2023年・第212臨時国会
- 2023年12月5日
- 外交防衛委員会
国際法違反を認めよ イスラエル軍攻撃/パーティー券不正疑惑 安倍派政務三役3人質す「答えない人 疑惑もたれても仕方ない」/CPTPP英国加入議定書 反対討論
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
議題にありますCPTPPは、日欧EPA、日米FTA、RCEPなどと並んで、自由貿易を守るためと言い、安倍政権では成長戦略の柱に据えられたものです。
今日議論を伺っていますと、まあ何かこれを拡大し進めていくことはバラ色のような描き方をされているわけですが、しかし、こうした自由貿易拡大一辺倒では、大企業の輸出や海外投資が増えても、国内では農業が衰退し、格差と貧困が拡大し、食料自給率も低下をいたします。現に、国民の暮らしと経済は、停滞、衰退を余儀なくされてきました。
外務大臣はその現実についてどう認識されているでしょうか。
○外務大臣(上川陽子君) 御質問いただきましたこのCPTPPに関する状況でございますが、まず、経済連携協定、この推進におきましては、このルールに基づく自由で公正な経済秩序の構築及びこれに基づく地域や世界の安定と繁栄の確保に資する取組として、政府としては、女性、中小零細企業を含みます全ての人に対する公正な経済機会へのアクセスの確保は重要と考えて臨んでいるところであります。
このCPTPPにおきましても、中小零細企業の活動に関する規定、また貿易や投資の促進に当たって労働者の保護を確保するための規定、これを置いておりまして、公正な経済秩序の構築をも目指す協定となっているところでございます。
こうした点につきましてはこのCPTPPの参加国の間で共有をされているところでございまして、まさにこの七月に閣僚共同声明が発出されましたけれども、貿易の恩恵が女性、先住民、中小零細企業等の社会全体における多様な主体に共有されることの重要性につきましては改めて確認をしてきているところでございます。
○山添拓君 現実はそうなっていないではないかということを申し上げたわけなんですね。
そして、そのCPTPPのルールを世界にも拡大していくというわけですが、関税の原則撤廃、農産物の輸入完全自由化など、多国籍企業優先の際限のない市場開放を国際ルールとして押し付け、これは各国の経済主権や食料主権を一層侵害することになるものだと、ですから許されないということを指摘しておきたいと思います。
今日は、パレスチナ・ガザ地区での問題を伺いたいと思います。
ハマスとイスラエル軍との戦闘が再開しました。資料もお配りしております。昨日は、直近二十四時間で七百人以上が殺害されたとも報じられました。ネタニヤフ首相は、我々は全ての目標を達成するまで戦争を継続する、地上作戦なしにそれらの目的を果たすことは不可能だと述べて、南部への地上侵攻を始めました。北部から避難者が押し寄せている中、南部の中心都市ハンユニスでは、激しい爆撃が行われ、病院に負傷者があふれていると報じられています。人道危機が文字どおり再開されてしまったわけです。先ほどもありましたが、岸田総理がヘルツォグ大統領と会談し、ガザ地区の人道状況の改善を求めた直後のことです。
大臣に伺いますが、やはり一時的な戦闘休止ではこの人道危機を止められないということではないですか。
○国務大臣(上川陽子君) 人質等をめぐりますこのイスラエルとハマス間の取引につきましては、戦闘休止の更なる延長について合意に至らないまま期限を経過をいたし、また、イスラエル国防軍が南部を含みますガザ地区における戦闘を再開したものと承知をしております。我が国といたしましても、現地の情勢を深刻な懸念を持って注視をしている状況でございます。
戦闘休止、人質の解放及び人道支援物資のガザ地区への搬入増大を歓迎をしていたところでございますが、戦闘が再開されたことは誠に残念と考えております。戦闘再開により、現地の危機的な人道状況が更に深刻化することを強く憂慮しているところであります。また、ハマス等により誘拐され長期にわたって拘束されている方々も極めて厳しい状況に置かれている状況であります。
こうしたことから、合意への復帰及び事態の早期鎮静化が重要でありまして、再度の戦闘休止に向けた関係者への働きかけなどを通じまして、我が国としても外交努力を行っている状況であります。もちろん、全ての当事者が国際人道法を含む国際法を遵守しなければならず、実際の軍事行動におきましては、民間人の被害を防ぐべく、実施可能なあらゆる措置を講じる必要があると考えているところであります。
全ての当事者に国際人道法を含みます国際法の遵守、先般我が国も賛成して採択されました安保理決議に基づきまして誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善及びそれに資する戦闘休止の合意への復帰、事態の早期鎮静化に向けまして、外交努力を粘り強くあらゆる機会を通じて積極的に続けてまいります。
○山添拓君 懸念、残念、憂慮とおっしゃるんですけど、こういう事態を迎えてなお、即時停戦を求めていくというお考えはありませんか。
○国務大臣(上川陽子君) 今申し上げたとおりでございまして、まさに今のような状況を大変憂えているところでありますが、合意への復帰と事態の早期鎮静化が何よりも重要でありまして、再度の戦闘休止に向けた関係者への働きかけなどを通じまして、外交努力を更に拍車を掛けてまいりたいと考えているところでございます。
○山添拓君 なおもおっしゃらないんですね。
総理は、十一月二十八日の予算委員会で、即時停戦を求めるべきだと問われて、事態の鎮静化には関係国との協力、意思疎通、連帯が何より重要と述べました。
大臣、人道危機の回避よりも優先するべき関係国との連携というのは一体何ですか。
○国務大臣(上川陽子君) 今の状況をいかに改善するか、この今の状況というのはまさに人道危機の状況ということでございます。その意味で、今次事案の経緯やまた複雑な背景事情がございますので、そうしたことを十分に鑑みまして、停戦に至るまでは引き続き一つ一つの成果を積み重ねていく必要があると考えております。その意味で、人道目的の戦闘休止と人道支援活動が可能な環境の確保に向けましてこれまで尽力をしてきたところでございます。
私自身、議長として取りまとめましたG7の外相声明、これにおきましても、また安保理決議の採択に向けましても、イスラエル、パレスチナ及びヨルダン、訪問した機会、また多くの電話会談等も実施してきておりますけれども、粘り強く、こうした動きに対しまして目的のために国際社会ともよく協力しながら粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。
○山添拓君 その戦闘が再開してしまったということをどう受け止めるかということなんですよね。関係国との連携ということを総理はおっしゃっていますが、これはアメリカの顔色をうかがうのではなく、即時停戦を求めるべきだと改めて述べたいと思います。
大臣は、この間、イスラエル軍による国際人道法違反は状況が確認できていないと繰り返してきました。この違反の有無を確認しようという意思、意向はおありなんでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) ガザ地区におきましては、多数の子供たち、また女性、高齢者を含みます死傷者が発生しておりまして、こうした危機的な人道状況につきましては、今に至るまで、深刻な懸念を持って注視をしつつ、外交努力を重ねてきたところでございます。
我が国といたしましては、イスラエルがハマスの攻撃を受けまして、国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有すると認識をしているところでありますが、同時に、これまでもイスラエルに対しまして、私自身も先般のイスラエル訪問の機会を含めまして、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、国際人道法を含む国際法に従った対応等を直接要請してきてまいりました。
また、十二月一日にドバイで実施されました日・イスラエル首脳会談におきましても、岸田総理からヘルツォグ大統領に対しまして、こうした日本の立場、伝達の上で、ガザ地区の人道状況の改善について改めて直接要求をしたところでございます。
○委員長(北村経夫君) 大臣、答弁を簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(上川陽子君) 状況は予断を許しませんが、人道状況の改善及びそれに資する戦闘休止の合意への復帰、事態の早期に向けた外交努力、粘り強く積極的に考えております。
○山添拓君 全然質問をお聞きになっていないんじゃないでしょうか。
資料二枚目、御覧ください。
いや、私は、人道法違反があるかどうか状況は確認できていないとこの委員会でも何度も繰り返されたと、ですから、確認できていないのなら確認するつもりがおありかということを聞いているんですね。
一九四九年のジュネーブ条約共通一条をお示ししています。これは、締約国の義務として国際人道法を尊重し、かつ、その尊重を確保することを約束するとしています。これは、締約国自身が国際人道法を尊重する、当然ですけれども、それだけではなくて、ある国が国際人道法を侵害した場合には、その侵害をやめさせる、条約を尊重する態度に引き戻すよう行動する義務を負っていると、こういうことですね、外務省。
○外務省 大臣官房参事官(藤本健太郎君) お答え申し上げます。
ジュネーブ諸条約共通第一条は、「締約国は、すべての場合において、この条約を尊重し、且つ、この条約の尊重を確保することを約束する。」と規定しております。ジュネーブ諸条約に限らず、条約は当事国についてその効力が生じた時点から当該当事国を拘束し、当事国はそれを誠実に遵守しなければならないところ、ジュネーブ諸条約共通第一条が規定するこの条約を尊重することを約束するというのは、まさにこの点を確認した規定とされております。
これに加え、ジュネーブ諸条約共通第一条においては、締約国は、この条約の尊重を確保しなければならないとされてございます。これは、この条約の国内的な履行のために必要な具体的な措置をとることを締約国に義務付けるとともに、他の締約国が国際人道法を遵守するよう努めることも含むと解されてございます。
○山添拓君 そういうことなんですよ。ですから、法的評価が難しいといって傍観者でいれば、それ自体が日本のジュネーブ条約違反を構成し得るということになるわけです。
再開後も、学校や難民キャンプに攻撃が加えられています。北部から南部へ、南部から更に南へ、住民に退避を呼びかけ、移動を強制しています。いずれも許されない行為です。イスラエルが国際人道法を尊重しているのか、侵害しているのか、政府としても情報収集し、確認をすべきだと思うんですね。
総理や外務大臣は、病院への攻撃についてさえ国際人道法違反と批判をしません。
資料の三枚目を御覧ください。これは、紛争下の医療に関する二〇一六年の国連安保理決議二二八六号です。紛争当事者による医療施設や医療スタッフへの攻撃を非難し、国際人道法、国際人権法及び国際人道法を含む国際法上の義務の遵守などを要請したものです。
外務省に伺います。これはどの国が起草したものですか。
○政府参考人(藤本健太郎君) お答え申し上げます。
紛争下の医療に関する国連安保理決議第二二八六号は、二〇一六年五月三日に、我が国、エジプト、ニュージーランド、スペイン、ウルグアイの五か国が共同提案国として安保理に提出し、全会一致で採択された決議でございます。
○山添拓君 日本が起草者の一国なんですね。
大臣に伺いますけれども、イスラエル軍の病院への攻撃、救急車への攻撃、傷病者や妊婦、子供たちへの攻撃、この安保理決議違反ではありませんか。
○国務大臣(上川陽子君) 病院や難民キャンプその他の施設でございますが、いかなる場合におきましても国際人道法の基本的な規範守らなければならないということは言うまでもございません。子供を含む無辜の民間人を巻き込む、無用に巻き込むような攻撃につきましては、国際人道法の基本的な原則に反するものであり、正当化できないものと考えております。
イスラエル軍の個別具体の行動につきましては、攻撃に当たっていかなる情報に基づいて判断が行われたのか等、判断に当たって必要な事実関係が不明でございまして、我が国として法的評価を行うということについては差し控えさせていただきたいと存じます。
○山添拓君 いや、私は、この安保理決議、日本も起草者の一部を構成したこの安保理決議との関係で聞いているんですよ。いかがですか、大臣。
○政府参考人(藤本健太郎君) 安保理決議との関係につきましては、全ての国は国連安保理決議を守っていく必要があるということはそのとおりでございます。その上で申し上げれば、いかなる場合においても、この安保理決議の内容も踏まえて、国連、国際人道法の基本的な規範は守らなければならず、無辜の民間人を無用に巻き込むような行動は国際人道法の基本的な原則に反するものであって、正当化できないものと考えます。
ただ、先ほど大臣から申し上げましたとおり、イスラエル軍の個別具体の行動については、我が国として法的評価を行うことは差し控えたいと考えております。
○山添拓君 いや、その答弁は、自らせっかく起草者になって作り上げた安保理決議について、効力がないと言っているようなものですよ。せっかく作ったものについても法的評価できないんだと。じゃ、何のために決議をしたんですか。この安保理決議は岸田総理が外務大臣時代のものです。日本政府の態度が厳しく問われるということを指摘したいと思います。
最後の時間で、自民党派閥の政治資金パーティー券の収入をめぐる問題を伺います。
最大派閥の安倍派、清和政策研究会が巨額の裏金作りをしていた疑惑が報じられています。所属議員にキックバックされた資金の総額、五年で数億円、キックバックを受けていた議員、数十人規模に上るとされます。
安倍派に所属する堀井外務副大臣、宮澤防衛副大臣、松本防衛大臣政務官に伺います。パーティー券を販売した実績、ノルマの有無、ノルマを超えて販売した場合にどうされていたのか、それぞれお答えください。
○外務副大臣(堀井巌君) お答え申し上げます。
個々の政治団体や個人の政治活動について政府の立場としてお答えすることは差し控えたいと存じます。
○防衛副大臣(宮澤博行君) 防衛副大臣として御答弁をさせていただきたいと思います。
個々の政治団体ですとか個人の政治活動に関するお尋ねについてですけれども、政府の立場でございますのでお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
○防衛大臣政務官(松本尚君) 防衛大臣政務官としてお答えいたします。
個々の政治団体や個人の政治活動に関するお尋ねについては、政府の立場としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
いずれにせよ、政治団体の責任において必要な対応がなされるものと考えております。
○山添拓君 いや、副大臣や政務官としての資質に関わるから伺っているんですよ。
宮下農水大臣や鈴木総務大臣のように、自分はやっていないと答えている大臣もおられますよ、政府の立場で。自分はやっていないという人は、やっていないと答えているんですよ。そうすると、答えていない方は疑念を持たれても仕方ないんじゃありませんか。
お三方、それぞれどうですか、もう一度。
○副大臣(堀井巌君) 本件は、報道によれば刑事告発をされている件でもあるというふうに存じております。政府の立場としてお答えすることは差し控えたいと存じます。
○副大臣(宮澤博行君) これから事実関係を精査するものと承知しておりますので、それに基づいて適切に対応をしてまいりたいと思っております。
○大臣政務官(松本尚君) 同じ答えになって大変恐縮ですけれども、今後、事実関係が確認されるということを承知しておりますので、その上で適切に対応されるものと認識しております。
○山添拓君 いや、宮澤副大臣、これから精査されると今答弁されましたが、つまり、今、自分の派閥では一切ないというふうに断言できるわけではないということですか。
○副大臣(宮澤博行君) 先ほど申し上げましたとおり、政治団体において適切に対応をされるものと認識しております。
以上です。
○山添拓君 安倍派の事務総長である高木国対委員長は、昨日、慎重に事実関係を確認し適切に対応していきたいと、まあ違法行為がないと断言されなかったわけですが、同時に、しっかり説明責任を果たしていくことが必要と述べていました。全然果たしておられないと思います。
政務三役は、安倍派に限らず、説明責任を果たすべきです。それぞれ調査の上で委員会に報告するよう求めて、質問を終わります。
委員長、お願いします。
○委員長(北村経夫君) ただいまの件につきましては、後刻理事会にて協議をいたします。
—
○山添拓君 日本共産党を代表し、CPTPPへの英国の加入議定書に反対の討論を行います。
本議定書は、二〇一八年に米国抜きの十一か国でCPTPPが発効して以来初めて新規加入を認めるものであり、英国の参加によって、環太平洋パートナーシップと銘打ちながら、アジア太平洋地域を中心としていた自由貿易圏が欧州にも広がることになります。
政府は、CPTPPのルールを世界に拡大していくと言い、議長国として英国の加入プロセスを主導してきました。しかし、CPTPP体制の拡大は、関税の原則撤廃や農産物の輸入自由化など、多国籍企業を優先する際限のない市場開放を国際ルールとして押し付けるものであり、各国の経済主権や食料主権を一層侵害します。我が党は、CPTPPそのものに反対であり、その拡大も容認できません。
政府は、CPTPP発効後、日欧EPA、日米FTAなど、成長戦略の柱として自由貿易協定を次々強行してきました。日英EPAでは、米を含む全ての農産品の関税を発効五年後に見直すこととするなど、日欧EPA以上に譲歩してきました。
その日英EPAでは、ブルーチーズや小麦粉調製品など一部農産品について、EUの輸入枠に利用残が生じた場合に限り、その範囲内で英国に特恵税率を適用するとしていましたが、本議定書では、他の締約国と同じく、CPTPP枠の利用を認めています。英国の輸入枠は事実上拡大し、乳製品などの対日輸出を強めようとしています。
一方で食料安全保障を声高に主張しながら、他方では食料自給率の向上に背を向け、国内農業が未曽有の危機に直面して多くの農業従事者が経営破綻や離農に追い込まれる中、際限のない農産物の輸入自由化に突き進んでいくのは断じて許されません。自由貿易拡大一辺倒では、大企業の輸出や海外での投資が増えても、国内では農業が衰退し、貧困と格差が拡大し、食料自給率も低迷します。現に、国民の暮らしと経済は、停滞、衰退を余儀なくされてきました。その反省もなく、多国籍企業の利益優先で市場開放を進めるのは、政治の役割を履き違えており、転換すべきです。
以上を指摘し、本議定書に対する反対討論とします。