山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2022年・第208通常国会

法務委員会で、AV出演契約問題について質問しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
成年年齢の引下げに伴い、十八、十九歳の未成年者取消し権が奪われ、アダルトビデオへの出演契約を取消しできないことが支援団体などから訴えられ、国会でも議論されてきました。
若い女性がAVに出演する意識がないままプロダクションと契約し、仕事を断れば違約金などと脅され、出演を強要され、事実上断れない状況に追い込まれる。あるいは、もうそれしか道がないと思うほど生活に困窮し、AVと分かっていて応じる。しかし、撮影、公表、拡散によって深刻な被害を受ける事態が後を絶ちません。AVというのはあくまで演技のはずですけれども、実際に性交をさせる本番行為、避妊なしのケースも当たり前のように存在します。
売春防止法二条は、対価を受け、不特定の相手方と性交することを禁止しています。まず、法務省に伺います。なぜ禁止しているのでしょうか。
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、売春防止法二条は、売春を、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することと定義しておりまして、同法第三条は、売春をし、又はその相手方とはなってはならないと規定しております。この第三条の規定は、一般に、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗を乱すものであることに鑑みて、売春の禁止を定めたものとされております。
○山添拓君 この売防法というのは、性売買に従事する女性の取締りあるいは保護更生を目的としており、人権の理念が欠如したものだとして、見直しが必須だと指摘をされてきています。本来は買春行為こそ問われるべきだろうとも思います。ただし、今お話のあった、お金を払って性交させることが尊厳を害する、女性の尊厳を傷つける、それはそのとおりだろうと思います。
売防法二条が禁止するのは、不特定の相手方との性交です。不特定とはどういう意味か、最高裁判例に照らして説明をお願いします。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
委員、一般に、売春防止法第二条における不特定の相手方とは、不特定の人間の中の任意の一人、すなわち、売春をする者は性交の対価に主眼を置いて、相手方の特定性を重視することなく、不特定の者の中から任意に選定した相手方を言うと解されております。
○山添拓君 最高裁の一九五七年九月二十七日の判決に基づく解釈かと思いますが、現在もその解釈でよろしいということですね。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
現在の解釈も、私が先ほど答弁したとおりでございます。
○山添拓君 性交の対価に主眼を置いて、相手方の特定性を重視しないということを意味すると、それが判決の判例です。この解釈に照らせば、例えば、売春契約を結んで、契約の相手方が書面で明記されていたとしても、対価の方に主眼があって、特定性を重視していないという場合、今回はこの人、終わったら別の人と、こう次々変わっていくような場合は、これは不特定ということになりますか。
○政府参考人(川原隆司君) 今委員は具体的な事例として挙げられましたけど、委員御指摘のような例がこの不特定の相手方に当たるかどうかということになりますと、これは、私ども法務省としてお答えをすることは差し控えたいと存じます。
ただ、もし、委員の御指摘のような事例が、先ほど申し上げました一般的な解釈、これに該当するということになれば、まさにそれは不特定の相手方ということになるところでございます。
○山添拓君 念のため伺いますけれども、契約を結べば、契約書があれば特定されるということにはならないですね、先ほどの解釈によれば。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
不特定の相手方という、がどう解釈される、先ほど申し上げたとおりでございまして、それは、具体的な事案におきまして、その事実関係に基づいて認定される事柄でございます。で、契約書があるかないかということは、その事実関係の一つとして、その認定に当たってどうなるかということでございまして、私どもの方からこれだと、特定の、具体的に申し上げることは困難でございますが、いずれにしましても、その事実関係が先ほどの解釈に当たる場合は、これは不特定の相手だとなるものでございます。
○山添拓君 事実関係によるけれども、契約書の有無によってその結論が確定されるわけではないということですね。
○政府参考人(川原隆司君) 済みません、その契約書の有無というのは、具体的な個別の事情がどうなのかということになりますと、私どもとしてお答えをすることは困難なところでございます。
○山添拓君 お答えになりたがらないんですけれども、AVへの出演も女性にとって相手が誰であるかということは重要ではないはずです。
一作目を撮影した後、二作目、三作目、別々の男優と撮影することによって囲い込んで、売上げにもつないでいくと。本番行為を含むようなAVは、対価を伴って不特定の相手方と性交し、これを撮影する、そういう意味で売防法違反となるケースもあると考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(川原隆司君) 委員のお尋ねもかなり具体的な事例を設定しているものでございますので、それが当たるか否かということに関しましては私どもとしてはお答えを差し控えたいと思います。
○山添拓君 そんなに具体的じゃないですよ。普通に考え得るAV撮影のケースだと思うんですね。特定しているか不特定かという問題なんですけれども、当たるケースもあり得ますね。
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
どういった場合が当たるかというのは、それぞれの事案の個別的な事情がございますので、私どもとしては、それらの個別的な事情が先ほど申し上げた定義に当たるならばそれは当たるというところがお答えでございます。
○山添拓君 そういうことだと思います。
職業安定法六十三条二号と労働者派遣法五十八条は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的での職業紹介や労働者派遣を禁止し、刑罰の対象としています。
警察庁に伺います。
AV出演について、これらの違反を理由に摘発した事例の件数と特徴的な事例について御紹介ください。
○政府参考人(住友一仁君) 答弁申し上げます。
まず、アダルトビデオへの出演強要に関しましては、労働者派遣法第五十八条違反として平成三十年に三件三名を、職業安定法第六十三条第二号違反として、これは平成二十九年の四月から十二月までの間に一件一名、平成三十年に一件五名、令和元年に二件二名、そして令和二年に一件一名の検挙事例を把握しているところでございます。
また、これらの事例の内容として、労働者派遣法違反について申し上げますと、アダルトビデオ女優の派遣管理等を業とするプロダクションの元従業員らが、アダルトビデオ企画制作会社に対し、同社がアダルトビデオを制作する際、出演女優として男優を相手方に性交性戯をさせることを知りながら、雇用した労働者である女性を派遣し、アダルトビデオ女優として稼働させた事案というのを把握しております。
また、職業安定法違反について申し上げますと、スカウトらがモデルを志望する女性に対し、アダルトビデオ出演は芸能界の登竜門であるなどと述べて説得をし、不特定の男優を相手方として性交性戯を行うアダルトビデオ女優の業務に就かせる目的でアダルトビデオ制作、販売業者に同女を紹介して雇用させた事案というのを把握しているところでございます。
○山添拓君 ありがとうございます。
資料をお配りしています。全国の検挙件数としては極めて少数だと思います。刑法の淫行勧誘、わいせつ物頒布、強要など、ほかの罪名を含めても年に数件という状況です。
警察庁は、二〇一七年以降、アダルトビデオ出演強要問題専門官を各警察に置いています。取締りを強化するとしてきたわけですが、余り強化されている状況ではないように思えますけれども、いかがですか。
○政府参考人(住友一仁君) 今先生御指摘いただきましたとおり、我々警察においても、各都道府県警察でこのアダルトビデオ出演強要問題専門官と指定された統括責任者というのを中核として、各種法令を適用し、厳正な取締り、被害防止のための広報啓発、相談体制の充実等を推進しているところでございます。
その結果等について、我々の方としてこれは多い少ないという形で申し上げるのは、これ差し控えたいと思いますが、いずれにしても、我々としては、こういった各都道府県警察における取組が進められますよう、警察庁として引き続き都道府県警察を指導してまいりたいと考えているところでございます。
○山添拓君 一方で、多くの被害があるわけです。
厚労省に伺います。
職業安定法や労働者派遣法が有害業務を禁止し、罰則規定を設けているのはなぜでしょうか。特に性交させる目的で業務に就かせたり派遣したりすることが禁止されているのはなぜでしょうか。
○政府参考人(富田望君) お答え申し上げます。
労働者派遣法や職業安定法におきましては、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣や職業紹介等を行うことについて罰則を規定しております。
この公衆道徳上有害な業務というようなことでございますけれども、これは社会共同生活上守られるべき道徳を害する業務とされておりまして、その適用については個別の事案によるわけでございますけれども、例えば、芸能プロダクションとその代表者らが、雇用する労働者である女優をアダルトビデオ制作会社に派遣した事案について、アダルトビデオの出演行為が労働者派遣法第五十八条の公衆道徳上有害な行為に該当するとした裁判例があると承知しておりまして、そういった行為に該当した場合には罰則が適用となるということでございます。
○山添拓君 その判決は、性交の場面を露骨に演じ、その場面が撮影されるのを業務内容とするものであって、有害業務であることは疑いの余地はないとしています。また、その判決では、労働者派遣法は労働者一般を保護することを目的とするものであるから、この業務に就くことについて個々の労働者の希望ないし承諾があったとしても犯罪の成否に何ら影響がないとも述べております。
業務として性交することについて、本人の同意があったとしてもそのような業務は違法であって罪に問われるということだと考えますが、厚労省、それでよろしいでしょうか。
○政府参考人(富田望君) この規定の解釈でございますけれども、繰り返しになりますけれども、この目的としましては、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務は健全な社会共同生活を維持する上から存在は望ましくないというふうなことでございましてこういうふうな罰則規定を設けているところでもございまして、それについては、その業務自体を規制しているものであって、それは同意しているかどうかについては変わらないということでございます。
○山添拓君 少なくとも、職安法や派遣法上、性交させ、撮影する業務は刑罰の対象となっていると。個々の労働者の同意の有無にかかわらず、刑罰の対象になるということであります。
法務省に伺います。
先ほど答弁のありました売防法の解釈に照らせば、AV出演契約の契約書上、誰と性交するかということが明記してあったとしても、不特定の相手方に当たり得ると。売防法で禁止される売春に当たる可能性が、まあ事案に応じてという答弁でしたけれども、売春に当たる可能性があるということだと思います。この場合は、民法上も公序良俗違反で無効だと、そう言うべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 一般には、公序良俗違反とされる行為の一類型として、社会通念上、性道徳や人倫に反する行為があるとされております。
他方、委員御指摘のアダルトビデオの出演内容には様々なものがございますので、出演者が具体的に行う行為の内容も様々であると考えられます。これが性道徳や人倫に反し、公序良俗に反するものとして無効になるかどうかは、個別のアダルトビデオについてその個別の事情を考慮して最終的には裁判所によって判断されるものであり、一概にお答えすることは困難であると考えております。
○山添拓君 売防法違反に当たるような場合でも、必ずしも公序良俗違反で無効とはならないという御答弁ですか。
○政府参考人(金子修君) 売春防止法二条の定める売春は、対償を受け又は受ける約束で不特定の者と性交するものとされておりますので、この売春を内容とする契約につきましては、一般的に性道徳や人倫に反するものとして公序良俗に反するということになろうかと思います。
○山添拓君 同様に、職安法六十三条二号や労働者派遣法五十八条に違反するAV出演契約は、これもやはり公序良俗違反で無効と言うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(金子修君) これも答弁として同じになりますけれども、労働者派遣法あるいは職業安定法が禁じている公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務を内容とする契約が公序良俗に反するかどうかについて一概にお答えすることは困難ではございますが、その業務の具体的内容等によっては公序良俗に反すると判断されることはあるものと考えております。
○山添拓君 ここは当然公序良俗違反であろうと答弁いただきたいところですよね。有害業務だと認定している判決は、これは社会生活において守られるべき性道徳を著しく害するんだと、公衆道徳上有害な業務だと、そのことは疑いの余地はないと判決をしているわけです。
この被害に遭った女性、お話を伺えば、初めは大丈夫だと言われると。そのときは撮影に同意していても、いざ撮影に入ると自分が何をしているのか分からなくなると言います。そして、終わった後は眠れなくなる。公表されると取り返しの付かない被害に心身の深い傷を負うものであります。
私は、売防法や職安法、派遣法の解釈に照らせば、やはり対価を支払って性交をさせる、そしてそれを撮影する、いわゆる本番行為を含むようなAV出演契約は無効と言うべきだと思います。性的自由を侵すものであり、政治はそれを明確にするべきだと思うんですね。現在、AV出演契約を規制する法案が超党派で議論されておりますが、今日の答弁を踏まえたものになるように求めていきたいと思います。
ありがとうございました。

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