2022年・第208通常国会
- 2022年3月8日
- 法務委員会
法務委員会で、名古屋入管死亡事件について質問しました。
- 要約
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- 法務委員会で、名古屋入管死亡事件について質問。 2月15日の尿検査結果(ケトン体3+)は、医療関係者なら一目で異常を感じる数値とされますが、名古屋入管では適切な医療を受けられませんでした。 看守勤務日誌、被収容者診療簿を明らかにし、入管がどんな認識で対応したのか解明すべきと求めました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
ロシアによるウクライナ侵略が続き、国連人権高等弁務官事務所は、子供二十七人を含む四百六人の民間人の死亡を確認したとされます。これは断固糾弾しなければなりません。
国外への避難者が既に百七十万人を超えているとされる中、岸田総理はこの間、日本でも人道的な対応として避難民を受け入れると表明してきました。
基本的なことを確認したいと思います。
政府は、一九七六年十月十三日、難民の定義について統一見解を示しています。いわゆる難民や亡命者とは、英語でレフュジーと呼ばれるものに当たるとし、通常は、広く戦争、内乱、自然災害等により、あるいは政治上、宗教上等の理由による迫害の危険を逃れるために、本国や本来の居住地を離れ、これらの国による保護を受けることができないか、又は、受けることを望まない人々を指すとしています。
この部分は今も維持しておりますか。
○政府参考人(有馬裕君) お答え申し上げます。
御指摘の答弁は我が国が難民条約を締結する以前のものであり、当時の外務省の条約局長が、難民や亡命者について一義的な定義を行うことは困難であるが、あえて一応の輪郭とも言うべきもので述べればとして答弁したものと承知しております。その後、難民条約の締結の際に整備した入管法において、難民とは難民条約の適用を受ける難民をいうものとされております。
難民条約は、第一条において、難民を人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者等として定義しており、我が国では入管において、係る定義に基づき申請者ごとにその申請内容を審査した上で難民と認定すべき者を認定していると承知しております。
○山添拓君 難民条約の定義については承知しているんですけれども、このとき示された政府統一見解を今改めているわけではないですね。
○政府参考人(有馬裕君) 今委員が御指摘いただきました答弁につきましては、繰り返しでございますけれども、我が国が難民条約を締結する以前のものでございまして、難民の定義というものは、その後、我が国が締結した難民条約、難民条約の際に整備した入管法において、難民条約の適用を受ける者を難民というものとされるというふうに整備されております。
○山添拓君 これ、昨日伺ったときには別に変えていませんよという答弁だった、お話だったんですけれども、その後変えたんですか。
○政府参考人(有馬裕君) 当時の答弁を、当時の答弁は、難民条約を締結する以前に、あえて一応の輪郭、その一般的、一義的な定義を行うことが困難であるがとしつつ、難民や亡命者について一応の輪郭と言うべきものをということで当時の条約局長が述べたものでございます。その、当時述べた認識が当時の外務省の認識であったかということであれば、それは外務省の認識ではございました。
ただ、難民の定義をということについての統一見解というふうに御質問でございますると、それは、その後我が国は難民条約を締結いたしまして、その際に整備した入管法において、難民とは難民条約の適用を受ける難民をいうものとしております。
○山添拓君 重ねますけれども、あっ、いいですか。
○委員長(矢倉克夫君) 山添拓君。
○山添拓君 それは分かっているんです。難民条約上の、条約上の難民というのは分かっているんですけれども、しかしこのとき、今答弁されたように、あえて一応の輪郭とも言うべきものを述べれば、この当時もう既に難民条約については存在はするわけですよね、日本は締結前ですけれども、あっ、参加の前ですけれども。しかし、我が国で一般的に難民や亡命者として論じられる者は英語でレフュジーと称される者に当たると思われると、そういう下で述べているんですね。で、これを変えているのかと伺っているんです。
○委員長(矢倉克夫君) 有馬審議官、大丈夫ですか。有馬審議官。
○政府参考人(有馬裕君) 申し訳ございません。
この当時の答弁を変えているのかという御質問でございますけれども、当時、一般論として、一般論というか、申し訳ございません、一義的な定義を行うことは困難であるけれども、あえて一応の輪郭と言うべきものとして述べた答弁の内容を今変更しているということではございません。
○山添拓君 変更しているわけではないという答弁だと受け止めました。ちょっと改めて確認もしたいと思いますが。
今その避難民と難民を殊更区別する発信をされている与党の政治家などもおられますけれども、今度のウクライナからの避難者というのは、これは明らかに難民だと思います。もちろん条約上の難民にも該当し得ると思いますが、基本的には難民だという対応で人道上の対応をお願いしたいということを述べておきたいと思います。
ちょっとこの点については、今日これだけをやるつもりでおったわけではありませんので、また後に譲りたいと思います。
スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなって一年、亡くなられた三月六日は全国各地で追悼のデモや集会が行われました。私も東京のデモに参加をしました。外国籍の方も含めて多くの方が収容やめろと声を上げました。
入管庁の報告書は、外国人や支援者など、現場を知る人には到底納得できるものとなっていません。真相解明は道半ばであり、だからこそ怒りの声が湧き上がっています。大臣はこのことをどう認識されるでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) まず、衆議院本会議に呼ばれておりまして、約束の時間に遅れましたことをおわびを申し上げたいと思います。御迷惑掛けました。
さて、委員の今のお尋ねでございます。いわゆる名古屋事案、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられて一年がたちました。これはもう本当にあってはならない悲しい出来事でありまして、改めて心からお悔やみを申し上げる次第です。
この出来事以降、二度とこういうことがあってはならないという決意の下に、私ども再発防止に取り組んでおります。まずは、この取りまとめられましたいわゆる調査報告書、この中に様々な改善すべき項目が挙げられております。現在これを鋭意、速やかに確実に実行するべく取り組んでいるところでございます。
○山添拓君 私、デモで東京入管の周りを一周したんですね。それで、声を上げていますと、被収容者の方にも声が届いたようで、中から手を振る姿が見えたり、あるいは、おおというふうに応じる、そういう悲痛な声も聞こえました。
ウィシュマさんの事件は、それに象徴される入管の問題というのは今も続いているんだということを認識されるべきだと指摘したいと思います。
最終報告書について伺います。資料の二枚目を御覧ください。
ウィシュマさんが亡くなる三週間前、二月十五日の尿検査の結果は、入管庁の調査チームが依頼した総合診療科の医師が飢餓状態にあることを示唆していると指摘したほど深刻な状況を示すものでありました。ところが、この尿検査の結果、このページは昨年四月の中間報告にはなく、後から見付かったとされています。私が昨年十一月に名古屋入管を訪れた際の説明では、PDF化する際にこれだけ漏れていたという説明だったんですね。このページだけ漏れていたと。これは本当ですか。
○政府参考人(西山卓爾君) お尋ねの点につきましては、尿検査の結果が送られてこなかったことについて確認をした際に、故意に外したのか、漏れたのかについては私どもなりに調査をいたしましたが、結論としてはコピーの作成、それから送付を漏らしたということでございます。
○山添拓君 この一枚だけたまたまですか。
○政府参考人(西山卓爾君) お尋ねのその尿検査報告書は一つづりの紙、冊子の中でファイル、ファイリングされていたものですが、そのファイルの中で漏らしていたのはその一通だけでございます。
○山添拓君 これはにわかに信じ難い説明です。意図的に省いたのではないかという疑念すら抱く説明と言わなければなりません。
報告書は、この尿検査の結果について、二月十八日の診療の際、看護師が医師に伝えたとし、一方、医師は、この日、尿検査の結果を把握したかどうか記憶は定かではないと述べたとしています。私が知人の医師に伺いますと、医療関係者なら一目見て異常を感じるような数値だそうですが、名古屋入管の医療体制ではそう受け取られなかったということです。
二月十五日のこの尿検査の結果を軽視した、この対応は、大臣、適切ではなかったですね。
○国務大臣(古川禎久君) この事案の後、様々、何が起きたのかということを明らかにする必要がございます。そのために、様々な客観的な資料、それから外部の有識者も交えた上で広く、幅広く論点を抽出して、その上でこの調査報告書、いわゆる調査報告書というものがまとめられております。
この調査報告書がまとめられる過程において私は様々な議論が行われたんだろうと思いますけれども、その上でそういう一定の報告書という結論に至っておるわけでありまして、私どもはその報告書を正面から重く受け止めさせていただいて、そしてこの内容に沿って二度とこういうことが起きないように取り組んでいるというところでございます。
○山添拓君 報告書には、この検査の結果を受けて内科的な追加の検査等がなされることが望ましかったものの、その原因は医療体制にあったのだとして医療体制の問題に展開しているわけですけれども、望ましい検査がされなかったわけですから、それ自体対応としては不適切だったのではありませんか。
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘のように、報告書にもございますように、尿検査結果を踏まえて内科的な追加の検査等がなされることが望ましかったということでございます。
○山添拓君 ですから、望ましいことができなかったというのは、それ自体不適切ではありませんか。
○政府参考人(西山卓爾君) 委員おっしゃる趣旨であれば、不適切だったということでございます。
○山添拓君 いや、私はウィシュマさんが亡くなる前二週間の映像記録を理事懇談会で拝見をいたしました。まともに見ているのがつらくなるような映像でした。最初の二月二十二日から、自分で何もできないと訴えています。翌二十三日には嘔吐を繰り返し、セーライン、これは点滴のことを指しています、救急車呼んでと懇願する。しかし、職員は、死ぬはないと、死ぬなんてことはないと、トイレ行こうかと、こういうふうに聞き流して対応しているんですね。映像が開示されたその期間の間、ほとんど寝たきりか、あるいは車椅子です。誰が見ても尋常ではない状態だと言えます。
大臣も映像を御覧になったとおっしゃいますので、一つ伺います。
この状況を踏まえてなお三月四日の精神科の記録には、日本にいたくてヒステリーや詐病の可能性と記録されているんですね。報告書は、職員は詐病という言葉は使っていないとしていますが、仮放免されるために体調不良のアピールと考えていたと。だから、本当ではないけれどもアピールしたんだと、こういうことは認めています。
大臣、御覧になって、このウィシュマさんの様子が何らかのアピールだと、そういうふうにはとても言えないと思うんですけれども、どういう感想をお持ちになったでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) 私も、このビデオは調査報告書で言及されている箇所を中心としまして私も拝見をいたしました。閲覧をいたしました。大変胸の潰れるような思いで拝見をしたわけです。
やはり、感じたことと申しますのは、この入管行政、この収容施設における在り方というものがどこかやはり欠けているものがあると、足らざるものがあるというのはこれは率直に思うところでございます。
委員の今の御指摘を始め様々な方から様々な御指摘もいただいておるわけですけれども、それはそれで私は真摯に受け止めなければならないというふうに思っております。
○山添拓君 真摯に受け止めていただいて、それは必ず改善に直ちに生かさなければならないと思うのですが、この体調不良が仮放免を受けたいためのアピールなどでないということは二月十五日の尿検査の結果を見ても明らかであります。
今大臣は、入管行政に欠けているもの、足らざるものもあるんだということをおっしゃいました。私は、この映像記録を見る限り、ウィシュマさんが深刻な体調不良であったことは明らかだと思います。これを体調不良のアピールだと認識していたことに象徴されるように、問題は、入管庁が、名古屋局がウィシュマさんの状況をどう認識して、それを踏まえてどう対応するという方針を持っていたかと、ここにあると思うんです。
その入管職員がどういう認識にあったかというのは、看守勤務日誌や被収容者診療簿に記されているはずです。ところが、報告書ではこの基礎的資料が示されていません。大臣、明らかにするべきじゃないでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) 可能な限り客観的な資料に基づいて、外部の有識者の御意見も交えてまとめられたこの調査報告書というものがございます。様々な論点からの議論がなされた上でまとまりましたこの調査報告書、私としましては、そこで示されております改善点、これを誠実に、着実に、できるだけ早く実行するということが私に与えられている責務であると考えております。
○山添拓君 全然お答えいただいていないので。
私が求めていますのは、看守勤務日誌、被収容者診療簿。これは、入管の職員の皆さんがウィシュマさんの状況を見て、それをどういうものだと認識し、今後の対応方針どう進めていくのかと、そこに記しているわけですね。報告書はビデオに基づいて作られていますから、事実経過としてはビデオとそう大きな矛盾がないように作っていますよ。過小評価とか、ちゃんと書いていないところがあるというのはありますけれども。
問題なのは、この一つ一つの事実を踏まえてどう受け止めたかということにあると思うんですね。ですから、これを開示していただくべきだと思うんですが、入管庁、いかがでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 委員御指摘の資料には、ウィシュマさんやそのほかの被収容者、関係者等のプライバシーに関わる情報や収容施設における保安上の支障等を生じさせ得る情報等、情報公開法上の不開示情報に該当する情報が含まれているため、開示はなかなか困難であるというふうに考えております。
○山添拓君 プライバシーがとおっしゃるんですが、ウィシュマさんの命を奪っているんですね。
外部の病院のカルテは開示しました。施設内のカルテや日誌については開示できないというのですか。それは余りに矛盾していると思います。
委員長、開示を求めたいと思います。
○委員長(矢倉克夫君) ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議をいたします。
○山添拓君 ウィシュマさんについても問題になりました仮放免について、次に伺いたいと思います。
仮放免をされても、就労制限や移動制限でその生活は厳しい、著しい困難を伴います。特定NPO法人北関東医療相談会がちょうど今この時間に記者会見を行って、仮放免者の生活実態調査の結果というものを公表しています。これ日本で初めての実態調査です。貴重なものだと思います。支援団体が支援している仮放免者など、二十七か国の百四十一人から回答が寄せられたものだと伺っています。
これ私も拝見して、大臣も後ほど見ていただきたいと思うんですが、生活が苦しい、とても苦しいと答えたのは八九%でした。就労が禁止されているために、年収ゼロ円という方が七〇%です。借金があると答えたのが六六%。家賃、服や靴、生理用品、子供の教育費、生活の全てにおいて困難があるという実態が語られています。
大臣、こういう仮放免者の生活実態についてどのように認識されていますか。
○国務大臣(古川禎久君) 一般論として、入管法に違反して退去強制が確定した外国人は速やかに日本から退去することが原則であります。仮放免中の生計は、本人の資産や身元保証人や家族の支援等によって賄われることをこれは想定しております。仮放免された外国人につきましては、退去強制手続中という立場に鑑みまして、これは基本的に就労を認めておりません。また、入管行政の一環として、国費による生計等の支援を行うことも困難だというふうに考えています。
しかし、もっとも、これ、生活ですとかあるいは健康上の問題を抱える方々に対する人道上の支援の必要性というものはもとより承知をしておりまして、これまでも入管庁としては、この仮放免中の外国人から連絡や御相談があれば個別に対応させていただいているところであります。
○山添拓君 個別に対応していると言うけれども、その結果がこうして、生活苦しい、生きていけない状況だという実態に現れています。
日本に家族がいるとか、あるいは母国では迫害される、にもかかわらず日本で難民認定がされない。帰らないのには理由があるわけです。しかも、今コロナの感染拡大の状況もあります。送還忌避だと決め付ける入管の姿勢そのものが問われていると指摘したいと思います。
とりわけ医療の問題は深刻です。経済的な問題で医療機関を受診できないと答えた人が八四%、経済的余裕があれば治療したい病気やけががあると答えた人は七九%に上りました。
国民健康保険に加入できませんので、窓口負担一〇〇%ですね、難しい手術を必要とするような場合は大きい病院を紹介してもらうわけですが、健康保険に入っていませんので医療ツーリズム扱いとなって、高いところでは二〇〇%、三〇〇%、これはもう支援の皆さんも支え切れない、そういう実態があります。
無料低額診療事業を行っている医療機関が仮放免者を受け入れる場合があります。しかし、その医療費は医療機関の負担となって、医療機関自体の経営に影響を及ぼします。コロナで経営難ですからなおさらです。
これは厚労省に伺いますが、無料低額診療を行っている医療機関が高額な治療費を要する無保険者を受け入れた場合に医療費を補填するような仕組みはありますか。
○政府参考人(山本麻里君) お答えいたします。
無料低額診療事業は、社会福祉法第二条第三項第九号の規定に基づき、生計困難者のために無料又は低額な料金で診療を行う社会福祉事業でございます。委員御指摘になりました無料低額診療事業を実施する医療機関に対して当該医療機関が負担した医療費を補填する仕組みはございませんけれども、法人形態によっては税制上の優遇措置を講じているところでございまして、私ども、この事業につきましてしっかりと周知をしていきたいと考えております。
○山添拓君 税制優遇は一定の役割果たしていますけれども、受入れの規模に応じて変わるものではありませんので、受け入れれば受け入れるほど赤字がかさんで経営に影響を及ぼすという状況があります。
入管施設ではまともな医療を受けられず、仮放免者は就労を禁止されて、医療費も高額になり、生活保護の適用もないという実態を、その一端をお伝えしましたが、これはやはり、一人の人間として尊重する、そういう制度とその運用への改善が必要だと、このことを述べまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。