2022年・第208通常国会
- 2022年4月19日
- 法務委員会
法務委員会で、ウクライナからの避難者に対する支援について質問しました。
- 要約
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- 法務委員会で、ウクライナからの避難者に対する支援について質問しました。 戦争や紛争から逃れてきた人を難民と認定しない日本政府の対応は、国連が「戦争や紛争から逃れるために母国を離れる者も難民に含まれ得る」としてきた国際的な議論を踏まえないものだと指摘しました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
資料をお配りしております。
入管庁は、四月十一日、ウクライナ避難民への支援内容を決定し、公表しました。ホテル滞在中とホテル退所後とに分け、ホテルは国が借り上げて提供、ホテル滞在中の医療費、日本語教育費、就労支援費は国が実費を負担、ホテル退所後の住居は受入れ自治体や民間が提供し、医療費や教育費は国が必要に応じて実費を負担するとされています。先ほど真山議員からもありましたが、生活費について、ホテル滞在中は一日千円、食事は別途国が負担、ホテル退所後は一人二千四百円、二人目以降千六百円とあります。
金額の考え方について、改めて入管庁から御説明ください。
○政府参考人(西山卓爾君) このホテル滞在中とホテル退所後では賄いの有無が違ってくるという事情もありまして、まず金額として分かれております。
その上で、一日当たりの生活費、ホテル退所後二千四百円としてございますけれども、これについては、生活保護の生活扶助水準を参考に、日本で生活する上での必要な食費、光熱水道費、被服等の購入費用などを含むものとして設定したものでございます。
○山添拓君 月七万二千円で、一日二千四百円と。ホテル内は衣類と洗濯費用ぐらいであろうということで月三万円、一日千円、こういう考え方でよろしいですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘のとおりでございます。
○山添拓君 着のみ着のまま、多くの苦痛を伴って避難してこられた方々にとって幾らかでも生活費が支援されることは重要です。医療費の負担軽減は私もこの委員会で求めたことでもあります。歓迎したいと思います。
こうした扱いは異例の対応だと思います。ウクライナからの避難者について、住居や医療、教育、就労支援、そして生活費全般についても提供する法的な根拠は何ですか。
○政府参考人(西山卓爾君) これは法的根拠といいますよりも、政府において決定をしたということでございます。
○山添拓君 法的根拠はないけれども、人道的な対応として決定したということでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) 今回のロシアによるウクライナ軍事侵攻は、法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的原理に基づく国際秩序を破壊する行為でありまして、断じてこれを容認することはできません。
また、UNHCRの発表によりますと、ウクライナから近隣国等に避難をした方々というのは四月十六日現在で約四百八十七万人に達しているということでございます。このような未曽有の人道危機に、未曽有の人道危機に直面を余儀なくされているウクライナとの更なる連帯を示すため、我が国はウクライナから第三国に避難された方々の受入れを進めるということを決定をいたしました。
すなわち、現在の我が国の対応は、まさにウクライナが瀕する危機的状況を踏まえた緊急措置として、避難される方々にまずもって安心できる避難生活の場を提供すべく、政府全体として取り組んでいるものでございます。
○山添拓君 私はそのことについて否定するつもりはありませんし、極めて大事な対応だと思っております。また、これまでにない対応をされたことについても一歩前進であり、今求められている対応だと思うんです。
同時に、こういう人道的支援を必要とする外国人はウクライナからの避難者だけではないと思うんですね。例えば、昨年二月にクーデターが発生したミャンマーからの避難者については今年三月末までに四千六百人に対して特定活動の在留資格を認めていますが、それ以上の、今ウクライナからの避難民、避難者について見たような支援策はありません。
大臣、答弁いただきましたので伺いますが、ウクライナからの避難者に限らず人道的に様々な支援を必要とする外国人はほかにも国内に見られると思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(古川禎久君) 今回のウクライナからの避難民の方に対するこの受入れ、そして支援というものは、先ほども御答弁申し上げましたように、この未曽有の人道危機に緊急措置として対応するものでございます。そのことと、御指摘のありました、その他の場合と一概に同列で並べて比較して考えるというのは、まずは、論理的にも、まずそこで比べて云々するべきことではないというふうに考えております。
まずもって、今必要なウクライナからの避難民の皆さんにできる限りのことをするという政府の緊急的な措置でございます。
○山添拓君 私は比べてくれと言っているわけではないんですね。人道的な支援を求めている方というのはほかにもいるではないかと。ミャンマーのクーデターだって未曽有の事態ではあるんですね。そういう中で何とか逃れてきた方が大勢おられるわけです。
この出身国によって、その事情によって人道的な対応が変わるのはおかしいと、これは昨日、決算委員会で与党議員からも指摘がありました。私もそのとおりだと感じました。ロシアの侵略行為が異例の暴挙であることは間違いありませんが、暴力や迫害から逃れようと日本に来る人にとって支援の必要性に違いはないはずです。出身国によって殊更対応に差を付けることは対外的な信頼に関わり、ひいては日本政府の人権に対する意識が問われることになると指摘させていただきたいと思います。
その上で、(発言する者あり)はい、大臣、これは答弁結構です。
政府はこの間、戦争から逃れて来た人は難民ではないとしてきました。しかし、それは国際的には半世紀前の発想だと批判されています。入管法にも難民条約にも、戦争で国を離れざるを得なくなった人を難民から排除するという規定はありません。
国連難民高等弁務官事務所、UNHCRが二〇一六年に発表したガイドライン十二は、武力紛争及び暴力の発生する状況を背景とした難民申請の審査のための、実体的、手続的な指針を示したものです。武力紛争及び暴力の発生する状況とは何か、次のように書いています。暴力状態が相当のレベルに達し、又は蔓延しており、それが一般市民に影響を及ぼしていることに特徴付けられるような状況を指す。そのような状況には、二つ以上の国家間における暴力が含まれ得るとしています。
入管庁に伺います。
国家間における暴力、戦争、武力紛争であっても条約上の難民には該当し得るというのが国連の見解ではありませんか。
○政府参考人(西山卓爾君) まず、委員御指摘のガイドラインでございますけれども、これはUNHCRが策定した難民認定基準ハンドブックの解釈指針を補完するものというふうに位置付けられてございます。
それで、そのUNHCRのハンドブックにはどう規定されているかと、記載されているかと申しますと、紛争の結果として出身国を去ることを余儀なくされた者は、通常は、難民条約上の難民に当たるとは考えられないというふうに記載されているものと承知しております。
したがいまして、その委員御指摘のガイドラインの十二号は、武力紛争及び暴力の発生する状況から逃れてきた者も難民条約上の要件を満たせば難民として保護されることを記載しているものと承知をいたしております。
○山添拓君 このガイドラインの中では、今入管庁が説明をされたハンドブックについて、その記載の、述べられたまさにその部分について、より限定的に解釈するべきだと。ですから、戦争からの避難者であっても対象として入る余地があるということを書いているのではありませんか。
止めてください。
○委員長(矢倉克夫君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(矢倉克夫君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(西山卓爾君) 繰り返しになりますけれども、(発言する者あり)先ほどの答弁のとおりでございまして、でございます。はい。
○山添拓君 いや、このガイドラインには、今指摘のあった、戦争、国際的又は国内的武力紛争の結果として出身国を去ることを余儀なくされた者は難民とは考えられないという箇所は、より限定して適用されるものというように理解される必要があるというのがこのガイドラインなんですね。ですから、それは入管庁の読み方間違っているんですよ。
このガイドラインは、各国政府、法律実務家、審査官、裁判官、現場で難民認定に当たる職員に法解釈の指針を示すことを目的としたものだとされています。日本政府はこれに従って、戦争からの避難者であっても対象として認めていく、そういう運用をしていくべきじゃありませんか。
○政府参考人(西山卓爾君) 我が国の入管法上、難民はあくまで条約難民というふうに規定をされていますので、難民の認定につきましては、その条約解釈に基づいて認定すべきと考えております。
ただ、繰り返しでございますけれども、難民に当たらないとしても、人道的な考慮を踏まえて、庇護すべき者は庇護するという対応を我が政府としては取っているものと承知しております。
○山添拓君 これも入管庁に伺います。
UNHCRのホームページには、難民保護・QアンドAが掲載されています。その質問十七は、迫害の主体について書いています。迫害の主体とは、政府、反乱軍や他の集団などの個人や集団であり、当該の人が逃げることを余儀なくされる原因を作っているものだと。しかしながら、迫害の主体が何かは、個人が難民該当性があるかどうかを決定するのに決定的な要因となるべきではありません。大切なことは、国籍国で保護を受けることができるかどうか、その個人が国際的な保護を受けるのに値するかどうかということと書いています。
迫害の主体に限定はないというのが国連の見解ではありませんか。
○政府参考人(西山卓爾君) その点については、委員御指摘のとおりかと思います。
○山添拓君 ですから、そういう意味では、戦争によって、ロシアの侵略行為によって、ウクライナの方々が避難を余儀なくされる、迫害のおそれがある、ウクライナ人であるという国籍や特定の人種が迫害の理由となっている、そういう捉え方をする余地もあるだろうと思うんですね。しかも、今、ウクライナは、国家としてこうした避難者を保護することができない状況にあります。
もう一度伺います。戦争からの避難者というのは典型的な難民です。難民制度がこれを救済できないというのは理解し難いです。戦争から逃れた避難者を難民として扱うことは難民条約に反するんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) そもそも我が国におきましても迫害主体が国籍国の政府等でなければ難民と認定できないとしているものではございませんで、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約上の定義に基づいて難民と認定すべき者を適切に認定してございます。
○山添拓君 ということは、つまり、ウクライナからの避難者についても難民条約上の難民に当たる可能性もあると、そういう認定を行う余地もあるということですね。
○政府参考人(西山卓爾君) あくまで個々の方々の事情に応じまして、それが条約難民に該当する要件を満たすのであれば、難民として認定することになるかと存じます。
○山添拓君 今入管庁が個々の方々の状況を見てとおっしゃったのは、これまでの難民認定実務の弊害を語ったものでもあると思うんですね。これまでも、民主化運動のリーダー格でもない限り難民として認めようとしない、あるいは着のみ着のままで避難してきた人に迫害の証拠を出せと求める。厳し過ぎる難民認定の在り方がこの問題でもまた表に出てきかねないと思います。
大臣に伺います。
先ほど来、準難民の話が出てきて、昨年廃案となった入管法改定案を秋の臨時国会にも提出する方針だということも言われています。しかし、今でもウクライナからの避難者を難民とすることは可能だと、その余地はあると思います。ですから、問われているのは、迫害を逃れて保護を必要とする人を難民としてきちんと認定していく、その難民行政の姿勢だと考えますけれども、大臣、認識はいかがですか。
○国務大臣(古川禎久君) 先ほど来、次長から、入管庁の次長から御答弁を申し上げておりますとおり、御指摘のUNHCRのガイドラインは、紛争避難民が難民条約上の難民に該当すると規定しているものではないと承知をいたしております。難民条約の適用を受ける難民は、迫害を受けるおそれがある理由が難民条約上の五つの理由である者に限られておりまして、内戦や戦争に巻き込まれて命を落とすおそれがある者は必ずしも条約上の難民に該当しない場合がございます。
このような方々で、このような方々も人道上の観点から、より確実に保護する、そのためにそれに適した制度を法律上設けることが望ましいと考えておりまして、法務省では、補完的保護対象者の認定制度の創設を検討しているということでございます。
○委員長(矢倉克夫君) 時間が参りました。
○山添拓君 これまでの議論を聞いていただいていたらもうちょっと柔軟な運用が可能だということを認識いただきたいと思うんですが、ウクライナからの避難者への人道的な対応が必要だと、これはもう重々御承知だと思うんです。そうであれば、難民認定についても人道的に対応するべきであり、そして、これを機に、それ以外の地域からの避難者についても難民認定の運用を抜本的に改めるべきだと、このことを指摘して、質問を終わります。
ありがとうございました。