2023年・第211通常国会
- 2023年5月11日
- 外交防衛委員会
政府、日本の人工衛星の米軍利用否定せず 「米国の宇宙軍事利用を補完し従属するもの」と批判
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
日米宇宙協力に関する枠組協定に関わって伺います。
まず、内閣府に伺います。
今年度、日本版GPSと言われる準天頂衛星六号機、七号機の打ち上げが予定されています。ここに米国宇宙軍のセンサーが搭載されるといいます。これは軍事目的にも利用され得るものですね。
○内閣府 宇宙開発戦略推進事務局審議官(坂口昭一郎君) お答えいたします。
御指摘の我が国が現在開発中の準天頂衛星の六号機及び七号機には米国の国防省が運用するセンサーを搭載します。
このセンサーにつきましては、スペースデブリの増加を始めとする宇宙空間の混雑化による衛星への衝突等のリスクに対応し、宇宙空間の安定利用を確保する観点から、スペースデブリ等の宇宙物体を宇宙空間から観測するためのものであります。
○山添拓君 いや、ですから、そうした観測の結果が米軍の軍事目的に使われるということも排除はされてないですね。
○政府参考人(坂口昭一郎君) その点につきましては、アメリカ側の一存で決まることでございます。
○山添拓君 米側の一存で決まるという御答弁でした。宇宙軍のセンサーですから、その収集した情報をどう使うかについて日本側で制限することは確かにできないだろうと思います。
我が党の井上哲士議員が二〇一六年三月、この準天頂衛星の七機体制への強化について予算委員会で質問した際、当時の安倍首相は、宇宙分野における日米防衛協力の強化は、米国の宇宙軍事利用の補完とか従属では全くない、あくまでも我が国の安全のためだなどと答弁しておりました。ところが、今や日本の準天頂衛星に米軍のセンサーを搭載する、これは補完、従属そのものだと言わなければなりません。
次の問題に行きます。
安保三文書の一つ、防衛力整備計画は、スタンドオフミサイルの運用などのため、宇宙領域の情報収集能力を一層強化、一層向上させるとし、具体的には、多数の小型人工衛星を一体的に運用して情報収集する衛星コンステレーションの整備や、極超音速滑空兵器、HGVを探知、追尾できる観測網の整備を目指すなどとしています。敵基地攻撃能力を運用するには、攻撃目標がどこにあるのか探知、追尾し、目標の割当てなどを行う必要があるからです。
一月の日米2プラス2では、こうした宇宙空間における情報収集について、日米間での機能保証、相互運用性及び運用協力を強化すると合意し、この四月に発表された宇宙基本計画案でも、米国との連携強化がうたわれています。
防衛省に伺います。
いかなる相互運用性、連携を検討しているのですか。
○防衛省 防衛政策局長(増田和夫君) お答え申し上げます。
我が国周辺における軍事活動が活発化する中、防衛省といたしましては、様々な手段を適切に活用しまして、隙のない情報収集体制を構築することが不可欠であると考えております。特に、衛星コンステレーションの活用はその基盤となるものでございまして、我が国独自による構築、米国等との連携強化、そして、民間衛星等の活用を含めました、この三つの柱のバランスを取りながら取組を推進してございます。
具体的に申し上げますと、国民の命と平和な暮らしを自らの力で守り抜くため、我が国自身で目標情報等を収集し、自ら主体的に判断することが極めて重要となります。これに加えまして、米国等との連携強化により、例えば極超音速ミサイルへの対応など、新たな脅威に対して効果的な対処が可能になるものと認識しております。
米国との具体的な連携につきましては現在検討中でございますが、このような認識の下、引き続き、同盟国である米国との取組を進めながら、我が国独自の衛星コンステレーション構築に向けて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
○山添拓君 現在検討中ということでしたが、相互運用性の強化、連携強化と言っている以上は、情報収集もその共有、情報の交換ということにもなるでしょうか、これも日米間で相互に連携して行っていこうと、こういうことを検討されているわけですね。
○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。
衛星コンステレーションやHGV探知・追尾能力の運用も含めまして、これについてはその情報の共有なども、情報の共有ということもあると思いますが、その具体的な連携につきましては現時点で検討中でございまして、また、その検討内容につきましては、相手国との関係もありますことから、この場で今お答えできないことを御理解いただきたいと思います。
○山添拓君 そこで、大臣に伺います。
政府は、従来、米軍への情報提供については、特定の国の武力行使を直接支援するために偵察行動など情報収集を行う場合、他国による武力の行使と一体化となり、一体となり、許されないケースがあると答弁してきました。
宇宙空間における相互運用性の強化、連携の強化は、日本側が収集した情報を米側と共有し、米側の攻撃を可能にするものです。武力の行使の一体化にならないという保証はどこにあるのでしょうか。
○防衛大臣(浜田靖一君) 情報共有と他国の武力の行使との一体化との関係については、従来から、防衛省・自衛隊がその所掌事務を遂行するため主体的な収集した情報を米軍に対して提供したとしても、それが一般的な情報交換の一環としての情報提供である限り、米軍による武力の行使との関係で問題を生ずるおそれはなく、憲法上の問題は生じないものと考えております。
お尋ねの米国との情報共有について、相手国との関係もあることから、その詳細については明らかにすることはできませんが、いずれにせよ、当該情報共有は、今御説明した、一般的な情報交換の一環として行うものであります。
○山添拓君 いや、これは一般的な情報交換にとどまらない可能性があるわけです。
昨年十月に公表された米国のミサイル防衛見直し、MDRにはこう書かれています。インド太平洋地域の同盟国やパートナー国と引き続き緊密に協力し、地上及び宇宙ベースのセンサーシステムを追求するよう奨励し、高度で一層多様化する空とミサイルの脅威に対処するため、補完的なIAMD技術や極超音速防衛などの能力の共同開発に投資する機会を模索し続ける。
このIAMDは、米国が世界の同盟国に求めている敵基地攻撃とミサイル迎撃を一体化したシステムです。要するに、アメリカが求めるシステム構築であり、いざというときには米軍の軍事行動に使うことが前提のものですね。ですから、そのために日本側が収集した情報を共有することになれば、米軍との武力の行使の一体化になるおそれはあり得ると思うんです。
その際にそうはならないという歯止めは、保証はどこにあるのかということを伺っているんです。相手の国があるから明らかにできないということではないだろうと、これは我が国の問題ですから。大臣、もう一度いかがでしょうか。
○政府参考人(増田和夫君) お答えを申し上げます。
先ほどの防衛大臣よりお答えしましたように、一般的な情報交換の一環としての情報提供である限り、米軍による武力の行使との関係で問題を生ずるおそれはなく、憲法上の問題は生じないと考えております。
その上で、委員御指摘の武力の行使との一体化との関係で申し上げますと、これを一般論として申し上げますと、従来から、例えば、特定の国の武力の行使を直接支援するために偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合のように、情報の提供に特定の行動が伴う場合には、例外的に他国の武力の行使と一体となると判断される可能性があると考えております。
ここで言う特定の行動とは、我が国が、ある国から特定の戦闘行為の実行を直接支援するために特定の情報を戦術的に取ってほしいと頼まれ、そのために情報収集活動を行うようなことを指すと解しておりまして、武力の行使の三要件を満たさない場合に我が国がそのような特定の行動を伴う情報提供を行うことは想定されておりません。
このような考え方を踏まえて、米国とのMDや、等における情報の共有の在り方について議論しているところでございます。
○山添拓君 従来そのように答弁をしてきたわけですが、今度のセンサー、シューターの一体化、IAMD構想の中での用い方というのは、そうして順を追ってということにはならないわけですね。センサーで探知し、追尾し、直ちにシューターで攻撃を仕掛ける、これを一体的に運用していこうとしているわけですから、特定の国の武力行使を直接支援するために日本の情報が使われ得るということだと思うんですよ。
ところが、今答弁ありましたけれども、この武力の行使の一体化の可能性について十分問題意識が示されているとは言えないと思うんです。この宇宙軍拡は重大な憲法違反をはらんでいると言わざるを得ないと思います。
極超音速兵器、HGVは、マッハ五以上で飛翔し、飛翔経路や着弾地点の予測が困難な上、飛翔中に複雑な機動が可能で、探知や迎撃は非常に困難だとされます。防衛研究所の今年三月の報告書によれば、米国やロシアは迎撃のためのシステム開発に着手し、中国は、構想段階とされますが、検討は始めたのではないかとされています。日本も技術実証を進めると言いますが、要するにこの開発競争に加わっていくということです。
一方で、この報告書を読みますと、極超音速兵器を配備した中国に対してアメリカが配備を進めれば両国間の軍事的緊張が高まるだけであり、外交や軍備管理に基づく政治的な解決策を模索すべきだなど、開発、配備競争を憂慮する声が紹介されております。
外務大臣に伺います。
極超音速兵器は、軍縮のための軍備管理交渉こそ進めるべきだと思います。日本政府としてどのように働きかけるおつもりですか。
○外務大臣(林芳正君) 我が国といたしましては、従来から、米ロを超えたより広範な国家、より広範な兵器システムを含む新たな軍備管理枠組みを構築していくことが重要と考えておりまして、特に米国、ロシア及び中国を含む関係国をしっかり巻き込んだ軍備管理・軍縮の取組が重要と考えております。
こうした中で、例えば、先月のG7長野県軽井沢外相会合において発出をいたしましたG7外相コミュニケで、中国による核戦力の拡大及びより高度な運搬手段の開発を懸念する旨表明した上で、中国に対しまして、戦略的リスク低減に関する米国との対話に速やかに関与するよう強く求めるなどしたところでございます。また、ロシアに対しても、核のリスクの低減に関する米ロ間の対話に戻るよう求めたところでございます。
引き続き、極超音速兵器の開発、配備状況を含め、各国の軍事動向を注視するとともに、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、中ロを巻き込む形で軍備管理、そして軍縮に係る取組を進めてまいりたいと考えております。
○山添拓君 中国、ロシアはもちろんですが、米国に対してもはっきり言うべきだと思います。既に宇宙空間を含む大軍拡競争になっております。日本がその探知・追尾能力の技術実証を進めれば、開発、配備の軍拡競争に拍車を掛けるだけであります。軍縮のための方針と行動こそ日本政府に求められていることを重ねて指摘したいと思います。
最後に、サイバー犯罪条約第二追加議定書について伺います。
協定六条は、国境を越えるサイバー犯罪に利用されているウェブサイトの開設者等を特定するためのドメイン名登録者情報について開示するよう外国事業者に対して直接要請できるようにするものです。従来は捜査共助として捜査機関同士のやり取りで行われてきたものです。
法務省に伺います。
サイバー犯罪条約締結後、サイバー犯罪に関する捜査共助の外国への要請件数、外国からの受託件数の実績について、その推移をお示しください。
○法務省 大臣官房審議官(保坂和人君) 捜査共助等につきまして、要請及び受託の年ごとの全体数は、これ把握して公表いたしておりますが、今お尋ねのサイバー犯罪という罪名の区分があるわけではございませんで、そのような観点からの統計は取っておらないため、その件数の推移についてお答えすることは困難でございます。
○山添拓君 いや、統計は取っていないかもしれませんが、調べようと思えば分かるわけですね。
○政府参考人(保坂和人君) 今委員御指摘のそのサイバー犯罪というものにつきまして、どのような種類、態様の犯罪がそれに当たるのかということにつきまして、必ずしも国際的に見ても国内的に見ても定見があるわけではございませんので、そうした件数を把握すること自体が困難であるために統計を取っておらないということでございます。
○山添拓君 ちょっと時間が来ましたので終わらなければならないんですが、これは捜査共助として行ってきた協力を迅速、円滑にするための協定だと伺っているわけです。したがって、現状の実績は本協定の立法事実と言うべきものです。それが示されないのはおかしいと思います。
我が党は、この協定、加入者情報についての直接協力は、通信の秘密の保護のため適用を留保していることなども踏まえて、新たな問題はないと判断して承認に賛成ですが、その必要性を示す実績については当委員会に明らかにされたいと思いますので、委員長、お願いします。
○委員長(阿達雅志君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。
○山添拓君 終わります。