山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

米軍指揮下で基地攻撃 統合防空ミサイル防衛(IAMD) 半田滋氏が予算委公聴会で警告

要約
  • 安保3文書によって進められる日米一体化について質問した。半田氏は、日本は敵を攻撃するために必要な情報を得る手段である偵察衛星や、各種レーダーなどの保有が不十分だと指摘。その上で、ミサイル防衛と敵基地攻撃が一体となった「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)について、「米軍のIAMDに入らなければ、日本の反撃能力(敵基地攻撃能力)は機能しようがない」と強調し、米軍の指揮下で自衛隊が敵基地攻撃を行使する危険を述べた。さらに半田氏は、安保3文書が、「抑止力」の強化といいながら、抑止が破られることを前提として実際に軍事力を使用する「対処力」を強化しようとしていることを批判。その一方で、「外交による戦争回避の言及が驚くほど少ない」と指摘した。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
公述人の皆さん、今日はありがとうございました。
まず、片岡公述人に伺います。
アベノミクスの第一の矢の異次元の金融緩和は、デフレ克服という掲げてきた目標の達成との関係では、まだそこには至っていないと思います。ただ、円安と株高を誘導し、大企業と富裕層が巨額の利益を得たという点では、これは狙いどおり進んできたのではないかというふうにも思います。
大企業の内部留保が五百兆円を超えて、資産五億円以上の超富裕層の純金融資産の保有額が百五兆円、二〇〇五年以降最多とされています。一方で、ワーキングプアが増加し、コロナと物価高、食料支援を求める人が後を絶たないと、こういう現状もあります。
超低金利政策が格差を拡大させる結果を生んできたということについて、どのようにお考えでしょうか。

○公述人 PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。
私自身は、今委員がおっしゃった意見というのは全く賛同できないものでございまして、というのは、その格差を拡大させたとおっしゃいますが、その理由付けというか、格差が拡大したというようなことを示している証拠というのはない状況じゃないかと思うんですよね。
例えば、ジニ係数というようなもの、指標で見ても格差が拡大しているというわけではございませんし、それから、アベノミクスの金融緩和というお話をおっしゃっていたと思うんですけれども、アベノミクスでは、先ほどお話をしたように雇用が改善していると。雇用の改善というのは、これは豊かな方々だけではなくて、要は職を得ていない方が職を得られるようになったという話にもつながりますので、ですから、むしろ、上から云々というよりかは、職を得ていない方ないしは資産価格等々を通じた大企業とかそういったところ、両面に影響したんじゃないかと、こういうふうに見ております。

○山添拓君 私自身は、この間、多くの方が食料を求めて列を成しているという場も見ているものですから、そういう中で、一方で内部留保を積み上げる、あるいは金融資産の額を積み上げる、そういう状況があるということについて伺ったつもりでありました。
この間、日銀の総裁候補の植田氏なども国会の場で、超低金利政策が格差を拡大させる、そういう面があるということについてはお話しされていたものですから御意見を伺いましたが、ありがとうございました。
次に、片岡公述人、八代公述人、それぞれに伺いたいと思います。
賃金の問題が先ほども話題になっておりました。賃金が上がらない原因として、まあこれいろいろあるかと思うんですが、私もやはり非正規雇用の問題、それから男女の賃金格差の問題も背景としてはあるのではないかと思います。
先ほどの片岡公述人は、制度的な問題もあると、非正規の問題でですね、ということをおっしゃっていましたので、その辺り少し詳しくお聞かせいただければと思います。
また、八代公述人は限定正社員ということも触れておられました。確かに正社員にはなるわけですけれども、しかし、正社員となっても給料は非正規と同じ状況、最低賃金水準というケースも伺ったりしております。ですから、非正規雇用や非正規と同水準で働くような正社員、そういう低賃金の問題などについてお聞かせいただければと思います。

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございました。
先ほど私の発言について少し補足をさせていただきたいと思うんですけれども、私自身、金融緩和が、何というんですかね、格差を助長したというふうには考えていないんですけれども、他方で、格差を是正する必要はあるというのは当然そう思っています。
アベノミクス自体は、財政政策、金融政策、成長戦略を通じた成長を高めるパッケージですので、ここには社会保障ないしは所得再分配といった政策というのは含まれていないわけですよね。ですから、そういった意味では、その所得再分配というのは成長しつつやっていくということだと思うんですけれども、別途、所得再分配政策というのは充実させるべきだと思いますし、それはやる必要があるというふうには考えております。
お尋ねの件なんですけれども、非正規雇用等々、制度的な問題があるという話なんですが、これは、先ほど八代先生が指摘しておられた、その待遇の問題ですとか同一労働同一賃金とか、そういったお話であります。

○公述人 昭和女子大学特命教授(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。
限定正社員というのは、別に賃金とは無関係であるわけで、非正社員並みの賃金では全然意味がないわけですね。あくまで正社員の賃金と雇用保障の下で、しかし、普通の正社員のように、企業の言うままにどこでも転勤する、長時間労働も当たり前というような状況を改善するという、あくまでも正社員の一部なわけですね。
むしろ、今、先ほど議員の言われた点の問題点は大企業と中小企業の格差であって、今の正規、非正規の問題はどっちかといえば大企業の問題であって、中小企業になってくると、そもそも正社員、非正社員の差は余りないわけです。だからこそ、流通業のようなどっちかといえば正社員の賃金も低いところでは、非正社員の組織化、組合化というのもかなり進んでいるわけだと思います。
ですから、問題はやはり、その大企業と中小企業の格差というときには、もっと労働の流動性を高めることによって移動を自由にできるようにするということが一つではないか。今は、一旦大企業に入ると、終身雇用の下で生産性にかかわりなくどんどん賃金が上がっていく、中小企業や非正社員はそれほど上がらないという年功賃金の格差なわけですね。だから、年功賃金の是正ということはやっぱりこの面でも重要だと思います。
それから、男女の賃金格差なんですが、これは、例えば厚労省の資料なんかを見ますと、日本や韓国は非常に男女の賃金格差が大きいんですが、同時に勤続年数の男女格差も大きいんですよね。で、女性の勤続年数を国際比較すると、日本の女性の勤続年数は決して短くないんですよね。むしろ国際標準なわけで、男性の勤続年数が非常に長いために勤続年数の格差が生じて、それが逆に言うと、女性の管理職比率が低くなって男女の賃金格差を広げている、これは韓国も同じわけですけれども。
ですから、やはりここは日本的雇用慣行の中に男女間賃金格差を拡大させる大きな要因があるわけで、そういう意味では、日本的雇用慣行を見直していく、少なくとも法律によって保護するということはやめていくべきで、競争に任せて、ある企業はもう徹底した日本的雇用慣行をやる、別の企業はしないと、どちらでもいいという形でやっていく必要があるんじゃないか。で、いろいろな労働法制を中立的な形にしていくというのが大事ではないかと思っております。
以上です。

○山添拓君 続いても八代公述人に伺いたいと思います。
先ほどの意見の中で、政府がやるべきは最低賃金だという御発言がありました。それを上回る賃金については労使で協議していくべきだけれどもという御趣旨でしたが、その最低賃金について少し伺いたいと思うんですが、例えばEUでは、働く貧困層をなくすということで指令を出して、平均賃金の五割、六割というような最低賃金を定めるべきだと、そういう指令を出し、ドイツでは実際に千七百円という賃金額にしていったという経過があります。
日本の最低賃金の課題、また、もちろん中小企業でも上げられるようにするには、そのための一定の支援なり、何がしかの対応が必要かと思うんですけれども、最低賃金を引き上げることによって全体を底上げしていくことは、これはやはり必要なことだと思うんです。その辺りについて御意見を伺えますでしょうか。

○公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。極めて重要な指摘だと思います。
最低賃金の引上げがやはり非常に大事で、しかも有効であるということは今の政府も分かっていて、随分最近は上がっているわけですね。ただ、おっしゃったEUとの比較という点では、一番大きな問題は、EUは職種別賃金なんですよね。ですから、元々同じ職種であれば、大企業、中小企業、それから正規、非正規の違いは元々ないわけでして、そうした中で最低賃金を普通の一般の労働者の何割にするというのは意味があるわけですが、日本のような年功賃金の体系の下で最低賃金を例えばその年功賃金の真ん中の半分にするというのは、これはやっぱりもたないんではないか。ですから、やはり今の日本的雇用慣行を変えていくという過程でそのEUのやり方も参考にしていくというのが筋ではないかと思っております。
以上です。

○山添拓君 御意見いただいてありがとうございました。


○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
公述人の皆さん、今日はありがとうございました。
半田公述人に伺います。
安保三文書により、敵基地攻撃能力の保有を始め、安保政策の大転換が図られようとしています。なぜ今このような転換が迫られているのか、背景も含めてお考えをお述べください。

○公述人防衛ジャーナリスト (半田滋君) 今回の大転換のきっかけというのは、私は、二〇二〇年の九月に持病の悪化を理由にお辞めになった安倍元首相が、その際、安倍談話を残したことが今回はそのきっかけであるというふうに思っています。この安倍談話は、一つは、イージス・アショアの代替措置を考えてほしい、そして迎撃だけでは足りないといって、そして敵基地攻撃能力も検討してほしいと、これを二つを言い残して、一つは、イージスシステム搭載艦の建造は菅首相が閣議で決め、そして、残りの反撃能力については去年の十二月に岸田首相が閣議で決めたと。これが今回の呼び水だと思います。
特に今回、今まで、実は二〇一三年には、自民党が大綱、中期防に盛り込むべき提言としてまとめた中に、策源地攻撃能力の保有といって、それを持てと。二〇一八年には、敵基地反撃能力の保有といって、それを持てと。昨年には、反撃能力を持てと。これは、ずっと振り返ってみれば、安倍政権が誕生して以来、ずっと敵基地攻撃能力を持ちたいというようなことを安倍首相と、そして自民党の皆さんがお考えになってきたのではないかなと。
たまたま昨年の二月にロシアのウクライナ侵攻がありました。このほぼ二か月後辺りの各新聞社の世論調査を見ると、防衛力強化に七割が賛成をし、そして、たしか毎日新聞だったと思いますが、敵基地攻撃能力の保有は六六%の方が賛成をしているんですね。つまり、以前からやりたかったことではあったんだけれども、世論の後押しという形で実現可能になったと。それが去年の十二月だったのだろうというふうに考えております。

○山添拓君 続いても、半田公述人に伺います。
今お話あった敵基地攻撃能力の保有などの大軍拡だと思いますが、これは国民の生命、財産を守るためのものだと説明をされています。しかし、実際には、現実には日本が戦争に巻き込まれる危険を高めるということも考え得ると思います。この点について御意見をお聞かせください。

○公述人(半田滋君) 山添先生がおっしゃるとおりだと思います。日本が敵基地攻撃能力を、反撃能力を持てば、相手がひるんでミサイルを撃ってこなくなると、それで日本の安全は高まるというような、そういった政府の説明はありますけれども、今直ちに例えば北朝鮮からミサイルが落ちてくるのか、直ちに中国が日本本土を、あるいは南西諸島に侵略してくるのかというと、余りそういったことは現実的ではないかなと思います。むしろ、今差し迫って起こり得る可能性があるのは台湾有事ではないかと。
そのとき、現に今年の二月にバーンズCIA長官が、習近平国家主席が人民解放軍に勝利できるような準備をしろというような命令を出したというような報道もありました。そういうのを見ると、台湾有事というのが一番日本にとって差し迫った脅威である可能性はあると思います。
そのとき、在日米軍基地からの出撃を認めた場合、これは当然ながらその基地が攻撃対象となって日本有事になりますね。あるいは、その米軍が台湾の近海などで攻撃された場合、アメリカ軍が損耗することによって存立危機事態が認定されて、そして自衛隊が出動してアメリカ軍と戦うことになると。そういったところが一番この可能性としては高いと。
それは、結局は日本が戦争に巻き込まれていくということですから、今回の敵基地攻撃能力の保有、あるいはその一つ前、安倍先生が、安倍首相がやったようないわゆる安全保障関連法に基づく集団的自衛権の行使、これが相まって化学反応を起こして、より一層危険になる可能性は出てきたと。もちろん、抑止力が効いて安全になるということもゼロではないとは思いますけれども、これはもろ刃のやいばであるということは忘れてはならないというふうに思います。

○山添拓君 もう一点、半田公述人に伺います。
安保三文書によって進められる日米の軍事的な一体化について御意見を伺います。

○公述人(半田滋君) 例えば、日本は専守防衛でやってきたわけですから、やってくる敵をはね返すための能力というのは、これ世界有数の力があるというふうに思っています。一方、じゃ、敵基地に攻撃に行くための情報があるかといえば、この情報収集の手段ははっきり言ってまあほぼないと言って過言ではないと思います。
例えば、外征軍であるアメリカの場合であれば、たくさんの偵察衛星を打ち上げたり、あるいは各種のレーダーや、あるいはスパイであるヒューミントの力などを複合的に併せ持って、海外を攻撃する能力は高いものがあると思いますが、日本はそれらが全て欠けていると言わざるを得ません。
したがって、もし日本がアメリカとともに行動する、あるいは日本が単独で敵基地攻撃をしようとした場合であっても、アメリカの情報抜きに行動するということはまず考えられないわけですね。特に、アメリカが今進めているIAMD構想、先日、岸田首相は明確に参加しないと言いましたが、しかしながら、このシステムに入らなければ全くその日本の反撃能力というのは機能しようがないわけですから、実質的にはこの中に取り込まれていくのであろうと。アメリカ軍からすれば、自分たちはその能力も限界もよく知っているトマホークを日本が四百発買うわけですから、日本が買ったそのトマホークで何時何分何秒の方向に打てというような指示が出てくると、まさしくそれこそが日米一体化であろうというふうに思います。

○山添拓君 ありがとうございます。
続いて、鈴木公述人と半田公述人、それぞれ伺いたいと思います。
米中の対立が激化することによる戦争を回避するには、軍事ブロックで中国との対立を深めるのではなく、中国も含んだ地域全体の包摂的な枠組みによる平和的な外交努力、これはいかなる立場に立つとしてもそういう努力そのものはやはり必要ではないかと思います。
鈴木公述人の資料でも、G7を孤立化させない、グローバルサウスについて取り込むのでもなく対立するのでもなく寄り添うということ、先ほど来も御指摘ありましたが、そういう意味で、分断、対立ではなく包摂的な関係の必要性について、それぞれ御見解を伺えますでしょうか。

○公述人 東京大学公共政策大学院教授(鈴木一人君) ありがとうございます。
多分、防衛費を増やす、安全保障戦略を備える、これが分断を促すということになるのかどうかというところの多分論点になろうかと思います。
私は、こうした備えをすることと分断を回避し地域間の包摂的な枠組みをつくるということは矛盾しないというふうに考えております。
日本は、もし何かがあったときのための備えはしておくけれども、しかし積極的にそれを対立に持ち込むのではなく、まずは外交があり、そして例えば日本は中国と、中国が初めて入った自由貿易の枠組みでありますRCEP等、中国と日本は同じところに入っていますし、これまで日中韓というこの三か国の枠組みというのもまだございます。
そういうようないろんなまだチャンネルは持っていて、その使い道というのは多分いろいろあると思うので、そういったものを活用していくこと自体は、今この防衛費を増やすですとか安全保障戦略を整えるということとは矛盾せずに、両方同時にやっていくべきことなのだろうというふうに考えております。

○公述人(半田滋君) 包摂というのは極めて重要だと思います。
例えばTPPですが、これはTPP自体に様々な評価はあるとはいえ、日本が入っているにもかかわらずアメリカは出ていってしまったわけですね。で、中国がこの加盟を申請して間もなく台湾も加盟を申請しましたね。
これ、私は両方入れるべきではないかと。同じ土俵の中に台湾と中国を入れて、そして議論のテーブルの場というものを一つつくるいい機会ではないかと思います。もう確かにRCEPもありますし、例えばASEANの中のARFというのもありますけれども、それだけではまだ足りないと。包摂するためにチャンネルが幾つあっても構わないと思います。それは是非、日本は、そういった場をつくる可能性のある一番いい機会が今年から来年ぐらいにかけてではないかなというふうに思っています。

○山添拓君 ありがとうございます。
鈴木公述人にもう一点伺います。
米中対立に関わって、今日のお話でも、半導体規制など、経済に政治が介入する問題について御指摘がありました。アメリカが今このような態度を取るその政治的な意図について、また、それが対立をよりあおる方向に進むのだとすれば、その緩和のために日本は何をするべきかという点について御意見をお聞かせください。

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。
アメリカにもいろんな考え方があるとは思うんですけれども、今アメリカは社会が非常に分断している状態で、共和党と民主党の対立というのは非常に激しい状態になっていますが、唯一超党派で同じ目標に向かっているのがこの対中対立というか対中強硬派、どっちの党がよりこの中国に対して強く出るかという、こういう競争になっている部分というのがあると。
先ほども申したように、ツキディデスのわなの形で、やはりキャッチアップしてくる中国に対する恐れというものと混ざり合うか、その党派性の対立というのが競争になって、中国に対する、どっちが強く出ているかという、こういう競争になっていることから、なかなかヒートアップした状態というのが解消できないというところにあるんだと思います。
これをどうやって鎮めていくかというのはなかなか難しいんですけれども、一番重要なのは、中国がいたずらにそのあおるような方向に行かないことだと思います。現在、中国は比較的冷静に受け止めているという状況にありますので、この状態が続いてくれることを祈りたいと思うのと、また、日本はアメリカと中国の間に立って、やはり中国の実態ないしは中国のこの怖さというか、アメリカが持っている恐れというものを緩和していく様々な努力、中国にもいろんな弱点があって、日米で協力することによってそうした恐れを抱かなくてもいいんだという状態をつくっていく、ないしはそういうことを、そういう雰囲気をつくっていくことが大事なのだろうと思います。

○山添拓君 ありがとうございます。終わります。

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