迫がないなどといって受理されないケースが引き続きあるということも伺います。
受理件数というのは増えたんでしょうか。
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
警察におきましては、犯罪被害の届出に対しては、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理することとしております。
また、警察庁におきましては、被害者支援団体の方々や性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの方々から被害届の受理に関する御意見等を伺うなどして実態把握に努めるとともに、必要に応じて都道府県警察を指導しているところであります。
今後も引き続きまして、こうした取組を推進するなどして、被害者の方の心情に配意した適切な性犯罪捜査が推進されるよう都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
○山添拓君 受理件数が増えたかどうかというのは、今の段階では分かりませんか。
○政府参考人(猪原誠司君) 性犯罪の認知件数につきましてであります。
まず、強制性交等でありますが、令和二年中、千三百三十二件を認知しております。令和元年につきましては千四百五件となっております。改正刑法の施行されました平成二十九年以降を見ますと、認知件数は増加傾向にございます。
また、強制わいせつでありますが、令和二年中、四千百五十四件を認知しております。令和元年につきましては四千九百件でございます。これにつきましては、近年、認知件数は減少傾向にございます。
○山添拓君 強制性交についても、一昨年に比べると認知件数としては減っているという話でありました。
Springの調査では、被害に遭った際、すぐに被害だと認識できたかという問いに対して、いいえと答えた人が五二%でした。被害と認識するまでの年数は平均七年だったとも言われています。被害を認識して、意を決して警察に相談しているんですよね。ですから、まず被害申告は受け止められ、支援につながることが大事です。どんな警察官、検察官、裁判官に当たるか、被害者の運次第だという事態は防ぐべきであります。
刑法の性犯罪規定そのものについても、人権、個人の尊厳に即した改正が求められます。
日本学術会議は、昨年九月二十九日、同意の有無を中核に置く刑法改正に向けてと題する提言を発表しています。同意の有無を中核とするのが国際人権基準だとしていますが、どのような内容でしょうか。
○政府参考人(福井仁史君) 日本学術会議でございます。御説明をさせていただきます。
まず、昨年九月の私どもの提言の方で、同意の有無に関しまして、これを犯罪構成要件の検討に用いる際に有用な国際人権基準として二つのものを紹介しております。一つは、二〇〇九年でございますから平成二十一年になりますが、国連の女性に対する暴力に関する立法ハンドブックというものでございます。もう一つは、その二年後、欧州評議会の方で採択されました、女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンス防止のための欧州評議会条約、略してイスタンブール条約と呼ばれているものでございます。
簡単にちょっと中身を御紹介させていただきます。女性に対する暴力に関する立法ハンドブックでございますが、これは、その内容的にはいろんなことを述べておりますけれども、特にこの関係では、強制力や暴力を用いてなされるという要件を廃止した上で、明白かつ自発的な同意の不存在のみを犯罪成立要件としつつ、この同意を確信するに至った経緯について被告人に証明を求める、あるいは広範な強制された状況下で行われた行為を全て犯罪とする、そのいずれかを採用するように勧告しておられます。
学術会議の提言では、性暴力については、加害行為の態様ではなく、同意の不存在又は状況のみを要件とする犯罪化が認められているというふうに解説しております。
それから、もう一つのイスタンブール条約でございますが、これは、女性に対する暴力の一形態として性暴力、強制性交を含むを規定しておりまして、その中で、必要な同意が自由意思の結果として自発的に与えられなければならない、当該自由意思は関連する状況の文脈において評価されるというふうに規定しております。
これも、提言の中では、犯罪の成否は、あくまで同意の有無によって決せられるのであって、暴行又は脅迫の有無によって決せられるのではないというふうに述べているところでございます。
提言の該当部分の概要は以上のとおりでございます。
○山添拓君 ありがとうございます。
同意は自由意思の結果として自発的に与えられなければならないという指摘は重いものだと思います。
ところが、現在の刑法では、暴行、脅迫が成立要件となる、あるいは抗拒不能が成立要件となる。ですから、同意がない場合であっても、暴行や脅迫が認められない限り犯罪が成立しないものとなっています。これは国際人権基準と相入れないと、同意の有無を中核とする改正が必要だというのが学術会議の提言です。
法務大臣、どう受け止めておられるでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 法務省におきましては、この提言の送付を今朝受けたところでございますが、令和二年十月二十日の開催されました第七回の性犯罪に関する刑事法検討会におきまして配付をさせていただいているところでございます。
提言の内容につきまして、この刑法の改正に関わる事項につきましては、現在、性犯罪に関する刑事法検討会におきまして活発に議論をしていただいているところでございます。私といたしましては、検討会に検討を今お願いをしているということで、最終的な取りまとめの段階に次のステージから入るという、そうした理解でございますので、慎重に、しかししっかりと御議論いただけるものと思っております。
○山添拓君 検討会で確かに配られたんですが、配られただけなんですよね。学術会議から説明を受けるということもされていないようです。学術会議の活動が見えないと批判された自民党の幹部の方おられましたが、見ようとしない側の問題だということも、この際、指摘をしておきたいと思うんです。
自由意思に基づく同意と言えるには、性行為の意味を理解し、自分が性行為をしたいのかしたくないのか判断できる必要があります。では、何歳以上ならその判断ができるのかと。刑法は十三歳を基準にしています。十三歳未満は同意の有無にかかわらず犯罪が成立します。これは、一九〇七年、明治四十年ですが、十二歳から十三歳に引き上げられて現在に至っています。その際、その理由は、女子発育の程度を探求した結果というふうにされました。しかし、身体的に発育しているからといって、性行為の意味、あるいは心身への影響、リスク、社会経済的な負担の可能性などについて十分な理解があると言えるのかどうか、自由意思に基づく同意を期待できる年齢とは言い難いのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○政府参考人(川原隆司君) 委員御指摘のとおり、現行刑法は、十三歳未満の者につきましては暴行、脅迫を用いなくても強制わいせつ罪や強制性交等罪が成立するものとしております。これは、一般に、十三歳未満の者は性的行為に対して同意、不同意を決する能力がないからであると考えられているところでございます。
○山添拓君 いや、そうなんですけれども、自由意思に基づく同意を期待できる年齢とは言えないのではないかというのが私の指摘です。
二〇一八年には、東京都足立区の区立中学校で行われた性教育の授業で、性交、避妊、人工中絶、そういう言葉を使ったことが不適切だと、これは自民党の都議が議会で指摘をされたんですが、そういう指摘があったことを受けて都教委が区教委を指導するという事態も起きました。ですから、性教育が十分とは言えない下で性的同意だけは適切に行える、こういうふうに考えるのは困難じゃないかと思うんですね。
国連は二〇〇八年、日本に対して同意年齢の引上げを勧告しています。性暴力の被害者団体などからも声が上げられています。ところが、先ほど大臣の言及された検討会、同意年齢引上げの根拠は何なのか、十四歳や十五歳でも性交やキスを経験しているのに違法としてよいのか、同年齢同士の性行為を犯罪としてよいのか、そうして意見が出されて、同意年齢の引上げに疑問を呈する意見が相次ぐ状況になっております。検討会の行方にも不安も広がっています。
そこで厚労省に伺いますが、児童福祉法は児童に淫行をさせる行為を禁止し、罰則の対象としています。児童とは十八歳未満をいいます。なぜ十八歳未満との性行為を禁止しているんでしょうか。
○政府参考人(大坪寛子君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、この児童福祉法、これは児童の福祉の保障を目的とした法律でして、ここでいうところの児童が十八歳未満という定めで構成をされております。
ここで、この同法三十四条で、同条の第一項第六号に規定する児童に淫行をさせる行為、これを含みます児童の福祉を著しく阻害する行為を列挙いたしまして、これを法律上禁止をしているところでございまして、これは、同法六十条におきましてもかなり重い罰金、懲役などを併科するということで規定をしているところでございます。
○山添拓君 それは同意の有無にかかわらず禁止という趣旨でしょうか。
○政府参考人(大坪寛子君) はい。児童福祉法におきましては、同意の有無などは特に規定をされておりません。
○山添拓君 例えば、東京都の青少年健全育成条例は、何人も青少年と淫らな性交又は性交類似行為を行ってはならないと定めていますが、こうした規定、全国にありますが、同様の趣旨だと思います。淫行だとか淫らなという文言の曖昧さ、これは問題だと思いますが、少なくとも、若年者について同意の有無にかかわらず身体的な保護が必要だ、まあ福祉と言及ありましたが、そういう考えは否定できないところだと思います。
一方で、刑法上は、十三歳以上になりますと、暴行、脅迫、あるいは強い抵抗、こうしたものが証明できないと犯罪が成立しません。もちろん立証責任は検察官が負うわけですが、実際には被害者の証言の占める割合、その比重が重くなります。被害者に事実上立証が求められると言ってもよい状況があります。十三歳にこれを求めるのが正義にかなうのかということが問われていると思うんですね。
大臣に伺いますが、やはり性交同意年齢は引き上げるべきだと思います。少なくとも義務教育終了後の十六歳未満に引き上げるべきだと考えますけれども、大臣、認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) この委員の御指摘いただきました暴行、脅迫を用いなくとも強制性交等罪や、また強制わいせつ罪が成立するものとされる被害者の年齢ということでありますが、現行法上十三歳とされているこの年齢を引き上げるべきだという御指摘があることにつきましては承知をしております。
また、法務省におきまして、今実際に開催しております性犯罪に関する刑事法検討会、この場におきましても、その年齢の引上げについての是非につきまして検討すべき重要な論点として掲げられているところでございまして、まさに今議論が行われているところでございます。私自身は検討をお願いをしているという立場でございますので、この段階でまた意見を申し上げるということ自体が差し控えるべき事柄ではないかというふうに考えております。
先ほど申し上げたとおり、この検討会におきまして更に論点整理が行われるということを、座長が次の段階からということで御発表なさって、決議をされたということでございますので、充実した御審議がなされるように期待をしているところでございます。
○委員長(山本香苗君) お時間過ぎております。おまとめください。
○山添拓君 検討会の取りまとめは、是非同意年齢の引上げの方向でまとめていただきたいと思います。そして、その続く法制審でも、被害者や支援者の声、あるいは心理学者など専門家の知見が反映されるように求めて、質疑を終わりたいと思います。
ありがとうございました。