山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

国会軽視の政治正せ 参院緊急集会の意見交換

要約
  • 憲法が定める参院の緊急集会について、参院法制局から報告を聴取し意見交換をおこなった。参院の緊急集会についての議論の先には「緊急事態条項を創設するねらいがある」と指摘。東日本大震災やコロナ禍にあっても憲法に緊急事態条項がないために対応できなかった事態はおきていないと批判。「国会の機能」維持と言うなら「国会軽視の政治こそ正すべき」だと主張した。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参議院の緊急集会は、憲法五十四条二項で、衆議院解散中、内閣が特に緊急の必要があるときに求めることができるとされ、同条三項で、緊急集会における措置は、次の国会で衆議院の同意がない場合は効力を失うとしています。規定は明瞭です。にもかかわらず、本日、あえて議論の対象とするのはなぜか。その先に自民党などが主張する緊急事態条項の創設という狙いがあることは明らかです。
しかし、東日本大震災でもコロナ禍でも、憲法に緊急事態条項がないために対応できなかったという事態は起きていません。
また、ロシアのウクライナ侵略を契機に、有事に備えよとあおる議論が盛んになされますが、戦争をさせないことこそ政治の役割であり、憲法を生かす政治への転換が求められます。ましてや、国民の多くが改憲を政治の優先課題として求めていない中、憲法審査会を動かすべきではありません。
その上で、まず、緊急事態条項について述べます。
日本国憲法は、個人の尊重を中核として基本的人権を保障し、三権分立や地方自治の保障などにより国家権力を制限しています。一方、自民党改憲案条文草案の緊急事態条項は、大規模災害などの際、法律ではなく閣議決定による政令で国民の権利を制限できるとするもので、言わば憲法停止条項にほかなりません。
緊急事態条項は、日本でも世界でも濫用された歴史があります。戦前、最も民主的と言われたワイマール憲法の下で、大統領非常権限が乱発され、国会の立法権が奪われ機能不全となり、ナチス・ヒトラーの独裁政権に道を開きました。
明治憲法の緊急勅令は、緊急事態の名の下に、国民の運動を弾圧する道具として使われたほか、議会で否決された法律を通すためにも使われました。その最悪の例が、議会で審議未了のため廃案となった治安維持法の重罰化改正案を議会の閉会後に緊急勅令で強行したものです。こうした濫用の危険と隣り合わせであるからこそ、戦後の憲法はあえて緊急事態条項を規定しませんでした。
憲法制定議会で当時の金森大臣は、日本国憲法の草案に明治憲法の緊急勅令などを設けない理由について、民主政治を徹底させ国民の権利を十分擁護するには、緊急時に政府の一存で行う措置は極力防止しなければならない、どんな精緻な憲法を定めても、非常という言葉を口実に破壊される可能性がないとは言えないため、行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくした、特別な必要があれば臨時国会を召集し、衆議院が解散中であれば参議院の緊急集会を招集すれば足りる、特殊な事態には平常時から法令等の制定により濫用されない形式で完備しておくことができると答弁しています。
このように、憲法は、いかなるときも人権保障を十分なものとするため、国会の関与を必須としています。緊急集会も国民の代表である国会における審議と討論、採決を経ることを要求しています。したがって、国会の関与を否定し、憲法を停止する緊急事態条項とは全く性質が異なります。
また、議員任期の延長は、内閣あるいは多数党の専断を許し、国民の選挙権行使を通じた参政権を奪うもので、やはり憲法を停止するものです。緊急集会で対応できない場合があるので衆議院議員の任期延長をという議論がありますが、両者をリンクさせて議論すべきではありません。
緊急集会が衆議院解散の場合のみを規定していることから任期満了の場合に対応できないとの議論がありますが、任期満了による総選挙は過去に一例しかありません。その実施中に全国的に選挙ができなくなるようなケースを殊更想定し、憲法の基本原理を脅かすことがあってはなりません。
昨年、衆議院で意見を述べた高橋和之参考人は、極端な事例を出せば出すほど、権限をどこかに大幅に移譲する以外に解決の方法はなくなっていくと述べ、警鐘を鳴らしました。
結局、この議論は、緊急事態条項の創設に結び付くものと言わなければなりません。それでもなお、憲法上、国会の機能を維持できるようにすべきだという議論があります。しかし、国会の機能と言うなら、この間の国会軽視の政治こそただされなければなりません。安保三文書は、政府が従来憲法上保有できないとしてきた敵基地攻撃能力の保有を始め、専守防衛すら投げ捨てる大転換を閣議決定で決め、国会で問われても、憲法、国際法の範囲内、専守防衛に徹する等、中身のない答弁を繰り返しています。甚だしい立憲主義のじゅうりんです。
コロナ対策や物価高対策の予算は、巨額の予備費を積み上げ、国会審議を経ることなく執行する事態が常態化し、今年度予算案の採決当日に二兆円もの予備費支出を決めました。著しい財政民主主義の破壊です。
コロナ禍で野党が憲法五十三条に基づき臨時国会の召集を求めても応じようともしなかったことへの反省もなく、国会の機能維持を理由に改憲につながる議論を進めるなど言語道断であることを指摘し、発言とします。

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