山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第212臨時国会

COP28に提起するよう総理に要求 気候危機対策 軍隊が抜け穴/23年度補正予算案 反対討論

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
二〇二三年は世界の平均気温が観測史上最高となり、洪水や熱波、山火事など、各地で猛威を振るい、命を奪っています。
あしたからドバイで開かれるCOP28に総理も出席すると伺います。何が焦点でしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今回のCOP、COP28においては、このパリ協定の目標達成に向けた世界全体の気候変動対策の進捗評価を行う、いわゆるこのグローバルストックテーク、これが初めて取りまとめられる予定になっています。各国の対策を今後どのように進めていくかが焦点となり、そして脱炭素、経済成長、そして地政学的なエネルギー安全保障、この三つの挑戦への対応が問われる、こうした会議になると認識をしております。
我が国としても、二〇五〇年ネットゼロに向けた取組、世界の脱炭素に向けた貢献、発信することで、国際社会、主導していきたいと考えています。

○山添拓君 気温上昇を一・五度に抑えるのがパリ協定の国際的な目標です。ところが、国連気候変動枠組条約の事務局や国連環境計画、この間、現在の各国の目標をそのまま達成したとしても、これはおぼつかないのではないかという見通しを示しています。
環境大臣、どんな見通しが示されていますか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) お答え申し上げます。
気候変動枠組条約事務局がまとめた報告書によれば、各国の温室効果ガスの削減目標が達成された場合、二一〇〇年時点の世界全体の平均気温の上昇幅は二・一度から二・八度と予測してございます。
また、国連環境計画がまとめた報告書によれば、二一〇〇年時点の世界全体の平均気温の上昇幅は、現行政策を前提とした場合は三・〇度C、各国の削減目標が達成された場合は二・九度C、国際的な支援を条件として上積みされた削減目標が達成された場合は二・五度Cと予測してございます。

○山添拓君 つまり、現在の延長では一・五度目標を達成できないということです。総理もこれは認識されていますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 世界全体の状況については、そういったこの危機感、指摘されていると承知をしています。

○山添拓君 三月に発表されたIPCC、気候変動に関する政府間パネルの第六次評価報告書、一・五度に抑えるためにはいかなる排出削減が必要だと述べていますか。環境大臣。

○環境大臣(伊藤信太郎君) お答え申し上げます。
今年三月公表されたIPCC第六次評価報告書においては、工業化以前からの気温上昇を一・五度Cに抑えるためには、温室効果ガスの排出量を、二〇一九年に比較して、二〇三〇年までに四三%、二〇三五年までに六〇%、二〇四〇年までに六九%、二〇五〇年までに八四%、それぞれ削減することが必要とされてございます。さらに、二〇七〇年代には温室効果ガスの排出を正味ゼロにする必要があると記録されてございます。

○山添拓君 資料を御覧ください。
今のIPCC報告を受けて国連のグテーレス事務総長は、この報告書は気候の時限爆弾の信管を抜くための教本だと警鐘を鳴らしています。そして、先進国の指導者は二〇四〇年にできるだけ近い時期に排出量正味ゼロの実現を約束しなければならないと述べています。
総理、日本の目標は二〇五〇年正味ゼロです。これは前倒しが必要になりますね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) おっしゃるように、我が国は、二〇五〇年カーボンニュートラル、そして二〇三〇年度四六%削減、さらに五〇%と高みに向けた挑戦を続ける、こういった目標を掲げています。直近の二〇二一年度には約二〇%の削減達成し、着実に削減の実績、我が国は積み重ねてきております。
諸般の事情が許せば、私自身、これ、COP28出席したいと思っていますが、その際に、我が国の実績、これしっかりアピールするとともに、各国とも、掲げた目標、これ実現することが必要だ、これをまずしっかり働きかけることが重要であると思っています。
そして、御指摘は二〇四〇年の話でありますが、これ、二〇三五年以降の削減目標の在り方については二〇二五年までに国連に提出すること、これが奨励されています。我が国も、三年ごとの地球温暖化対策計画の見直しの検討や科学的知見を踏まえつつ、この二〇三五年以降の目標についても、是非、意欲的な目標を作成するべく検討していきたいと思っています。

○山添拓君 何か日本はかなり頑張っているような話なんですが、九〇年比で見れば八%しか減っていないわけですね。これ、ヨーロッパでは二〇%から四七%減っていますから、これは桁違いなんですよ。
COP28の焦点の一つが、先ほど総理からもあった全体的な進捗評価、グローバルストックテークが初めて実施されるということです。
環境大臣、グローバルストックテークとは何ですか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) お答え申し上げます。
グローバルストックテークとは、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べ一・五度Cに抑えるように努力するというパリ協定の目標達成に向け、世界全体の気候変動対策の進捗評価を行うものでございます。五年に一回評価を行うことがパリ協定で定めておりまして、COP28において初めてその成果物が取りまとめられる予定です。
我が国としては、このグローバルストックテークを契機として、世界の気候変動対策を加速していくことが重要だと考えてございます。

○山添拓君 九月に公表されたその議論の土台となる報告書は、一・五度を達成するための窓は急速に閉じられつつあるとしています。世界の排出量がパリ協定の目標と合致していないということなんですね。排出削減が進んでいないために、対策の加速が迫られているわけです。
そういう意味で、総理、改めて伺いますが、日本の目標についても見直しが必要になりますね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、各国とも、掲げた目標、これを実行することが何よりも重要だと思います。先ほど申し上げましたように、日本においては、目標を掲げ、その目標に向けて、今現状、順調に目標達成に向けて努力を続けています。各国ともそれぞれの目標実現に力を、より力を入れるべきだ、これをしっかり働きかけること、まずこれが基本でありますし、二〇三五年以降の目標についても、その現状を踏まえて、より意欲的な目標を掲げることが重要であると考えています。

○山添拓君 その二〇三五年に向けた目標は二〇二五年のCOP30で確認することになりますが、これは遅くとも九か月前までに提出が必要とされます。ですから、直ちに議論を始める必要があるわけですね。だから、各国の状況を見守ってと悠長にしているわけにはいかないと思うんです。
グテーレス事務総長がもう一つ強調しているのは、先進国では二〇三〇年までに石炭火力を廃止せよということです。
総理に伺います。主要七か国で石炭火力発電からの撤退期限を決めていないのは日本だけです。COP28に向けて決めますね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 期限を決めていないではないかという御指摘でありますが、この議論につきましては、エネルギー事情は各国とも千差万別であり、各国の事情に応じて多様な道筋の下でネットゼロという共通のゴールを目指す方針、これを確認し、COP28においても確認してまいります。
これ、石炭火力については、安定供給を大前提にできる限り発電比率を引き下げていく方針であり、まずは二〇三〇年に向けて非効率的な石炭火力のフェードアウトを着実に進めるとともに、二〇五〇年に向けて、水素、アンモニア、CCUS等を活用することで脱炭素型の火力発電に置き換える取組を引き続き推進していきます。
こうした各国の多様な事情に応ずるというのは、特にアジアの事情等を考えますときに大変重要な姿勢であるということをG7の場等においても我が国として主張してきております。
こういった考え方に応じて、石炭火力についても対応を進めていきたいと考えています。

○山添拓君 いや、撤退の期限はこの先も設けないつもりですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 必要な供給量が必ずしも十分に確保されていない段階で直ちに急激な石炭火力の抑制策を講ずることになれば、電力の安定供給に支障を及ぼすことになりかねません。
現時点で廃止の期限区切ることは想定しておりませんが、二〇五〇年カーボンニュートラル、この大きな目標は共有をしています。安定供給を大前提に発電比率を引き下げていく、こうした取組は続けてまいります。

○山添拓君 それでは私はまた化石賞を受賞しかねないと思いますね。
そして、二〇五〇年とおっしゃった。それを二〇四〇年に近い時期に前倒しせよというのが国際社会から求められているわけですよ。COP28では再エネ三倍化も議論されます。石炭火力への固執はもうやめるべきです。
ところで、総理に伺いますが、単一の組織で世界で最も多くの温室効果ガスを排出しているのは誰か御存じでしょうか。

○委員長(末松信介君) 環境大臣。(発言する者あり)じゃ、岸田内閣総理大臣。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 承知しておりません。

○山添拓君 これは米軍なんですね。
環境大臣に伺います。軍隊の温室効果ガス排出量、これは地球全体の何%でしょうか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 御質問でございますけれども、軍事、防衛に関する温室効果ガスの排出量については、各国による国連への排出量報告の内容を定めたIPCCガイドラインにおいて、その他の項目の内数として計上することとなってございます。このため、御指摘の温室効果ガスの排出量及びその全体に占める割合については把握してございません。

○山添拓君 五・五%を占めるという見積りがあります。米軍の活動だけでもスイスやニュージーランド一か国分を超えます。アメリカの軍用機から排出されるCO2は乗用車六百万台分といいます。
軍隊の排出量の報告や削減目標の設定、なぜ義務付けられていないんでしょうか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 今の答えのとおりでございますけれども、IPCCの報告書によれば、そういう取決めになっているということでございます。
世界全体のことでございますか、日本についてでございますか。(発言する者あり)世界全体。それは、IPCCの議論の中でそのような取決めがなされたものと承知しております。

○山添拓君 九七年の京都議定書の段階でも議論があったはずです。御存じないでしょうか。

○国務大臣(伊藤信太郎君) 現在、手元にその詳細な資料がないので、お答えはちょっと差し控えさせていただきます。

○山添拓君 では、調べて委員会に報告してください。

○委員長(末松信介君) じゃ、理事会で協議をいたします。

○山添拓君 国家安全保障が損なわれかねないからだと、こう言われているわけですが、防衛省は二〇三〇年までに一三年比五〇%削減を目標としています。ところが、兵器、防衛装備品は除外されています。これはなぜですか。

○国務大臣(木原稔君) 委員御指摘のとおり、防衛省につきましても、温室効果ガスの総排出量について、二〇一三年度を基準年度として、二〇三〇年度までに五〇%削減することを目標としているところです。ただし、防衛装備品の運用に伴う温室効果ガスについては、国の安全の確保に直結する特殊な事業であることを踏まえて計画の対象外とされております。
一方で、持続可能な航空燃料、いわゆるSAFの政府専用機や戦闘機への使用の実証であったり、あるいは戦闘車両用のハイブリッドシステムの研究、そういった取組を進めているところであり、できる限り温室効果ガスの削減に努めてまいる所存です。

○山添拓君 最もエネルギーを消費する作戦、演習で使う兵器、これが言わば聖域となっているわけですね。
資料二枚目御覧ください、総理。軍事支出と温室効果ガスの排出量には相関関係があります。世界の軍事費上位十か国のうち七か国、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス、日本、ドイツ、排出量上位十か国にも入っています。ところが、日本でも世界でも、軍隊は気候危機対策の大穴なんですね。
COP28で総理から問題提起すべきじゃありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のこの軍隊の排出量については、国の安全の確保に直結する、直結する特殊な事情があることを踏まえてこの対象外になっているという議論があることは承知しておりますが、いずれにせよ、そのCOPの枠組みの中で各国の総排出量、これをしっかりと管理する、こういった議論が進められているわけですから、総枠を制限する、その枠組みの中で、御指摘の点についてもその縮小を考えていく、これがCOP28の基本的な考え方であると認識をしております。

○山添拓君 いや、ですから、その総枠の対象外になっているんですよ。このままでいいのかという問題提起です。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今のこの気候変動問題に関して、それぞれ各国とも総量における目標を実行することが重要である、なおかつ、その目標についてもより前向きなものが求められている、こういった議論であると思います。それを確認するCOP28、そういった会議であると思います。これをこの会議の目的に貢献することがまず第一であると考えます。

○山添拓君 全然お答えになっていないんですが。ウクライナで、あるいはガザで破壊が続き、そして日本を始め大軍拡が進められ、武器の輸出も拡大されています。それらが気候危機対策の抜け穴のままであってよいはずがないと思います。総理がCOP28で提起すべきだと、このことを申し上げて、質問を終わります。

○委員長(末松信介君) 以上で山添拓君の質疑は終了いたしました。(拍手)

―――

○山添拓君 日本共産党を代表し、政府提出の二〇二三年度補正予算案に反対の討論を行います。
本補正予算案に反対する最大の理由は、物価高騰にあえぐ暮らしの実情に全く向き合っていないからにほかなりません。
経済対策の目玉とされる減税、給付は一回限りです。半年先となる減税の後には大軍拡への増税が待ち構え、政権の人気取りにすぎないと多くの国民に見透かされています。
減税するなら、消費税減税を今こそ決断すべきです。買物のたびに減税効果を実感でき、消費に結び付き、GDP押し上げ効果も見込まれます。社会保障の財源だから下げないと、はなから除外するのではなく、消費税減税を求める六割近い国民の声を聞くべきです。
実質賃金は十八か月連続でマイナスとなりました。岸田政権の下で賃金が下がってきたという現実を直視すべきであり、従来の政策の延長では構造的な賃上げにつながりません。
日本共産党は、異常に膨れ上がった大企業の内部留保に時限的に課税して、中小企業を支援し、最低賃金を時給千五百円を目指し引き上げる案を提起してきました。自民党の中からも内部留保課税で賃上げ支援をという案が出ており、踏み出すべきです。
本補正予算案による介護や障害福祉の処遇改善は僅か月六千円にすぎず、一桁足りません。
審議を通じて、公務職場の非正規労働者の処遇改善に後ろ向きな政府の姿勢があらわになりました。専門性があり、知識や経験を持ちながら、細切れ雇用で低賃金、その下で男女賃金格差も深刻です。公務の職場から大幅な賃上げを進め、恒常的な仕事は正規を当たり前にするべきです。
物価対策と無縁で、民意に反する税金の無駄遣いが多数盛り込まれています。
大阪・関西万博の建設費に七百五十億円、機運醸成に十億円を計上していますが、多額の税金をつぎ込むことに多くの国民が納得していません。中止を決断すべきです。
保険証を廃止し、マイナ保険証の普及を進めるため、利用率が上がった医療機関の支援に八百八十七億円も計上していますが、マイナ保険証の強制こそやめるべきです。
半導体企業など特定企業への巨額の補助金を可能にする多数の基金は、歯止めなき国費投入で大企業支援を進めるこれまでと同じ大企業優遇の政治です。
過去最大八千百三十億円に上る軍事費まで潜り込ませているのは異常と言うほかありません。スタンドオフミサイルを始め、憲法違反の敵基地攻撃能力保有を前倒しで進め、辺野古を始め基地強化を加速させようとするもので、言語道断です。
多額の予備費も国会審議を回避する手段に利用されており、財政民主主義に反します。
自民党主要五派閥の政治資金パーティーをめぐる疑惑が大問題となっています。収支報告書の訂正はしんぶん赤旗が指摘した部分にとどまり、表に出なければ隠しておこうという姿勢があらわです。企業が購入した分も含め、徹底的に明らかにすべきです。政治資金パーティーは形を変えた企業・団体献金であり、その対価性は形骸化しています。政治をゆがめる企業・団体献金は全面的に禁止すべきです。
岸田総理の政治資金パーティーの利益率は九割に上ります。自らの政治資金集めに精を出す総理が国民が求める消費税減税には耳を貸さない、その政治姿勢を根本的に改めるべきということを指摘し、討論とします。(拍手)

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