山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

議員任期延長、緊急事態条項創設の改憲論「歴史の教訓ふまえぬ暴論」

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
法制局に伺います。
日本国憲法五十四条二項の緊急集会は、その制定経緯の当初は予定されていなかったものです。日本政府は、緊急事態において法律又は予算に代わる閣令を制定できるとする案を考えていましたが、総司令部との交渉の結果、緊急集会の規定が設けられました。
ここで日本政府側が念頭に置いていた閣令とは、明治憲法八条の緊急勅令や七十条の緊急財政処分といった政府の専断で処理できる仕組みと理解してよいでしょうか。

○参議院 法制局長(川崎政司君) お答えいたします。
先生御指摘のとおり、旧憲法の緊急勅令あるいは緊急財政処分が念頭にあったというふうに言われております。

○山添拓君 日本国憲法は、そうした仕組みを排除したことに大きな特徴があると思います。一七八九年のフランス人権宣言十六条、権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない全ての社会は憲法を有しないという規定は立憲主義を端的に表したものですが、日本国憲法は、いかなる緊急事態であっても国会の関与を求め、行政権の専断を許さないこととしています。
法制局に引き続き伺います。
権力分立を維持し、それにより国民の権利保障を全うしようとした、立憲主義を貫こうとするのがこの憲法だという理解でよいでしょうか。

○法制局長(川崎政司君) お答えいたします。
日本国憲法の審議過程で、政府は、旧憲法にあるような緊急措置を設けなかった理由として、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するために行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えたというような説明をしておりますので、先生の御指摘の点も考慮されたというふうに考えられます。

○山添拓君 自民党の二〇一二年日本国憲法改正草案はこれとは異なり、内閣総理大臣が緊急事態を宣言すれば、内閣ないし内閣総理大臣が法律と同一の効力を有する政令を制定でき、衆議院の解散権を制限し、両議院議員の任期や選挙期日の特例まで設ける。国会を内閣に従属させる、つまり立憲主義を一時的に停止し、かつ、いつまで続けるかも内閣次第であり、歯止めがありません。
法制局に伺います。
戦前、帝国議会で衆議院議員の任期が延長された事例とその理由を御説明ください。

○法制局長(川崎政司君) お答えいたします。
衆議院議員の任期につきましては、旧憲法では明文の規定は設けられておらず、衆議院議員選挙法により定められておりました。
その上で、お尋ねのありました旧憲法下における衆議院議員の任期延長の例としまして、昭和十六年二月に成立した衆議院議員の任期延長に関する法律により、衆議院議員の任期が昭和十七年四月二十九日まで一年延長されたことがあります。その理由については、帝国議会において、今日の緊迫した時局の下において総選挙を行うことは適当ではないなどといった説明がなされているところでございます。

○山添拓君 日中戦争が長期化する中、昭和十二年、一九三七年四月の総選挙で選ばれた議員の任期満了が目前に迫り、一九四一年、第二次近衛内閣は、選挙を行うと、挙国一致、防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について疑いを起こさしめぬとも限らぬという理由で任期を延長しました。そして、その間に真珠湾攻撃を行い、反戦の声を封じ、対アメリカ連合軍との無謀な戦争に突入し、延長後になされた一九四二年の総選挙はいわゆる翼賛選挙であります。
この教訓からも明らかなとおり、緊急事態であればなおさら民主政治を徹底し、国民の審判の機会を保障することこそ必要です。総選挙の間は憲法の規定どおり参議院の緊急集会が対応すれば足ります。
緊急事態の危機をあおり、憲法で定めた参議院の機能を否定するかのように、議員任期の延長、さらに緊急事態条項の創設など改憲論へ突き進もうとするのは、歴史の教訓を踏まえない暴論であり、断じて認められないことを指摘し、発言といたします。

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