山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第212臨時国会

憲法破壊を重ね、平和も暮らしも脅かす政治に改憲語る資格ない

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
岸田首相は、今国会の所信表明演説で、改憲は先送りできない重要な課題と強調し、改憲発議に向けた手続を進めるための条文案の具体化にまで言及し、議論の加速を求めました。国会でお決めいただくことと断りながら繰り返し改憲論議をあおるのは、憲法尊重擁護義務を踏みにじるもので、そもそも許されません。
月刊誌のインタビューで岸田首相は、自衛隊明記は安倍元総理が提起された重要な論点ですと語り、九条への自衛隊明記を焦点に据えています。昨年十二月に閣議決定した安保三文書に基づき空前の大軍拡を進める自衛隊を憲法に位置付けようとするものです。
敵基地攻撃能力の名で導入が狙われるのは、射程三千キロ、マッハ五で飛ぶ極超音速ミサイルなど、他国領土の奥深くに攻め込む長射程ミサイルです。専守防衛と相入れず、他国に脅威を与える軍事大国となることは明瞭です。日米一体化の下、自衛隊が米軍の先制攻撃に集団的自衛権で参戦することになりかねず、その結果は日本への報復攻撃による国土の焦土化です。歴代政府の見解を説明もなく百八十度転換し、敵基地攻撃能力保有に突き進むのは、立憲主義を破壊する暴挙と言うほかありません。
戦闘機など殺傷兵器の輸出解禁の議論が秘密裏に進められています。国際紛争を助長する武器輸出は行わないとしてきた日本国憲法の下での平和主義を投げ捨て、死の商人国家へ堕落することは断じて許されません。
パレスチナ・ガザ地区でイスラエル軍が戦闘を再開し、学校や難民キャンプを攻撃しています。北部から南部へ、南部から更に南へ、住民に退避勧告を出し、移動を強制しています。病院は人であふれ、国連のグテーレス事務総長はガザに安全なところはどこにもないと訴えています。ジェノサイド、集団殺害を絶対に許してはなりません。
ハマスが人質を解放すべきことは言うまでもありません。同時に、日本政府がイスラエル軍の国際人道法違反を批判せず即時停戦をいまだに求めようともしないのは、人道危機の回避よりアメリカへの追随を優先する異常な姿です。戦闘の一時的休止では深刻な人道状況を打開できません。攻撃の中止とともに、即時停戦のための協議を直ちに求めるべきです。
「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」と掲げる憲法を持つ日本こそ、積極的な役割を果たすべきです。国際社会の現実は、武力では平和を築けないことを示しています。安全保障といえば軍事的抑止力という呪縛から抜け出すべきです。
日本共産党は、ASEANと協力して、東アジアを戦争の心配のない地域にする外交ビジョンを掲げてきました。排他的なブロック政治ではなく、地域の全ての国を包摂する平和の枠組みで対話と協力の地域をつくる。東アジアでは現に、東南アジアでは現にその努力が重ねられています。憲法九条を生かした外交で、平和への展望を開くべきです。政治は今、物価高騰にあえぐ暮らしと経済を支え、世界でも日本でも戦争を起こさせないために力を尽くすべきです。
戸籍上の性別変更に当たり、生殖不能とする手術要件を課す現行法を違憲とする最高裁判決が出されました。生活保護費の基準引下げをめぐり、決定の取消しと国家賠償を認める初の高裁判決が出されています。憲法が保障する自由と権利を充実したものとするために、政治は自らの姿勢を改めるべきです。ましてや、憲法破壊を重ね、平和も暮らしも脅かす大軍拡を進め、憲法の求める外交に背を向ける政治に改憲を語る資格などありません。
十月のNHK世論調査で、岸田内閣が最優先で取り組むべきこととして憲法改正を挙げた人は四%にすぎません。国民の多くが改憲を政治の優先課題として求めていません。先ほどの自民党からの発言では、最初に挙げられた合区解消問題ですら、まずは改革協での議論の進展を見てはどうかというものでした。
今、憲法審査会を動かすべきではないということを改めて強調し、意見といたします。

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