山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

2023年度予算案に対する反対討論

要約
  • 憲法違反の敵基地攻撃能力の保有に踏み出し5年間で43兆円にのぼる❝異次元❞の大軍拡を推進するために、対前年度比89.4%増となる軍事費を含む一般会計総額114兆3812億円の23年度予算案に反対する討論をおこなった。

○山添拓君 日本共産党を代表し、二〇二三年度総予算三案に反対の討論を行います。
本予算案に反対する最大の理由は、敵基地攻撃能力の保有を宣言した安保三文書に基づき、五年で四十三兆円という、文字どおり異次元の大軍拡に突き進む初年度予算であるからです。防衛力強化資金への繰入れを合わせ十・二兆円に上る軍事費は、前年度比八九%増、歳出総額の九%が軍事費という異常な突出ぶりです。
射程三千キロに及ぶという長距離ミサイルは、配備先次第で東アジア全域が射程に入ります。政府が憲法上保有できないとしてきた、他国に脅威を与える攻撃型の兵器にほかなりません。総理は、憲法、国際法、国内法の範囲内で運用されると言いますが、憲法九条二項は戦力の保持自体を禁止しており、運用の問題ではありません。
その運用も歯止めはありません。集団的自衛権の行使で要件となる必要最小限度の武力行使とは何なのか。総理は、個別具体的な状況に即して客観的、合理的に判断するとしか答えませんでした。これでは定義はないに等しく、武力行使は無制限です。
日本が攻撃されていないのに、米軍とともに自衛隊が攻め込む、事実上の先制攻撃となり、その報復攻撃は日本に向けられるでしょう。それを見越すように、全国で二百八十三もの自衛隊基地が、施設の強靱化計画が進められようとしています。一旦戦火となれば、国土は戦場になり犠牲が避けられません。絶対に戦争を起こさせないための外交努力の強化こそ必要です。
ところが、安保三文書にはまともな外交戦略がないばかりか、軍事同盟の強化と武器輸出の拡大など、軍事一辺倒です。果てしない軍拡競争の先に平和への展望はありません。そのために暮らしの予算を削り、増税や流用、建設国債まで充てることは断じて認められません。
本予算案は、エネルギー関連予算の約四分の一、四千三百五十四億円が原子力関連で、前年度より八十五億円積み増しています。一方、自然エネルギー予算は三百六十九億円も削られ、九百十五億円です。
石炭火力発電の延命も続けるといいます。気候危機打開のため、二〇三〇年までのCO2削減目標を引き上げ、再エネ、省エネを強力に推進すべきです。エネルギー価格の高騰に乗じ、脱炭素を口実に原発の再稼働、運転期間延長、新増設など、福島原発事故の教訓を忘れた原発回帰の大転換は到底許されません。
コロナと物価高騰の影響が暮らしと営業に重くのしかかっています。ところが、本予算案は、高齢化で増える社会保障費の自然増分を千五百億円も圧縮し、七十五歳以上の医療費窓口負担二倍化など、負担増を押し付けています。国民健康保険の都道府県化から五年、保険料値上げの圧力が掛かる中、十分な財政措置もありません。
中小企業対策費千七百四億円に至っては、トマホークの購入費二千百十三億円すら下回ります。非正規雇用を含めた賃上げのために今必要とされるのは、最低賃金を時給千五百円を目指し引き上げ、大企業の内部留保課税で中小企業支援の財源を生み出すなど、抜本的な対策です。
総理も財務大臣も、内部留保課税は二重課税との指摘があるといつまでも消極的ですが、最悪の二重課税である消費税をそのままに、その言い分は通りません。
物価高対策には消費税減税が最も効果的です。中小事業者やフリーランスなど、新たな課税負担となるインボイス制度は、一時的な緩和策ではなく、きっぱり中止すべきです。
子供の医療費助成が子供にとって必ずしもプラスになるとは限らないとの答弁は、全国の自治体で進む無料化の努力を無視した暴論です。学校給食費の無償化、高等教育無償化、奨学金返済の減免など、子育て、教育の負担軽減に正面から取り組むべきです。政府が予算成立後に少子化対策のたたき台を示そうというのは甚だしい国会軽視です。
本委員会の審議で、放送法の政治的公平の解釈変更に官邸が圧力を掛けていた疑惑が明らかとなりました。
放送法は、戦前、大本営発表をラジオが広げ侵略戦争を推し進めた痛切な反省の下で、公権力の介入を禁止するために作られました。その解釈変更が安保法制で戦争する国づくりを進めた二〇一四年から一五年、秘密裏に進められた事態は看過できません。岸田政権が敵基地攻撃能力保有で安保法制の実践面での大転換に踏み出そうという今、曖昧にすることは決してできません。解釈変更を撤回するよう強く求めます。
以上指摘し、反対討論といたします。(拍手)

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