2024年・第213通常国会
- 2024年2月21日
- 国民生活経済地方調査会
男女賃金格差など直視を 「ジェンダー平等と働き方」参考人質疑
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
まず、竹信参考人に伺いたいと思います。
女性の賃上げのために社会的規制の強化が必要と指摘をされていました。それ、私も同感です。とりわけ、この賃金格差の解消という意味では、その一つのステップとして格差の透明化ということが必要かと思います。
昨年、女性活躍推進法に基づく公表も始まり、政府はまだ十分分析しているとは言えない状況だと思いますが、分かってきたことも幾つかあるのではないかと思います。
この公表の義務付けが始まった下で言えることと、開示は開示で格差が明らかになるというだけですから、その解消のためには更にステップが必要かと思うのですが、その辺りについて御意見を伺えればと思います。
○参考人 和光大学名誉教授・ジャーナリスト(竹信三恵子君) 開示されたのは、義務化は良かったともちろん思っています。
ただ、余りにも項目等々についても弱いですし、それから、先ほどEUの賃金透明性指令の例を引きましたけれども、どういう場合になると駄目なのかとか、何をまずいと、駄目だというふうに言うのかとかいう規定がちゃんとないですし、それがないからもし違反した場合の罰則もないわけで、強行規定みたいな形にどうしてもならないわけですよね。
そうすると、開示しておけばいいのかなという、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうような形になってしまうと、実質的に改善につながらないケースもたくさん出てくるというのが日本の在り方です。それが柔らかくていいんだと見る方もいらっしゃるかもしれませんが、先ほど述べたように、こんなに差があって、しかもそういう格差がある、しかも理由のない差別、差別と言ってもいいようなものがある社会で、やっぱりもっと、これやっちゃ駄目なんだというのが見えるような形の開示のさせ方と、それから罰則規定がないとうまく機能しないというふうに考えています。
○山添拓君 強制力、実効性というのが私も必要だと思います。同時に、その格差の解消をどのように図っていくかというのは、労使間の交渉や協議によってしか進まないということもあるかと思うんですね。
ですので、どのような制度設計をすればこの格差の透明化から更に解消というふうに進むかという点も伺いたいと思います。
○参考人(竹信三恵子君) ありがとうございます。
私ちょっと考えているのは、とにかく、もっと非常にミクロな感じになってしまいますけど、女性の賃金上がらないっていうのの一つに、先ほど保育士、看護師、それから介護士ですよね、たくさん進出していけるはずの、しかもニーズも極めて高い、スキルも高い、そういう働き方が余りにもそれに比して安過ぎる。それどころか、介護問題では、訪問介護なのに移動時間をカバーするだけの介護報酬はカウントされていないのではないかということが裁判でも明らかになったりしています。
とすれば、これは、業種別に最低賃金つくった方がいいんじゃないかと思っています。最低賃金って、やっぱりこういう状況で、労使関係の力が弱いときに数少ない強行的な規定じゃないですか。最賃上がれば必ず賃金って上がりますよね、どんな人でも。それが、そういった非常に重要なお仕事に就いてこんなに低いってことを是正するためには、業種別でもう少し高いレベルの、スキルに見合った、せめてその資格を持っているならこれぐらいというぐらいの最低賃金を、制度をつくっていくことが非常に重要で、それが切り札になるかなというふうに思っています。
○山添拓君 ありがとうございます。
筒井参考人に、今の点にも関わってちょっと伺いたいんですが、雇用システムの改革が必要という御指摘に、私もそのとおりだと思いました。とりわけ、労働時間にキャップを掛けていく必要があると。
労働組合の中には、八時間働けば普通に暮らせる社会にと、こういうスローガンが掲げられて、私たちも選挙などで訴えることがありますが、場合によっては八時間でも長過ぎると。これ、家事や育児、介護をやろうと思えば、八時間働いて、通勤も含めると長過ぎると、こういう視点もあるかと思うんです。
ただ、先ほどもお話のあったように、労働時間を短くすればそれによって賃金が下がってしまうと、残業代も払われないと、そこで賃金率のアップが必要だという御指摘もそのとおりだと思うのですが、そういう意味では、一気に賃上げをしなくてはならないというときに、この方法については、今、竹信参考人からは最低賃金の問題が指摘があり、かつ分野別ということもありました。政治の責任による賃上げというのは幾つかの手法はあり得るのかと思うんですけれども、参考人の御意見も伺えればと思います。
○参考人 立命館大学教授(筒井淳也君) 賃金率を上げるというのを、いわゆる政治主導で行うということはあり得なくはないですよね。
ただ、基本的には、やはりその民間企業の意思決定の範囲内でやると。特にやっぱり労働者の間の、雇用されている方の間の声を強くする仕組みをバックアップしていくというのが王道であるというのは、これはもう世界各国共通の認識かなというふうに思います。
ですので、その仕組みづくりですね、これなかなか、その日本独特の雇用システムにマッチした今労働組合の形態になっていますので、そこをどういうふうに変えていくのかというのは比較的長期的な議論しかできないというところがあります。ですので、賃金を上げていくということに関しては、即効性のない議論というのはやりにくいのは確かだと思います。ただ、やはりそこで比較的介入しやすいのが最低賃金、まあこれは間違いないと思います。
もう一つは、そうですね、やはりおっしゃっていただいたように、働き方改革が実入りの減少につながってしまうというのがよく見られる現象です。中には、その経営者の方が、うちは働き方改革やるぞということで人件費を減らしたいという、背後にある理由が実はある、潜んでいることさえあると思いますよね。
ただ、そういった動きに関して、もちろん見えやすくするという、経営の在り方を見えやすくするというような仕組みづくりもあるんですけど、一つはやはり男女賃金格差の縮小とか共働きのしやすさですよね、こちらの方にも重点を当てる必要がある。要するに、若干労働時間が短くなってしまえば、当然その給料が下がるというのは傾向として圧力が掛かるのは当然なんですけど、これが夫、妻、共に同等に働けるようになれば、例えば男性一人が八百万円を稼ぐより、四百万、四百万という、こちらの方が実は税金のことを考えると若干実入りが増えるぐらいなんですよね。
ただ、それは要するに、所得を下げる余地があるとかそういう議論をしたいのではなくて、共働きによって世帯所得を増やす方策ですよね、こういった道筋もあります。ただ、それでも、日本の場合はどうしてもやっぱり女性が結婚相手として安心したい男性の給料、賃金というのがどうしても今のところあるんですよね。それは、女性の側が、やはり何かあったら辞めるのは私なんじゃないかとか、継続就業の可能性というのは本当に安定して、安心して期待できるものなのかという不安がやはりそこにあるということがあると思うんですよね。
やはり、ここを解消してあげる、つまり、働こうという意図があれば何とかフルタイムは続けていけるんだろうという見込みを若い人が持てるぐらいには働き方改革を進め、当然、育児休業も重要になってきますよね。そういった制度改革を組み合わせて、出発点として、例えば学卒後二十二歳とか三歳の若い人の気持ちになって、そういう人たちが十年後、十五年後に、ああ、自分は継続して働けることができているんだなという見込みが得られるかどうか、今のところ非常に不安な若い人が多いと思うんですよね。ここを解決してあげるというのが一つ、賃金率ももちろん大事なんですけど、結局その個人にとってはやっぱり世帯所得というのが大事になってきますよね。そういった意味では重要になってくるのかなと思います。
以上です。
○山添拓君 ありがとうございます。
それはすなわち、やはり非正規がこれだけ当たり前になっている状況をこのままにしておいてよいのかということにつながっていくのではないかと思いました。
竹信参考人にもう一点伺いたいのですが、公務の非正規化、低賃金化という問題もレジュメの中で指摘がありました。国の公務員、例えばですね、国の公務員でいえば、非正規は圧倒的に女性ですし、その非正規の賃金が正規の四割。また、非正規の女性の賃金は正規の男性と比べると三割台という結果も出ています。こうした格差というのは女性に対しての間接差別と言うべきかと思いますが、政府は、任用は適切に行っている、間接差別の指摘は当たらない、そういう答弁に現状ではとどまっています。この非正規公務員の待遇の改善、女性の賃上げ、雇用の安定化、この点での実態や御提案があれば伺いたいと思います。
○参考人(竹信三恵子君) おっしゃるとおりだと思います。
これは、やっぱり一番ネックになっているのは短期契約です。それは、政府の言い分、この間も交渉をやったんですけど、そのときに伺うと、住民の方とかそういう人たちに均等に仕事を分けるみたいなことを言ったりですね、つまり、一人首にすると代わりの人来るので、みんなに分けるとかですね、公正な任用をするためにはみんなに出した方がいいんだみたいなことを言ったりするわけですよね。でも、これは実態とかなり違っていまして、打ち切って人を入れるということは失業を増やすと同じことなので、実は余りいいことではないわけです。
それから、もっといい人を入れるために、公平にするために任期で終わらせるんだということ自体についても、特に公務の場合って、スキルとか熟練とか住民の方との関係性のつながりとか、とっても大きい、さっきもちょっと申し上げましたが、ですよね。それをころころころころ替えると、もたなくなってしまって、実は住民の方も、もう法的なところに相談に行っても当てにならないからみたいな形にまでなりつつある。
そういうことを考えますと、一番重要なことは、ずっとあるお仕事はちゃんと期限なしで雇うと。財源がないならないで、まず最低限、ある仕事は実態に合わせて期限なしにした上で、中身を交渉していくなり、賃金テーブルを考えるなりしていけばいい話でありまして、声を抑え付けるために短期契約を意図的に導入していくみたいな、そういう労務管理の方法自体が不公正で間違っているのではないかと思いますし、住民にとってもそれは大変なマイナスになると思います。
○山添拓君 ありがとうございます。そのとおりだなと思いながら伺いました。
山口参考人に伺います。
男性の育休について、日本の制度は休業の期間も給与の水準も世界トップクラスと、にもかかわらず実際の取得はなかなか進まないという点で、その原因の一つは、やはり休むと代わりがいない、代替要員の確保、代替人材の確保ということは先ほども指摘がありました。要するに、それは職場体制の弱さということではないかと思うんです。
例えば、今の公務の話でいえば、公務員についてはワーク・ライフ・バランスのための定員を付けたりもするんですが、一方で、定員合理化計画の下で全体は抑制するということもされてきました。この休めない構造ですね、自分が休んだら職場が回らない、本当にそうかどうかは分かりませんが、と思わされるという、そういう構造があって、この合理化や効率化の下で、これは民間も含めてそういう状況つくられていると思うんですね。
これを変えていこうと思うと、それは必ずしもその経済合理性とは相入れないかもしれないけれども、休める条件を整えていくと、これを職場に求めていくということになるんだと思うんですけれども、そういう辺りをどう折り合いを付けてといいますか、前に進めていく上での現場のモチベーションになっていくのか、経営者側のモチベーションになり得るのかという辺りを御示唆をいただければと思います。
○参考人 東京大学大学院経済学研究科教授(山口慎太郎君) 非常に重要な御指摘だと思います。
短期的にはコスト削減につながるのかもしれませんが、逆に言うと、長期的に見たときに企業にしても組織の成長につながらないだろうなというふうに感じます。
というのも、代わりがいないというのは、属人的な仕事のやり方になっているわけです。育休以外にもいろんな理由で人は離れざるを得ないことというのはあるわけですね。これ、マネジメントの観点からすると、リスクがとても高いと、マネジメントが全然できていないような状況になっているわけです。そういった状況がそもそも経済合理的ではないし、生産性も高くないわけです。
したがって、たとえ人が抜けても安定してその企業なり組織なりが提供しなければいけないサービスなり製品なりを生み出せるような体制をつくっていくということがリスク回避上も非常に重要になるわけですし、長期的な企業の成長にもつながるわけです。
また、代わりの人がいて、育休、安心して取れるような職場だったら、やっぱり今の若い人はそういうところを見るんですね。面接で育休取れますかということをわざわざ口にする人はいないから、企業の管理職ですとか経営層は、若いやつは本当に育休取りたいと思っているようには見えないんだけどみたいなことを言われるんですが、じゃ、実際アンケートを取ると、九割ぐらいは取りたいと言っているんですね。
したがって、育休取れないような会社だと、これはちょっと自分にとっていい会社じゃないなと、余り自分を大事にしてくれる会社じゃないからということで選ばれなくなってしまうと、最終的にはその企業の中長期的な成長にとってもマイナスになるというふうに考えております。
○山添拓君 私たちの政党もよく考えないといけないなと思いました。
どうもありがとうございました。終わります。