2021年・第204通常国会
- 2021年5月11日
- 法務委員会
法務委員会で、少年法改正、18歳19歳の刑罰化について質問しました
- 要約
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- 審議の中で 山添拓 議員は、少年事件への正確な理解や、非行少年の実態を明らかにし共有することが大切。少年自身が被害当事者であることも多く、少年法の下で保護されるべき存在、と。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
法案について伺います。
そもそも立法事実が定かでない法案です。今、川合委員からもありましたけれども、少年事件は減少傾向にあります。少年人口そのものが減っていますが、人口比でも大幅に減少しています。少年法の施行後、最も少年事件が多かったのは一九八〇年代ですが、その頃と比べて十分の一に減っています。その理由は一概には言えないという答弁が先ほどありました。背景には様々な事情があるかと思いますけれども、経済的にも、あるいは少年を取り巻く環境としても変化があるかと思います。
こうして大幅な減少は否定し難い事実ですけれども、内閣府の二〇一五年の世論調査では、少年非行は増加していると答えた人が七八・六%でした。増えたのは、掲示板に犯行予告や誹謗中傷の書き込みをするなどインターネットを利用したもの、自分の感情をコントロールできなくて行うもの、凶悪化したものや集団によるものだと思うという答えが上位四つを占めておりました。
菅総理は四月二十三日の本会議で、世論調査の結果については、様々な評価があり得るため、一概にお答えすることは困難と述べましたが、この調査は一九五〇年から行われているものです。政府が何ら評価できないというものでもないだろうと思うんですね。
そこで、大臣に改めて伺います。
少年事件の実態と世論調査の結果との乖離はなぜ生じているとお考えですか。
○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員から御指摘がございました少年による刑法犯の検挙人員数及び原則逆送の対象となる罪の事件の終局人員数は全体として減少傾向にあると認識をしております。
他方で、平成二十七年度実施の内閣府世論調査結果におきましては、実感としておおむね五年前と比べて少年による重大な事件が増えていると思うかという質問に対しまして、増えていると回答した者の割合、七八・六%であったと承知をしております。
検挙人員数等の動向とこの世論調査の結果の関係につきましては様々な評価があり得るところでございますが、いずれにいたしましても、少年犯罪の現状等につきまして国民の御理解を得ること、極めて重要であるというふうに考えております。現在、少年犯罪の動向につきましては、例えば犯罪白書等によりまして国民に広く公表するなどをしているところでございます。引き続き、正確な情報提供に努めてまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 今、大臣から国民の理解というお話がありました。そのとおりだと思うのですが、少年犯罪が起きると殊更にクローズアップされ、社会的に印象付けられるということも背景にあるかと思います。正確な事実認識が共有されていないということでは、この法案に対する国民の理解という点でも大変問題だと思うんです。ですから、まず、誤解を解く、実態をきちんと伝えるということは欠かせないと思うんです。その意味で、非行少年の実態はどういうものなのかということを明らかにし、共有することが必要だと思います。
大山参考人からは、少年院収容者の六四・五%が中卒、高校中退者、被虐待経験のある者は男子で三四・六%、女子で五四・九%、多くの少年が家庭の状況によって勉強に動機付けられていないとお話しでした。
川村参考人は、犯罪白書によるこの数字は本人の申告によるものであって、客観的には虐待を受けていても自ら認識していないケースも多いとお話しでした。発達障害や知的障害があるにもかかわらず、専門的な治療や療育を受けられなかった少年もいると、そういう指摘もありました。
少年自身が言わば被害者でもあると、ですから、こうした少年は少年法の下で保護されるべき存在だと考えますが、大臣、その必要性をどう認識されていますか。
○国務大臣(上川陽子君) 先ほど御紹介いただきました調査でございますが、これは、例えば令和元年の少年院への入院者におきましての被虐待経験、これは身体的、性的、心理的なもの、また、及びネグレクトも含めましてこうした経験があると申告したものでございますが、男子で約三割、そして女子では約五割というふうになっております。また、知的障害又は発達障害を有する者は約二割となっておりまして、処遇上配慮を要する者が一定数いるものと承知をしているところでございます。
こうした少年は、例えば他者への不信感を有するなど、資質上及び環境上の様々な問題や困難を抱えておりまして、少年院におきましては、法務教官との深い信頼関係を基盤といたしまして、個々の在院者が抱える課題に応じた指導を計画的に実施するなどして、この問題性に着目したきめ細やかな働きかけを行っているところでございます。こうした処遇の、丁寧な処遇の在り方につきましては極めて重要であるというふうに考えております。
○山添拓君 そして、今の点は十八歳、十九歳にも変わらず言えることだということです。
八田次郎元小田原少年院長は、虐待された体験というのは人との信頼関係を築く上で支障を生じ、関係ができても長続きしない、無力感が強く、自己肯定感や自尊感情を持ちにくいと述べています。これはもう育ちの場を奪われてきたということであって、成長発達権を保障し、保護する必要性が高いということを示していると思います。
今の点に関わって矯正局に伺いたいと思いますが、犯罪白書や司法統計では、少年非行の数というのは十五歳ないし十六歳が一番多いと、十七歳を過ぎると著しく減少すると、そういう傾向があると思います。その理由は何だとお考えでしょうか。
○政府参考人(大橋哲君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、途中でピークが終わりましてだんだん減少するという状況がございますけれども、個々の少年によってその事由は異なるということもございますけれども、その少年の中には、徐々に成熟度が増していくことによって非行に陥らない、あるいは犯罪に陥らないという者もあるかと思います。一概には申し上げられませんが、そんな事情もあるものと承知しております。
○山添拓君 つまり、十八歳、十九歳で非行から脱していないのは多くの問題を抱えているということを示していることになります。すなわち、要保護性の問題が多く残されているということでもあります。
刑事局に伺いますが、法制審ではこうした点についての分析や評価、何か行われたのでしょうか。
○委員長(山本香苗君) 川原刑事局長。よろしいですか。
○政府参考人(川原隆司君) 失礼しました、お答え申し上げます。
法制審における議論の状況でございますけれども、法制審における議論におきましても、十八、十九の者も成長途上にあって、まだ可塑性があるのだと、そういったことを前提にした議論が行われているところでございます。
○山添拓君 今の話は成長途上にあって可塑性があるという話であって、十八歳、十九歳が置かれた現状、なぜ十八、十九、非行から脱していないのかと。そこに要保護性の問題が極めて強い、そういう年代だということについては、その様々な実態などを踏まえて議論がされたという形跡はないと思うんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(川原隆司君) 先ほども矯正局長から御答弁がありましたけど、なぜ十五歳ぐらいが多くて、十八、十九、年を経るに従って減っていくかということは様々な要因がありますので、それについて一概にこうだという前提に立った議論というのはなかなか困難でございまして、ただ、申し上げましたように、成長途上にあって可塑性があるんだと、そういうことを前提にして議論を行ったということでございます。
○山添拓君 先ほど紹介した八田氏は、十八歳、十九歳が精神的、肉体的に、また、社会的、経済的にどういう存在であるかと、そういった議論を抜きにして、高度情報化社会で子供の考えも変わってきたことについて、そうした議論もなく、法改正が誠実ではないという批判もされております。
この下で、なぜ、では今度の法改正かといえば、先ほど来お話ありますように、民法の成年年齢の引下げ、遡って公選法の選挙年齢の引下げ、更に遡れば国民投票法の制定というところに行き着くと思います。社会情勢が変化したから改正だというのですが、そこで言う社会情勢というのは法律が変わったということだけなんですよね。
少年法が有効に機能していることを認めつつ、少年事件の実態や十八歳、十九歳の実像についての分析や評価も十分に行われたとは言えず、法律の年齢引下げのみを理由に改正に及ぶのは、これは結論ありきだと、少年の健全育成という法の目的を否定するに等しいものだと言わなければなりません。
だからこそ、法制審は、少年法の適用年齢を引き下げるべきか否か、その諮問の中心的な課題について明確な答えを用意することができませんでした。橋爪参考人も述べていたように、成年年齢の引下げと少年法の適用年齢引下げは論理必然的な関係ではないからであります。そこで、法制審の答申は、十八歳、十九歳の位置付けや呼称、呼び方については国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められる、そう位置付けて、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当としていました。
法務省は、国民意識や社会通念等としていかなる事実を考慮したんですか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
本法律案の基となりました法制審議会の答申におきましては、十八歳及び十九歳の者の位置付けやその呼称については、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当であるというふうに記載されております。ここに言う立法プロセスとは、答申後の政府部内での検討や国会での御審議を経て法案の成立に至るまでの一連のプロセスが念頭に置かれたものと理解をしております。
法務省といたしましては、十八歳、十九歳の者の位置付けにつきましては、原則逆送対象事件の範囲を拡大することや、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で保護処分を行うことなど、十八歳未満の者と異なる取扱いをすることとしつつ、全事件を家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することから、少年法の適用対象とした上で、ごめんなさい、ことから、少年法の適用対象とすることとしたものでございます。
その上で、こういった検討を経て本法律案を国会に提出したところでございまして、現在、まさに立法プロセスとして国会で御審議をいただいているというふうに認識をしております。
○山添拓君 いや、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められると、そこで、法務省での検討に立法プロセスの一部として委ねられていたはずですが、国民意識や社会通念等についての御説明は今ありませんでした。
資料をお配りしています。七月三十日付け、昨年ですね、少年法のあり方についての与党PT合意です。十八歳、十九歳の者の位置付けとして、少年法の適用対象とした上で、その取扱いについては特別の規定を設けるなどといったことを始めとして、今回の法案とほぼ同じものであります。
つまり、法務省が考慮した国民意識や社会通念等というのは、この与党PT合意のことですか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
法務省では、法制審議会の答申に基づいて本法律案を検討する中で、立法プロセスの一環として、御指摘の与党・少年法検討PTの合意も参照としたところではございます。
○山添拓君 参照としたと、しかし、結論はそのとおりということになっているわけですね。
私、この与党PT合意の内容を全て、全くけしからぬということで否定するつもりはないんですけれども、しかし、元はといえば、少年法制に関わる専門家が三年半掛けて議論して、なお結論に至らなかった問題です。これを法務省内での僅か数か月の検討で結論を出しました。しかも、その際考慮されたのは、少年事件の実態や現場の声ではなく与党PT合意だと、今のお話ですと参照したのはこれだということですから。
結局これは、来年四月に迫った民法成年年齢の引下げを見据えて、期限ありき、結論ありきで進められたものだと指摘されてもやむを得ないと思うんですね。そのことが、十八歳、十九歳を形式上は少年法上の適用対象としながら実質的には刑罰化をすると、その矛盾した事態をもたらしたと思うんです。
橋爪参考人は、今回の法改正は少年犯罪に対する厳罰化とは考えていないと述べていました。大臣に伺いますが、大臣も同じ認識でしょうか。
原則逆送事件を始めとして、十八歳、十九歳の事件をこの法案によって刑罰化することになります。それに伴って、結果として保護処分による更生の機会が奪われることになります。そのことをどう認識しておられますか。
○国務大臣(上川陽子君) 本法律案でございますが、先ほど来委員も御指摘の中にございましたとおり、十八歳及び十九歳の少年が選挙権等が認められ、また民法上も成年として位置付けられるに至った一方で、成長途上にあり、可塑性を有する存在であることを踏まえ、これらの者につきましては、いわゆる原則逆送対象事件の範囲を拡大しているところでございますが、全事件家庭裁判所へ送致をし、原則として保護処分を行うという枠組み、これについては維持をするということでございます。家庭裁判所におきましての保護処分につきましては犯した罪に対応する責任を超えない範囲内で行うものとすると、こうした規定も設けているところでございます。
本法律案につきましては、十八歳、十九歳の者を取り巻く社会情勢の変化を踏まえまして、少年法の適用につきましては、その立場に応じた取扱いを定めようとするものでございまして、これらの者に対するより重い処分そして処罰の実現を追求しようとするものではございません。
○山添拓君 大臣が最後に述べられたように、重い処分を追求しようとするものではない、厳罰化を意図するものではないといいながら、刑罰でないものを刑罰化していくわけです。それは、すなわち厳罰化になります。健全育成の理念とは相入れないものだという点を指摘せざるを得ないと思います。
少年法は、制定直後から一貫して適用年齢の引下げが狙われてきました。成立から十年後、一九五〇年代の後半には、早くもそのことが国会でも答弁されています。今回の法制審でも、元々は十八歳、十九歳、刑事処分を原則としようとしたものでありました。それを、先ほど述べたような与党PT合意を含め紆余曲折あって今回の法案になっていますが、そういう意味で、立法事実は成年年齢引下げなどと説明にならない説明に終始することになってしまっています。
川村参考人は、家裁から検察官に事件を送り返す原則逆送対象事件を拡大し、犯情重視、結果重視となると、家裁調査官の調査が弱体化する、調査、審判が変質すると批判をされました。大臣はこの法案について、きめ細かく調査することには変わりがない、原則逆送事件とそれ以外とで変わらないと今日も答弁されておりましたが、本当にそうなのかということは伊藤委員からも指摘がありました。
二〇〇〇年に十六歳以上の少年の重大事件、故意に人を死亡させる事件を原則逆送とする規定が作られたときにも、国会では同様の答弁があったんですね、変わらないと、健全育成の理念に変わりはないと。そう述べていましたが、その後調査は弱体化し、変質しているといいます。
資料の二枚目を御覧ください。
最高裁に伺います。二〇〇〇年の改正で導入された原則逆送規定の下で、いわゆる逆送率はどのように変化したのか、またその理由についても御説明をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
委員の方で御提出いただいた資料を御覧いただければと思うのですが、少年法二十条二項が施行される前、これは第一表がそこに当たりますけれども、この施行される前につきましては、その施行後に原則逆送の対象となる事件のみを正確に把握する統計数値を持ち合わせておりませんけれども、二つ目の、この第一表の二つ目の米印のところにどういう表かというのを記載させていただいております。行為時十六歳以上の事件のうちで、例えば、殺人、強盗致死、傷害致死事件、ただしこの中の殺人につきましては、ここにも記載させていただいておりますけれども、原則逆送とはならない未遂を含んでいる数字になっております。
これらにつきまして、平成八年から平成十二年の五年間の刑事処分相当とする検察官送致決定の割合を見ますと、平成八年が総数百五十二件のうち検察官送致二十七件で割合的には一七・八%、平成九年が百十七件のうち検察官送致十八件で一五・四%、平成十年が総数二百八件のうち検察官送致四十二件で二〇・二%、平成十一年が総数百四十二件のうち検察官送致二十件で一四・一%、平成十二年が総数百四十六件のうち検察官送致二十一件で一四・四%というふうになっておりまして、五年間を通じて申しますと、総数七百六十五件のうち検察官送致が百二十八件、一六・七%というふうになっております。
これに対しまして、その下のところにございます表が少年法二十条二項を施行された後ということになりまして、直近の平成二十七年から令和五年、これ第三表の中の最後の方になりますけれども、ここで御紹介をさせていただきますと、直近の平成二十七年から令和元年の五年間の原則逆送対象事件の対象事件、申し訳ございません、原則逆送事件の対象事件のうち刑事処分相当の検察官送致の割合は、平成二十七年が総数三十二件のうち検察官送致二十件で六二・五%、平成二十八年が総数二十四件のうち検察官送致が十五件で六二・五%、平成二十九年が総数十七件のうち検察官送致九件で五二・九%、平成三十年が総数十四件のうち検察官送致十一件で七八・六%、令和元年が総数十件のうち検察官送致が四件で四〇%となっておりまして、二十七年から五年間を通じて申しますと、総数九十七件のうち検察官送致五十九件で六〇・八%というふうになっております。
分析ということになりますと、最初に申し上げましたとおりで、母数が異なっております上に、先ほど申し上げましたとおり、平成八年から十二年につきましては殺人の未遂事件なども含まれておりまして、結果において差があるということも考えますと、なかなか一言で申し上げるのは難しいところでございます。
○山添拓君 一言で言うのは難しいというお話があったんですけれども、当初は原則逆送規定が設けられた下でも、二十条二項ただし書に基づいて刑事手続に行くのか保護処分に行くのか、どちらが適しているかを比較するような調査が行われていました。
少年による殺人や殺人未遂というのは、その半数以上が親殺しや嬰児殺し、家族内の事件で、背景には長年にわたる親の虐待やあるいは性暴力などが存在することも少なくありません。ですから、いかにも凶悪犯というような、全く落ち度のない第三者に対する事件は少ないわけです。調査すればするほど保護の必要性が浮き彫りになるケースが多いということもあると思います。
しかし、こうした比較論は、二〇〇六年頃にかけて否定されていくことになります。司法研修所の「改正少年法の運用に関する研究」、ここにもお持ちしていますが、これによれば、原則逆送事件は、故意に人を死亡させるという行為の反社会性、反倫理性に着目している、したがって、保護処分は社会的に許容されない保護不適、保護に適さない場合を推定した規定だと。したがって、家裁が保護処分を選択するのは、保護処分の方がよいというだけではなく、保護処分を必要とする特段の事情が必要だと、そういう解釈を導いています。
先ほど最高裁は、最高裁として特定の考え方を現場に示していることはないとお話しでしたけれども、こうして教本になっているわけです。研修を通じて家裁の調査官に浸透させてきたのではなかったですか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) 委員御指摘のような研究報告等があることは承知をしておりますけれども、さきにも御答弁させていただきましたとおり、家裁調査官としては、少年の問題性についても十分に調査を尽くした上で、それらの結果も十分に踏まえて処分を決定するということでありまして、その点については変わりはないというふうに承知をしているところでございます。
○山添拓君 いや、変わりはないと言いますけれども、実際に運用を変えてきたわけです。二十条二項ただし書の事件とそれ以外の事件とで調査の在り方を変えてきた。原則逆送事件については、保護処分の許容性、保護処分をしてもよいかという判断を、調査をするようにここでは言っているわけですね。しかし、少年法の社会調査というのは、本来、少年に対してどのような処遇が最も有効、適切であるかを明らかにするための、つまり要保護性に関する判断のために行われるものであって、保護処分が許容されるかどうかと、そういう調査ではないはずです。
その意味では、要保護性を見極める調査と、保護処分の許容性、保護処分にしてもよいかどうかという例外事情を探すような調査とは、これは相入れないものではないかと思うんですけれども、調査の在り方については、今おっしゃったように、引き続き要保護性について調査をしていくのだと、例外事情を探すのではなく、要保護性についての調査が中心的な課題であって、そのために丁寧に行うのだと、こういう認識でおられますか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
先ほど来の繰り返しになり恐縮でございますが、御指摘のような論考があることも承知をしておりますが、他方で、裁判官を含む実務家の、実務家等の論考等におきましても、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を総合考慮するという考え方や、総合考慮をする中でも犯情の悪質性を重視する考え方など、様々な考え方があるというふうに承知をしているところでございまして、いずれにしましても、家庭裁判所調査官において、非行の動機、態様、結果だけでなく、性格、年齢、行状及び環境等も含めて少年の問題性について十分に調査を尽くした上で、その結果を踏まえて個別の事案に応じた最も適切な処分がされるべきものというふうに承知をしているところでございます。
○山添拓君 続きについては次回の質疑に譲りたいと思います。
ありがとうございました。