山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2022年・第210臨時国会

「合区解消」口実の改憲議論は許されない

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
初めに、自民党議員から本日のテーマから全く離れた発言がなされたことに強く抗議します。
我が党は、多くの国民が改憲を政治の優先課題として求めていない中、審査会を動かすべきではないという意見です。しかし、少なくとも、議題と全く離れた発言がされることは幹事会の合意に反し、開催の前提を欠くことを指摘したいと思います。
参議院議員の選挙区の一票の較差及び合区問題に関して意見を述べます。
日本国憲法前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」という文言に始まり、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」としています。
民意を正確に反映した国会で徹底審議を通じて国の進路を決めることは、国民主権の議会制民主主義における基本的な要請です。選挙権は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的人権であり、参議院議員の選挙制度において投票価値の平等を求める憲法十四条一項や、国会議員が全国民の代表であるとする四十三条一項などを満たすべきことは言うまでもありません。同時に、こうした議論は参議院改革協議会や選挙制度に関する特別委員会などで行うべきであり、憲法審査会を動かし論じるべき問題ではありません。
参議院議員の選挙制度を違憲状態とした二〇一二年最高裁大法廷判決が、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難いとし、都道府県を選挙区の単位としなければならない憲法上の要請はなく、仕組み自体の見直しが必要と述べたことは、今日においても重く受け止めるべきです。
最高裁は、合区導入後の二回の参議院選挙について合憲としていますが、いずれも投票価値の較差の更なる是正に向けた国会の姿勢、特に二〇一五年改正法の附則七条が、次の参院選に向けて較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るとしていたことを踏まえた判示です。
本日の審査会に先立つ幹事懇談会で、今年の参院選を受けた各高裁判決に当審査会での議論に言及するものがあることを理由に、更に議論をすべきという意見がありました。しかし、二〇二〇年の最高裁判決が、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないことを理由に辛うじて合憲としたことからも明らかなように、求められているのは較差是正に向けた検討です。較差を容認ないし度外視し、都道府県ごとの代表を選出できるようにするための合区解消、ましてや、そのための改憲論議が求められているのではありません。国会は、選挙制度の憲法適合性をめぐる司法の要求に正面から応えるべきです。
参議院選挙区選挙において合区による較差是正に限界があることは、今年五月の当審査会で新井誠、上田健介両参考人からも指摘がありました。合区対象県の住民と他の都道府県の住民との間で法の下の平等に反する事態を生じる点も重大です。
抜本的な見直しが求められていたにもかかわらず、二〇一八年改正で自民党は、この法案は次善の策だと、憲法改正こそが抜本的な改正だなどと開き直り、非拘束名簿式の比例代表選挙に優先的に当選となる特定枠制度を持ち込みました。抜本見直しの意味も司法の求めも意図的に曲解し、牽強付会に改憲論に結び付けるなど言語道断です。
特定枠の導入について自民党は、国政上有為な人材、政党が役割を果たす上で必要な人材を当選しやすくすることが目的と述べました。ところが、蓋を開けてみると、自民党が特定枠に据えたのは、鳥取・島根、徳島・高知の両合区で選挙区の候補者にならなかった者でした。結局、合区によって選挙区から立候補できない自民党の議員候補者を救済するための、まさに党利党略でした。しかも、現在、この特定枠で当選した議員が県知事選挙に立候補の意向を表明したとも報じられています。制度も有権者も愚弄するものと言うほかありません。
我が党は、参議院改革協議会で、投票価値の平等を実現する抜本改革とすること、多様な民意が正確に議席に反映する制度とすること、定数削減は参議院の立法行政に対するチェック機能を弱め民意を削るものであり、行わないことという三点を表明しています。
現在の参議院選挙区選挙は、四十五選挙区のうち三十二が一人区で、事実上ほとんどが死に票の多い小選挙区です。総定数を削減することなく、多様な民意が正確に反映される比例代表を中心に、全国十ブロックの非拘束名簿式の選挙制度とすることを提案します。
一票の較差を正し、民意の届く選挙制度への抜本改革を進め、憲法を生かした政治に転換すべきことを強調し、意見とします。

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