山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

希望を持てる社会に 「誰もが取り残されず希望がもてる社会の構築」に関する参考人質疑

要約
  • 参院国民生活・経済及び地方に関する調査会は8日、「誰もが取り残されず希望が持てる社会の構築」をテーマに参考人質疑をおこなった。山添拓議員は、若年層や女性などで困窮し支援を求める人が高止まりしている原因を質問。大西氏は「非正規労働者の多い労働市場と先が見えない不安定な生活基盤の方への支えが薄い」と指摘。 山添氏が児童手当などの子育て、教育支援の所得制限撤廃や重すぎる教育費負担について尋ねると、赤石氏は「所得要件がなくなれば子どもに普遍的に応援できる」と強調しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日は大変ありがとうございました。
大西参考人と赤石参考人に伺いたいと思います。
食料配布や相談会など、格差と貧困の実態に対して直接支援に取り組んでこられたことに心から敬意を表したいと思います。
意見陳述でも述べられていましたが、コロナ危機が三年に及ぶ中で、支援を求める人が高止まりして減らない状況があるかと思います。感染が拡大しても経済を優先する、そういう方針の下で支援が薄くなり、さらに物価高が追い打ちとなり、困窮に拍車を掛けてきた状況があるかと思います。同時に、その未曽有の事態を受けて、自己責任ではどうにもならない状況が元からあるということが露呈してきたその結果でもあると思います。
とりわけ、若年層や女性など支援を求める人が高止まりしているその背景について改めて伺えればと思います。
また、あわせて、この影響が長期化することに伴って、支援の困難もあると思います。現場で取り組んでおられる支援団体などに対する政府の支援策の在り方についても御意見があればお聞かせください。

○参考人 自立生活サポートセンター・もやい理事長(大西連君) ありがとうございます。
二点いただきましたので、順番にお答えしたいと思います。
まず、おっしゃられたように、まさに高止まりといいますか、支援が厳しい状況、支援が薄い、様々な政府の緊急対策であるとか、そういったものも徐々に切れたりとかですね、終わりを迎えている中で、その悪いタイミングで物価高というところの二つ目のパンチといいますか、そういった状況があるのかなというふうに思います。
やはり、それは緊急的な部分で、より問題が明らかになったというところですが、やっぱり構造的なところで、今回、若年層、女性含めて、じゃ、何でこんなにたくさんいろんなレベルで相談多くなっているのかという一つの背景としては、やはり我々のレベル、貧困の格差の問題のレベルからいえば、圧倒的に非正規で働いていた方が若い方、女性の方に非常に多かったのではないのかなというふうにも思います。これ、いろんなレベルで、研究者の方もシーセッションというような言い方をしたりとか、いろんな形で研究されているところだと思いますが、背景には、不安定な働き方をしている人が社会の中にそもそもたくさんいらっしゃって、それはサービス業だったりとか、そういった産業に多くて、そこがコロナの影響というのをすごく受けた。また、そういった方が非正規労働のキャリアが長かったりとか、そういった傾向があって、なかなかほかの産業であったりとか業態というのに今移行できなかったりというところで厳しい状況にあるのかなと、そういった背景があるのではないかなと思います。
なので、例えばコロナが仮に落ち着いて、物価高が例えば落ち着いたとしても、不安定な労働市場に戻っていくだけになるんですね。もちろん、それでも働いているという意味ではすごく重要ですし、自立した、就労自立というものにはつながるんですが、ただ、そういった先が見えない不安定な生活基盤の上に立っている方が、若い方、女性の方にたくさんいらっしゃるというのをこのまま看過していていいのかなと、そういったことを改めてコロナ禍というのは浮き彫りにしたのではないのかなというふうに思います。
なので、背景は労働市場の問題もありますし、不安定な生活基盤の方の支えがそもそも薄いというところが一つあるのかなというふうに思っています。
二つ目のところでいうと、現場のところでのいろんな困難さというところでいいますと、我々も、団体も、二〇二〇年の四月からコロナということで緊急的な体制を取ってきたんですが、これ多分ほかの現場もそうかもしれませんが、こんなに長く大変な状況が続くと正直当初思っていなかった。それは、理事長としては経営的にそれは失敗なのかもしれないですけど、正直やっぱり、職員、スタッフ、ボランティア、関わる方も含めて三年、これ四年目に入る、むしろ状況が高止まりで悪くなっているというところで、疲弊感といいますか、疲労感みたいなものというのは正直いろんな現場のレベルであるのではないかなと思います。
これは、民間だけではなくて、例えば特例貸付けの現場、社協さんの現場とかも返還業務が始まる、相談をして、支援をするのが得意な人たちが、今度は返還の話、お金を返してもらうという何かすごく身を裂かれるようなことを例えば社協さんの現場は今しなければいけなくなっていたりとか、やっぱり支援現場に掛かる負担、負荷というものは実はすごく高くなってしまってきているというふうにも思います。
そこを含めて、先ほどほかの方の質問でもありましたが、そういったものをサポート、ケアというところも当然必要でしょうし、また、そういった返還であれば、それを償還免除にするような仕組みというものも必要かもしれませんし、やっぱり現場の負担をできるだけ減らしていただけるような様々な施策、支援というものを是非御検討いただけたらうれしいなというところは改めて思います。
ごめんなさい、長くなって申し訳ないんですけど、いろんなNPOとか社会福祉法人とか、すごく現場でいろいろ頑張っていると思いますが、やっぱりなかなかその、まあ我々の団体は比較的規模が大きな団体で、ある程度御寄附をいただいたり、そういった中でボランティアに関わっていただける方がいて活動ができている部分というのはあるんですが、もっと小さな団体、もっと地域の本当に草の根の団体の中には、やっぱりこのコロナという文脈で支援をするのはもう難しくなってしまったり、ちょっと疲労してしまったり、例えば傷ついてしまったりして、もう続けられないというふうに活動を断念してしまったりとか、そういったケース、正直あります。
我々、どうしてもこういう現場の人間は、目の前で困っている人がいたら何とかしなきゃと動くんですけれども、当然疲労もしますし、精神的な疲れというのも当然重なっていきますし、若しくは御自身の、自分、支援者の例えば家族との関係であったりとか、いろんなレベルの負荷というのはむしろこれから出てきてしまうのではないのかなと。そういった意味では、担い手の育成もそうなんですが、サポートということもこれから考えていかなきゃいけないのかなというところはあるかなというふうに思います。
済みません、ちょっと長くなって申し訳ないです。
以上です。

○参考人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長(赤石千衣子君) ありがとうございます。
私ども、現場の支援をすると同時にフィードバックもいただいているので、お母さんたちからお子さんたちが受け取ったときの写真とか、先ほどお見せしたのはそういう写真なんですけれども、そういうのをやりながら、じゃ、来年度どのような支援をするのか、この間、私どもの検討会開かせていただきました。
いろいろなフードバンクの方とかからも意見をいただいているんですが、正直言ってまだ、フードバンク事業が推進されているのは事実なんですけれども、まだまだ各県のフードバンクがそこに、支援団体に十分な食品を提供するほどの力を持っていない、もう本当に手弁当でやっているような団体は、そこの県で、本当はその地域で支援できるというスキームをどんどんつくっていくということが必要なんですが、まだまだそこに至っていないなと。そうすると、私どもが遠くにお送りするというのをやめるのはまだ早いという判断になっております。
ですので、やはり地域ごとに支援ができるような基盤をつくる支援というのを更に更に深めていく必要がある。これは、フードバンクとか、それからその社会福祉協議会さんがもうちょっと活性化するとか、そういったことが課題として浮かび上がりました。
私どもは、もうおこがましくも、他団体の支援もさせていただいております。本当にそれがないと続けられないというような団体もございますので何とか頑張っているんですけれども、みんな、次、食料支援どうしたらいいんでしょうみたいなことを去年ぐらいから言っているし、自分たちができなくなりそうになると、どうしても支援を受ける方たちが甘えているみたいな気持ちになりがちになってしまうんですね。実は、これだけの収入状況を見たら、甘えているわけではない、ないんですけれども、そんなふうに思ってしまう。
こんな何か悪循環が起きてしまいますので、いろいろな中間支援団体への支援というのも出てきてはいるんですけれども、まだまだちょっと少ないなというふうに思っているところでございます。

○山添拓君 ありがとうございます。
尾上参考人に伺いたいと思います。
紹介がありました障害者権利条約の初の日本審査では、人権保障の観点から厳しい勧告がなされているかと思います。特に焦点となった精神科医療についてですが、精神科病院の強制入院を障害に基づく差別であるとし、自由を奪っている法令の廃止も勧告されています。今日も御紹介がありました。
脱施設化のための法改正や予算の強化が必要だと思いますが、地域社会での自立した生活を権利として保障するために政治の側の取組として最も欠けていることは何だとお考えでしょうか。

○参考人 認定NPO、DPI、障害者インターナショナル日本会議副議長(尾上浩二君) ありがとうございます。
特に、この総括所見の中で支援を集中的に必要とする障害者という表現があることに是非御注意をいただければというふうに思うんですけれども、日本では医学モデルに基づいて重度障害という言い方があるんですが、それは社会モデルや人権モデルでいうと、言うならば、それだけ支援を必要としている人、分厚い支援を必要としている人が日本でいう重度障害者だ、でも、その支援を集中的に必要とする人たちの、言うなら支える体制がないということをこの総括所見では繰り返し指摘をしている、懸念事項として指摘しているんですね。
そういう意味で、先ほど言われた地域で暮らす権利、それを実現をしていくためには、地域基盤整備、例えば十か年戦略のような形のですね、今回ちょっと紹介をいたしました総括所見の一番冒頭に、入所施設から地域生活へ資源の配分を行いなさいという話をしています。
それは、そのためには、地域生活基盤を今は自治体の障害福祉計画にもう全部委ねてしまっている状態だと思うんです。ちゃんと国の計画として、十か年、どの地域においても、支援を集中的に必要とする重度、いわゆる重度の障害、どんな重度の障害があっても、どんな障害があっても地域で暮らせる安心した地域社会をつくりますよ、そのことを国の意思として、メッセージとして示していくような地域基盤整備十か年戦略のようなものを是非作っていただければな、それが総括所見に対するやっぱりこの日本社会の答えであってほしいなと思います。

○山添拓君 ありがとうございます。それはもう直ちに進めさせていかなければならないことだと思います。
大西参考人と赤石参考人に伺います。
この通常国会では、児童手当の所得制限撤廃が少子化対策をめぐって一つの議論となっています。撤廃は当然だと思いますが、この問題は児童手当だけの問題ではないと先ほど指摘もあったとおりです。幼児、高校、大学無償化など、あらゆる段階でこの所得制限ということは問題になります。学校給食費の無償化が二十三区でも幾つかの自治体で表明されるなどしていますが、総じてこの重過ぎる教育費の負担が大問題だと思います。
この点について、それぞれお考えを伺えますでしょうか。

○参考人(大西連君) ありがとうございます。
ちょっと団体として何らかオピニオンを出しているわけではないので、あくまで私個人の意見でということでお答えしたいと思いますが、今まさに児童手当の話、所得制限の話というのがかなり議論になっていて、私個人の立場としては所得制限はない方がいいんじゃないかというふうに思っていたりもします。
やっぱり一つ理由は、子育てってすごくそれだけでもかなり大変な状況だと思いますので、本当にすべからく多くの人たちを社会全体で支えるということをいろんな政策のレベルで位置付けられたら、それはすごく大事なことなんじゃないかなというふうに思っていることというのが背景としてあるというのが一つあります。
あと、今おっしゃられた給食費の話であるとか、高校、大学、高等教育の無償化等の議論というのは、もう実は共通している部分があると思っていて、給食費ももちろん就学援助等の仕組みを活用すれば、実際上の負担というのは非課税世帯等に関してはかなり減じられるというところはありますが、他方で、そもそも給食というものを費用負担が要るものなのかどうか、子供全員に対してそれも含めて支援をするということが適切じゃないかという考え方もありますし、やっぱりその親の、御家庭の所得の状況によって払う払わない、そういった状況があるということも含めて子供たちがどう受け止めるのか、仕組みとしてですね、そこを、子供たちへの視点というものを是非考えていただきたいというのと、あと、高等教育に関しての無償化等に関してですけれども、これ、私、ずっとその生活保護世帯の支援、子供の支援というのをかなり関わっておりますので、この大学の進学の問題ってずっと課題でして、生活保護の枠組みですと基本的には稼働能力の活用という言い方をしますが、大学ではなくて働きましょうと。ただ、世帯分離という形を取って、その子供だけ生活保護から外れて大学に行くことは認められますよと。でも、奨学金が通常の御家庭よりも何倍も、二倍以上、四百万とか五百万とか借りなきゃいけない。なので、進学率は下がると。
これ、やっぱりいろんな家庭を支援する中で、所得が下がるほどやっぱり進学にハードルが課されてしまう。もちろん、今は給付型の奨学金、いろんな仕組みありますけれども、ただ、なかなかそれ以上に、やっぱり社会全体としてのメッセージとして、いや、誰でも学べるんだよと。
それから、例えば非正規で働いている方、高卒で非正規で働いている方たくさん出会います。で、大学行きたかったという方もたくさんいるんですよね。そういった学び直しという観点からも、そういった高等教育等の無償化というのは一つアプローチとしてあるのかなというふうには個人的には思っています。
なので、繰り返しになる部分があるんですけど、やっぱり家計の負担というものが、進路だったりその人が選ぶ人生の選択に今はかなり大きな影響を与えてしまっている。それを少しでも軽くできたら違う選択肢がもしかしたらその方たちにとって与えられる、得られるような機会になるのかなというふうには思います。
以上です。

○会長(福山哲郎君) 赤石参考人、時間が過ぎておりますので、短くおまとめください。

○参考人(赤石千衣子君) はい。
ありがとうございます。
給食費の無償化ですとか、そういったことは歓迎いたします。なぜなら、世帯収入がグレーゾーンになっている世帯がある、例えば先ほど言った別居状態とかですね。ですので、そういう漏れてしまう、制度から、就学援助の、世帯単位でやると漏れてしまう方もカバーできるという意味で、普遍的な制度の利点というのはあります。どうしても把握できない世帯内の貧困ということがございます。大学教育も同じでございます。
今、共同親権制度が議論されているんですが、社会保障制度とどのようにリンクするかが全く分からないので、意見書を出させていただきました。一体、世帯の収入どう把握するか、共同親権になったら両方の親を合算するのか、分かりません。なるべく普遍的な制度になっていればその所得要件がなくなる、そうすると子供に普遍的に応援ができる、基本的にはそこがあると良いということは言えるかと思います。
就学援助も三位一体改革で今自治体負担になっておりますけれども、なかなか難しいと聞いているんですが、もう一度国の責任の制度になっていっていたら、学校給食が止まったときにも給食費の返還ができたのになというふうには思っております。
以上です。

○山添拓君 大変ありがとうございました。終わります。

ページ
トップ